(5)シバの力
剣呑な雰囲気を出しているトリシアさんに対して、見た目優しいお爺ちゃんの地神バラドス様が余裕の表情なのは、年の功かな?
「儂の行い?ハテ?何かのう?」
「……今の貴方の言葉で全て理解する事ができました。これからは独り言ですが良く聞いてください」
その後トリシアさんは、魔神によって強制的に制約をかけられて真実を話せずに強制的に召喚を行わざるを得なかった事、天空の虚無空間に一人でい続けた事を話し始めたんだ。
時折当時の孤独による恐怖、罪もない召喚を行ってしまった事を思い出して震えそうになっていたので、僕は無意識のうちにトリシアさんの肩を抱き寄せてしまったよ。
一瞬びっくりしたトリシアさんは僕の目を見て優しく微笑むと、その後も思い出したくもないであろう事を必死で話し続けていた。
僕も見た目優しいお爺ちゃんのこの地神バラドス様が、自分が行った事をとぼけているのと、不自然な笑みを浮かべ続けているのは違和感を覚えたんだ。
流石にトリシアさんとは違って年の功なのか、僕のボッチ力が弱くなっているのか、バラドス様の表情の裏に隠れる真の思いを感じる事は出来なかったよ。
トリシアさんも同じ考えに至ったようで、今のバラドス様の態度は魔神による制約を受けて真実を話せない状態だと確信するに至ったと思う。
全ての独り言を終えたトリシアさんは、その澄んだ瞳をバラドス様に向けて逸らそうとしない。
バラドスさんの表情は、やっぱり作り笑いのような表情から少しも変化する事はなく、そのまま光ると祠に戻ってしまったように見えた。
「戻りましょう、静流様」
本当に珍しく少し疲れた表情を浮かべているトリシアさんなので、僕は無言でしゃがんで背中に乗るように促してみるよ。
「!?し、失礼しますね、静流様。でも、甘えさせてください!まさか地神までがその手にかかっているなんて」
ふわっと背中から甘い匂いと、本当に柔らかな感触が伝わると、僕はゆっくり立ち上がって宿に戻るために進み始める。
進みながら考えているけれど、トリシアさんの制約を解除できたのは本当に偶然。
奇跡と言っても良いくらいだと思う。
今回どう見てもバラドス様も制約をかけられているっぽいけれど、解除条件を口にする事ができないのも当然制約に入れているはずだから、どうやって助ければ良いのか……なんでも試して行くしかないよね?
悲しんでいるトリシアさんは少しの間そっとしておいてあげる事にしたので黙って進んでいるけれど、ここで神以外の外敵に襲われてはトリシアさんの命の危険もあるので、動きに制限のあるトリシアさんの安全の為に、全力で気配察知を行う事にしたよ。
もちろん眷属になっているシバも僕の意図はすぐに伝わるので、同じように前後左右だけではなく、空、地下まで慎重に気配を掴もうとしているのが伝わってくるよ。
頼もしいよね。ありがとう、シバ。
って、やっぱり地下にも魔獣が存在しているんだね。
日本では地中にいる生物ってモグラとかミミズとかだけれど、ここは異世界だから、何があってもおかしくないよね。
どう見ても僕達をつけているように見えるけれども、攻撃の気配はしないし……地中にいる上にちょっと距離が離れているからこちらから攻撃すると、かえって危険な状況に陥るかもしれないよね。
う~ん、どうしよう。
もう少しだけ様子を見て、町が近づいた時にまだ追ってくるようであれば、思い切って攻撃してみようかな?
そこまで行けば万が一の時には逃げ切れる可能性が高いし、体制も立て直し易いからね。
シバにもしっかりとその意志が伝わったので、地下への気配を察知しつつも慎重に進み、その中でもどのように攻撃するかを考えているように見えるよ。頼もしい!
僕はあまり経験がないし異世界から来ているから知識も乏しいけれど、シバであればある程度攻撃手段も思い浮かぶだろうし、ひょっとしたら地下に潜んでいる魔獣の弱点すら掴んでいるかもしれないと言う期待もあるよね。
それほど優秀なのが、僕達の仲間のシバだよ!
って、話がそれたけれど、間もなく町が視界に入りそうな位置にいるけれど、未だに地下の魔獣の気配は消えていないよ。
本当に一定の距離を保ったまま……これって、よく考えたら町中まで来られたらとっても困るよね。
決めた、戦ろう。
と思った瞬間にシバが反応して町とは逆方向に高速で移動したと思ったら、地面が大きく揺れたよ!
「シバ!」
まさかシバが攻撃を受けたのかと思って、トリシアさんを背負ったまま僕も全力でシバが向かった方向、魔獣の気配が微かにする方向に全力で移動したのだけれど……心配する必要はなかったみたい。
そこには、地面から引き摺り出されて致命傷を負っている魔獣のなれの果てと、尻尾を嬉しそうに振っているシバがいたのだから。
あ~、びっくりしちゃったよ!でも、凄いねシバ!僕は嬉しいよ!!




