(1)旅人との出会い
僕とトリシアさんの両手、そしてシバが咥えている沢山の収納袋の中には数多くの餞別が入っているので、町の人達の見送りを受けて見られない距離まで到達した後に、鮮度を保つためにトリシアさんの収納魔法にしまってもらったよ。
本当に便利だな~、収納魔法。
早く僕も習得しないと!
「静流様、せっかくですから歩きながら食べられる食事を食べましょう!では、頂いたお肉、はいっ、どうぞ!」
収納魔法に入れれば中身は全て把握できるようで、修練度が上がれば収納状態で分解もできるみたい。
トリシアさんは、手に持った焼き鳥のような物を僕の口に近づけてくれている。
これって、どう見ても“あーん”だよね?
ボッチ時代には考える事もおこがましいと思っていた事が、この世界ではどんどん実現できている事に頭が追い付かないよ。
でも、おいしく頂きますよ!
「ありがとうございます……う~ん、トリシアさんが食べさせてくれたので、とっても美味しいです!」
赤くなってしまうトリシアさんだけれど、言っている僕も赤くなっている自信があるよ。
「お返しに、貸してもらえますか?はい、どうぞ!」
ここは勢いも大切!せっかく生まれ変わったかのような生活になったのだから!!
トリシアさんも少しだけ恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうにちっちゃい口を広げて僕の手からお肉を食べてモグモグしているよ。
「フフ、これでお相子……って、忘れていないよ。はい!シバ」
シバにも串についていた最後のお肉を渡して、街道をゆったりと進んで当てのない旅……と言っても、一応新婚旅行と期限はないけれど神々の解放を行う事になっているので、神の気配がわかるトリシアさんに行先は一任しているよ。
「おかわりは如何ですか?静流様」
「あ、頂きます。もちろんトリシアさんとシバも……おかわりですよね?」
二回目なので少し余裕が出て来たのか、トリシアさんは優しく微笑んで新しい肉を出して僕の方に近づけようとしたのだけれど、一瞬悲しそうな顔をしてその手が止まってしまったよ。
シバからも悲しそう感情が流れてくるから、僕が感知できない何かがあった事は間違いなさそう。
「トリシアさん、何があったのですか?」
「……この街道の先に馬車が止まっているのですが、状態が良くないと思われる家族らしき一行がいるようです。あの、もしよろしければ、手を差し伸べても宜しいでしょうか?」
「当たり前ですよ!僕では感知できませんでした。急ぎましょう!」
トリシアさんのサポートがあったおかげか、僕は魔法だけではなく身体強化も結構強く使えるようになっているので、全力で街道を進んだよ。
でも先行するトリシアさんと、後ろを守るようについてきてくれるシバにはまだまだ余裕がありそうに見えるので、足手纏いにならないようにこれからもっと頑張らないと!
少しして僕でも馬車を関知する事ができたので、必死で足を動かして目的の場所まで到着したよ。
「はぁ~、はぁ~、はぁ~。この中……ですか?」
息を切らしている僕と、全く乱れていないトリシアさんとシバ……
「静流様、無理をなさらずに……一旦休まれてはいかがですか?」
「大丈夫ですよ、はぁ~……ふ~。僕は何ともありませんから。早く助けてあげましょう」
幌が付いた荷台だけが残って、馬が見当たらない馬車。
ひょっとしたら、馬だけを逃がしてあげたのか……馬だけ盗まれたのか……どちらにしてもトリシアさんの言う通り、状態が良くない人達が無事に町に着けるとは思えないので、何とか助けてあげたいよね。
「……わかりました。少しだけお待ちください」
僕が呼吸を落ち着かせている間に幌の中に入って行くトリシアさんは、三人を連れ出して水を飲ませているよ。
トリシアさんの予想通り、多分家族……かな?
お父さんとお母さん、そして娘の三人家族。
どうしてこんな状況になっちゃったのかとても気なるけれど、先ずは健康になってもらわないとね。
トリシアさんは間違いなく回復魔法を使っているだろうけれど、怪我や病気は治っても体力や栄養状態を改善する事は出来ないから、気を付けないとね。
三人が与えられた水を浴びるように飲んでいるので、どれだけきつい状態にいたのか察する事が出来て……いたたまれないよ。
「は~、ありがとうございます。もうダメかと思いました」
「貴重な水を、感謝してもしきれません」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとうございます」
水分を摂取できた事から少し落ち着いた様に見える三人だけれど、食事もしてもらわないとね。




