(7)バラドス開放
「こんな所で立ち話もなんじゃろう?町で語り合わんか?」
「あっ、良いですね。って、一つだけ確認させて頂いてよろしいですか?」
「なんじゃ?静流と言ったか?おぬしは儂の恩人でもあるからのう、何でも言ってくれてよいぞ」
「えっと、お願いではなくてですね……確認ですけれど、今までは魔神に制約を課されていて、タイミング的にはあの魔獣を始末した事しか思い浮かびませんが、制約は解除された……で合っていますでしょうか?」
「その通りじゃよ。あの忌々しい監視の魔獣、しかも普段は地中深くに潜っておるでな。それで儂の祠に近づく者を監視する事もしておったのじゃが、御覧のとおり長きにわたり誰も来ることがなくてのぉ~、永遠にこのままかと悲観しておった所じゃ。トリシアも相当辛い目にあわされていたようじゃし、魔神……どうしてくれようか」
少し剣呑な雰囲気が出始めたので、僕は慌ててバラドス様を町に連れて行く事にしたよ。
「私は、静流様とゆっくりしたいのですが……」
少し不満げなトリシアさんだけれど、本当に久しぶりに会えた二人の事もあるし、事情も少しは聞きたいし、ここは我慢して頂きましょう。
「トリシアさん!積もる話もあるでしょうし、貴重な情報を得られるチャンスでもありますよ?夜は二人で一緒にいられるのですから、一緒にお食事しましょう。ね?」
「は、はい!バラドス、行きましょう!」
豹変に驚いているバラドス様を蹴とばす勢いで町に向かう僕達は、バラドス様解放の効果がこれほど早く出るとは思っていなかったので、正直びっくりしちゃったよ。
いつもの宿の一階の食堂で僕達は食事をしているのだけれど、この宿に宿泊している冒険者の皆さんが戻ってくるたびに、本当にうれしそうに全員が同じ事を女将に報告しているよ。
「女将!あの大地が……大地が聞いた事のある遥か昔の状態に戻ったみたいだ。ダンジョンから出てきた魔獣共が明らかに一気に弱っているぜ!」
「お前の所もか!?俺の行った所もだ。明日には討伐するまでもなく自滅するくらいの弱りようだったぞ!」
その話を聞きつつバラドス様を見ると、優しそうな微笑を浮かべて長い髭を撫でていたよ。
「流石ですね、バラドス様」
「静流様、バラドスを褒めるのならば、私も褒めてください!」
本当に可愛いトリシアさんに癒される僕。
トリシアさんがこんな性格だと理解したバラドス様がニヤニヤしながらこちらを見ているのだけは少し思う所はあるけれど、今はこの町の人が喜べる状況になった事を一緒に楽しもうと思う。
僕はトリシアさんを優しく撫でながら、バラドス様と魔神の話を聞く事にしたよ。
「あやつ、ゴアはのう、知っての通り大地を司る儂にダンジョンと同じ環境になる大地の作成を制約に組み込んだのじゃ。その結果は……地上に出たゴアの配下にあるダンジョンの内部で発現した魔獣が容易に活動できてしまう環境を作り出したのじゃ」
ここまでは、今までの状況から推測できた事と一緒だね。
「儂は反撃せずに制約を受け入れたわけではないぞい。とは言えゴアは地上で神域魔法を使いよって、儂の方が多分に不利ではあったがのう、その戦いの前にトリシアをはじめ、他の神々様子がおかしい事や気配を感じなくなった事から、対策をしておったのじゃ」
トリシアさんは神域魔法と言う単語が出た瞬間に少し表情を曇らせてしまったので、再び優しく抱き寄せると安心した様な表情になってくれたよ。
真面目な話をしているので、流石に今この時に冷やかすような視線を向ける事がなかったバラドス様も流石……なのかな?
「儂もゴアの動きを封じるために制約をかけたのじゃ。その制約はのう……魔王城から決して出られない制約じゃよ。だからのう、ゴアが今以上に大陸を混沌に陥れる術は……配下を使う以外にはないが、今と変わらんじゃろう。つまり、これ以上環境が悪化する事はないと言う事じゃ」
「そ、それは素晴らしいですね。ですが、魔神側の制約もトリシアさんやバラドス様のように解除できるのですよね?」
「それがなければ制約は加えられんからのう。じゃが安心すると良い。儂の口から言ってしまうと、どこで情報が洩れるかわからんから言えんが、絶対に破られる事はないぞい。プハハハハ、ざまぁ見ろじゃ!」
これだけ自信満々なバラドス様。
情報漏洩にも抜かりがないその姿勢を見て、ゴアと呼ばれている魔神は絶対に魔王城から出られない事を確信したよ。
「あれ?そうすると、僕達は本当にゆっくりと力をつけて行けば良いって事ですか?」
「む?ゴアを始末するのであればそうじゃの。その際には、儂も同行させてもらおうかの。積もり積もった怨念を利子と共に返さんといかんからのう」
「あ、ありがとうございます。ところで、話の中で出てきた他の方達ですが、どのような状況なのでしょうか?」
「儂が以前異変を感じ取った際に調べたところによると、制約を受けたのは天空神、空神、水神、獣神じゃの。儂の後に制約……は魔王城から出る事が出来んから実行する事は無理じゃろうから、これが全てじゃと思うぞい」
神の名が出るからだろうか、バラドス様は防音の魔法を使っていたように見えたよ。
「残りは、炎神と植神だけじゃないですか!ここまで侵食していたなんで、許せませんね……」




