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神の揉め事に巻き込まれた男と被害者女神の世直し旅  作者: 焼納豆
炎神ファント

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(4)アドビの食事

「随分と長い事顕現されていたようだな」


 神殿の扉を開けて外に出ると、そこには皇帝ベルヘルトが騎士と共に待っていた。


 重厚な扉のおかげか中での出来事については一切聞こえないようになっており、顕現していた時間はそう長くはなかったとは知られていないようだ。


「えっと、ベルヘルト様。炎神ファント様にはしっかりと事情を説明する事が出来ました。安心されていました」


「そうか。それは何よりだ。っと、シズル殿。貴殿から俺と同じ力……悔しいが私以上の力を感じるな。炎神ファント様からの加護を受けたのか?」


「あっ、はい。そうです。えっと、なんだか申し訳ありません」


「ハハハハ、何を謝る。これで貴殿と私は同士だ。そもそも天空神トリシア様の伴侶である貴殿が、私と同じレベルの加護等有り得ないだろう?さっ、今日はこれからどうする?私としてはアドビの食事を出して貰えると……」


「ベルヘルト様。少しは落ち着いたらいかがですか?そもそもお二人は旅で疲れているのですよ?先ずはお休みいただく事が先決でしょう!」


 取りあえずいつもの通りに欲求を口に出してしまい、爺に咎められる皇帝ベルヘルト。


「うっ、爺の言う通りだ。すまない。どうしてもあの食事が忘れられないのでな。食事は今日の夕食時に頼む」


 諦めないでさりげなく交渉する辺りが流石は皇帝だと思いながらも、その後とある豪華な一室に案内されて休む事にしたシズル達。


「シズル様、とても良い眺めですね」


「遠くに海が見えます。本当に綺麗ですね。ホラ、シバも見てごらん」


「ワンワン」


 海面が輝いている中で幾つか色鮮やかな船が見えるので、それは幻想的な景色が見えている。


 町を見下ろす高所からの眺めであるために綺麗に整えられた街並みも一望する事が出来、その美しさに二人共にその後は言葉を発する事なく景色に見入っていた。


……コンコン……


 二人で寄り添うように窓際に立って景色を楽しんでおり、シバは飽きたのかベッドの上で丸くなっているのだが、そこにノックの音が聞こえて我に返る。


「あっ、はい!」


 慌ててシズルが返事をすると、メイドが美しい所作で中に入って一礼する。


「シズル様、トリシア様、シバ様。間もなくお夕食となりますが……その、陛下のご要望で皆様の収納魔法に収納済みのアドビ様が作られたお料理を出していただきたいとの事ですが、宜しいでしょうか?」


 皇帝の居城で来客に対して行われる対応ではないので、恥ずかしさから真っ赤になっているメイド。


「大丈夫です!温かいまま保存しましたので、皆さんもびっくりする位美味しいですよ。あの植神エリアス様も絶賛していますから!」


 あの集落にいた人々、そしてこの帝国アグニの中で信頼できる者は皇帝ベルヘルトに判断してもらった上で収納魔法についても明かしており、メイド自身が収納魔法と口にした以上、このメイドは皇帝の信頼を得ている人物と判断して何も隠す事なく対応するシズル。


「あ、ありがとうございます。本来来賓の方にこのようなお願いをする事は大変不敬なのですが、陛下がどうしてもと駄々をこねまして」


 その姿が目に浮かぶようで笑ってしまうシズルとトリシア。


 そもそも一メイドがこのように皇帝の事を表現できると言う事は、家臣との距離が近くなっているのだなと感心していたりする。


 通常国家元首ともなれば一メイドが元首に対して何かを申す事などできはしないのだが、ここ帝国アグニは異なるようで、当然家臣としての立場は理解しているのだが、国の為、皇帝の為になる事であれば立場は関係なく具申できる環境であると言える。


「では、申し訳ありませんがこちらに宜しくお願いいたします」


 メイドが出したのは収納袋。

 もちろん収納袋の中であれば時間は経過し、温かい食事も徐々に冷めてしまう。


 使っている本人はそのような事は当然知り得ているので、収納魔法を秘匿する事を第一とした上での行動であり、即座に料理を出してくれるのだろうと判断して大量の料理を収納袋に移動する。


「ありがとうございました。一応料理長も収納魔法の事は知っておりますので、今日のお料理は料理長がシズル様、トリシア様の収納袋に保管したものを温め直したと言う事になっております。宜しくお願いいたします」


 こうすれば、今回の料理を再度食べさせるように料理長に言ってくる者はいない。

 その後楽しい夕食が始まる。


 皇帝ベルヘルトの機嫌は異常なほどに良い。


 守護神である炎神ファントの心配事が無くなった上に、待ち焦がれていたアドビの料理が食べられるのだから良くならないわけがない。


「こ、これは!!美味しすぎます。なるほど……ベルヘルト様がこの料理を渇望していたのが理解できますな」


 まさかの爺も料理の虜になっており、これならば確かに月に一回では物足りないのも理解できると思いつつ、こっそりと自分も足しげくあの集落に足を運ぼうと決心していたりする。


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