(3)ショージ+ショーコ ユーヤ+ヨシエ
「お前等、似合わねーな」
「そう言っているショージも全然似合ってないよ?この世界にも鏡があるんだから、見てみたら良いでしょ?」
静流と共に召喚された生徒の残り、そのうちの一人の生家となっている公爵家の屋敷に集合している。
一人目は、長い茶髪をしている渡辺 正二であり、この世界ではショージとして認識されており、髪の生え際は黒髪が見得ている、所謂プリンの状態だ。
二人目は、日本にいた頃からそう変わらない長さの黒髪をポニーテールにしている鈴木 翔子で、ショーコと呼ばれている。
三人目は、黒髪短髪の安藤 裕也。
少しキザったらしい所は変わっておらず、ユーヤで通っている。
最後の四人目は、佐島 芳江。
金髪ボサボサで、見た目通りにギャルと言われている分類、言葉使いも見た目通りであるのだが、この世界ではれっきとした公爵令嬢であり、ヨシエと呼ばれている。
各自がそれぞれ公爵家の家族として認識されており、家の事情、立場をある程度把握できた頃に、ショージの呼びかけで四人が集まったのだ。
シズルと違ってトリシアは送還事に何も対応しなかったのだが、召喚からある程度の時間が経過しているので制服ではなく貴族らしい服装になっており、本気ではないが互いが似合っていないと貶し合っている。
「そう言えば、岩井先生だっけ?少し調べたら、平民で冒険者をしているみたいだ。フッ」
相変わらずキザっぽく、意味なく短髪をかき上げるかのようなポーズをとりながら話すユーヤ。
「キャハハハ、ちょ~うける。ユーヤ、今度冒険者ギルドに行って何か恵んであげようか?涙を流して喜ぶんじゃね?」
この四人は願いの通りに生活に困る事なく高い地位を有しているので、もちろん身の危険は一切ない。
普通では得る事の出来ない程の魔法の力を各自が一つ持っているのだが、初期の付与状態からその力は変化していないままだ。
同じ回復魔法を持つイワイと比べると、雲泥の際になっている。
イワイと共にさっさとあの場を後にしてしまっているこの場の四人は、魔法ですら修練で行使できるようになる事、更には力を増大させる事ができるとは知らない。
今まで立場を利用して得た知識は、この世界の国家を含めた組織や自らの立ち位置、ある程度の一般常識に限られていたからだ。
当然公爵家と言う高い立場の子供に、血なまぐさい戦闘系統の話をする者は周囲には存在しない。
何かあればお付きの者達が対処するか、冒険者ギルドに依頼を出して対処させる立場になっているのだから……
「ヨシエの言う事も、正しいかもしれないな。上の者が下の者に施すのも義務。フッ。それに、下々の状況を、身をもって知るのも貴族の務めだろう?そうは思わないか?」
ユーヤの言い分はその通りだと思うようになっている残りの三人は、意気揚々と各自が護衛を引き連れてギルドに向かう事にした。
もちろん煌びやかな服ではなく冒険者風……とは言え、相当高級ではある上にかなり動きやすい服装に着替えてからだが。
「そう言えば、俺の領地は西の方にあるみたいだぜ。お前らも王都にあるのは別邸で、領地は他にあるんだろ?」
「当たり前でしょ、ショージ。ユーヤもヨシエもそうよね?」
自分の立ち位置を完全に理解できているので、聞かれた二人も当然とばかりに頷いている。
「っと、ここがギルドか。先生はいるか?俺は、はした金だが、5万イリカを恵んでやろうと思っているぜ」
「ちょ~せこい!ショージ、セコ!って、でも先生にはその位の価値しかないから、しょ~がないか!」
ヨシエがショージの言葉に被せながらも、四人は周囲に目的の人物がいないかを確認している。
幸か不幸かこの時のイワイは他のメンバーと依頼を受けている最中であり、この四人に発見される事はなかったのだが、代わりに四人の視界に入ったのは……
とてつもなく美しい女性と、少し逞しくなったように見えるシズルの仲睦ましい姿、更にはその足元にいる柴犬に見える獣だ。
残念ながらトリシアがあの場所にいた存在だとは理解できない四人だが、シズルの事は間違い様がない。
散々今迄見下して、虐めてきた存在が幸せそうにしているのは許す事ができない小さな心しか持ち合わせていないので、示し合わせた様に四人はトリシアとシズルの元に向かおうとするのだが、何故か一歩も動けずに、楽しそうな二人が出ていくのをかなり離れた場所から見ているしかできなかった。
実は、四人の存在を関知したトリシアからのお願いで、シバが動きを完全に封じたのだ。
せっかく楽しく活動し始めた静流に、汚物を認識させたくなかったために行った行動だ。
その後動けるようになった四人は、経験した事のない現象に少々恐怖を感じて、イワイを待つ事なくギルドを後にして、各自の別邸に戻っていた。




