(2)旅人との出会い
少し落ち着きを見せてお礼を言って来る三人の家族だけれど、この程度ではまだ健康とは言い難いよね。
「どういたしまして。それより、お食事を一緒にどうですか?美味しいですよ?」
トリシアさんに目配せして、収納袋から食事を出してもらったよ。
三人は出てくる食事に釘付けになっているから、やっぱり空腹を耐えていたと確信できたので、食べてもらう事にしたよ。
「どうぞ、食べてください。僕達も一緒に食べますので……大勢で食べた方が食事は美味しいですからね」
少し前までは収納魔法によって保管されていたのでスープは温かいし、味も劣化していないはず!
それでも遠慮しているのか、なかなか手を付けようとしない三人。
子供は無理して我慢しているように見えるので、少し前に経験した“あーん”を実行してみる事にしよう!
「はい、これが僕のお勧め。あーん」
さすがにこの状況で年端も行かない子供だからか、トリシアさんも笑顔で見つめてくれているよ。
良かった。
子供は反射的に口を開けたので、優しくお肉を口に含ませると……恐る恐る咀嚼しはじめて、その勢いが速くなってきたので成功かな?
「さ、皆さんもどうぞ!」
必死で食事を始めている子供の様子と僕達の様子を見て、両親も恐る恐ると言った感じで食事を始めてくれたよ。
僕達はすぐにお腹がいっぱいになったけれど、三人はまだまだ足りないようで夢中で食事、もちろん水もだけれど、飲食を続けているので、トリシアさんは視界に入らないように収納魔法から収納袋に食料を移動して、あたかも収納袋から出したかのように食料や水分を追加して、優しい微笑で三人を見ているよ。
まさに女神様!
こんな人に想われている僕って、贅沢すぎじゃないかな?
とか、余計なことを考えつつ膝の上にいるシバと遊んでいる僕。
「シバ、結構大きくなった……かな?」
前は僕の両手ですっぽり入る胴周りだったのに、今では柴犬の成犬位の大きさになっているよね。
成長を褒められた事が嬉しいのか、シバは三人の食事の邪魔にならないように声には出さず、激しく尻尾を振って僕の顔をペロペロ舐めてくれたよ。
僕もシバと楽しく過ごしていたので、どのくらい時間が過ぎたのかはわからないけれど……
「この度はなんとお礼を言えばよいのか……」
「感謝してもしきれません」
子供はお腹が満たされたのか、今まで失われた体力を回復するかのようにもう眠っちゃっていたよ。
お礼を伝えてきている両親には、僕の特技を使うまでもなく脅えの表情が見えるよね。
あれ?僕ってもしかして、怪しい風貌?怖い見た目?
今フードもしていないから、自分で自分を見る事は出来ないけれど……もしそうだとしたらちょっと落ち込んじゃうかもしれないよね。
そんな葛藤をしている僕の代わりに、正に女神様のトリシアさんが本当に柔らかい笑顔で対応してくれるみたい。
「いいえ、お口にあったようで何よりです。ですが皆様、なぜこのような状態になってしまったのでしょうか?」
その言葉に夫婦は互いの顔を見合わせ、意を決したように男性が話し始めたよ。
「実は、私達の町には生活の礎と言っても過言ではない、とても綺麗な湖があったのですが、私達の祖先の代には十分だった水量が徐々に減少していったようで、今ではすっかり枯れてしまいました。そうなると農作物や酪農に壊滅的な被害がでるばかりか、そもそも水がないので人々の生活すらできなくなっているので、町民の流出が止められず……」
悲しそうに下を向いた男性に、女性が続く。
「その結果、町にはよからぬ者達が現れるようになります。理不尽な高利貸しや高額での物品の販売。ここまではかろうじて我慢できましたが、人を攫い始めたのです」
これは、地球でも地域によっては聞いた事がある……人権を無視した扱いをされてしまう人々の事だよね。
「そこから必死に逃げてきたのですが、元から積める食料も多くなく、途中で馬も食料にして人で引いてきたのです。そして力尽きて……ですからお願いです。もし奴隷が必要でしたら私達がなりますので、子供だけは見逃していただけませんでしょうか?」
え?これって、僕達が人攫いだと思われていたって事……なんだよね?
そっか。それならばあの警戒心は頷けるよね。
でも良かった、僕の人相が悪いわけじゃなくって……って、まだそう確定したわけじゃないのかな?
あ~、どうして僕は焦ると考えがあっちこっちに行っちゃうんだろう!
早く安心させてあげたいのに!!




