(4)シズルとトリシア
いつもの通り、制約には逆らえずに強制的に笑顔で願いをお伺いします。
この場に唯一残った最後のお方のお名前は、高岡静流様。
他の方と同じ様に立場や力を求めて来るのだろうと思っておりましたが、本当に待ち望んでいた、いいえ、待ち望み過ぎてもう有りえないだろうと期待すらできなくなっていた制約の解除条件を仰って下さったのです!
そのお方は、私の取り繕った笑顔の下の表情を正確に見て下さり、私をこの地獄から救ってくださったのです。
その瞬間、私は神の身ではあるのですが恋に落ちました。
魔神に対しての復讐を行いたい気持ちももちろんありますが、正直に言うと静流様への気持ちの方がとても大きくなっています。
本当に何とも言えない幸せな気持ちです。フフフ、静流様……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
……チュンチュン……
この世界にも、朝には鳥がさえずるんだな~
って、違う!いや、違う事はないけれど、違う!!
一瞬で覚醒した僕の視界に入るのは、本当に美しくも可愛らしさを溢れんばかりに垂れ流している天空の神であるトリシアさんが、これまた美しい長い金髪を少しだけ乱れさせていながら真横で可愛い寝息を立てている。
つまりは、そう言う事です。
あのお風呂乱入事件から何が何だか分からない内に、こうなっていたよ。
これで僕も魔法使いを卒業……と言うより、現実はこれから魔法使いになるのだけれど、本当に何と言いましょうか、このような世界が有ったのですね。
正に天国!
「う~ん、静流様……静流様!!」
トリシアさんも一瞬で覚醒して僕の顔を見た途端、恥ずかしそうに布団で顔を隠しちゃったので、僕も恥ずかしくなって……
いや、話が進まないよ!でも、僕の実力では今の状況を改善できないし……
ここは開き直って、可愛い姿を眺めさせてもらう事にしようかなっと。
「もうっ、静流様がず~っと見つめて来るので、恥ずかしくって起きられませんでしたよ!!」
一階の食堂で、プンスカ可愛らしく怒っているトリシアさん。
「ごめんなさい。でも、正直僕は初めてでしたし、余りにも幸せ過ぎて……」
「!?そ、それでしたら……仕方がないですね。私も初めてで……フフフ」
真っ赤になりながらも一瞬で機嫌が良くなるトリシアさんって、意外と僕よりもチョロかったりするのかな?
「コホン。静流様?これからですが、私が思っていた以上に魔神の影響はなさそうなのです。本当に久しぶりにこの世界に降りてきましたが、確かに数体の神の力が抑えられているような感覚はありますが、魔神……この世界では魔王ですが、脅威と思われているような行動もなさそうですし」
「そうですか?であれば良いですね」
あの何もない空間から嫌々町の状況だけを確認していたトリシアさんだけど、本当に無意識下で生活に必要な情報だけを集めていたみたい。
漸く制約が取れてこの世界に来て直接状況を把握すると、自分の想像以上に魔神の影響がなさそうで一安心しているように見える……かな?
「ですので、この世界の事情を知るべく情報収集をいたしませんか?」
「そうしましょう!僕も、この世界の常識を知っておきたいですし」
いつかは僕が稼いで、トリシアさんとシバをしっかりと養う必要があるからね。
お金の単位すら知らないのは致命傷でしょう。
「ですが、先ずはお食事をしてからですよ」
自称人を見る目のある宿のおじさんがニヤニヤしながら食事を配膳してくれるのだけは頂けないけど、食事は美味しかったので良しとしようかな。
「では、このミツバ王国の城下町を散策してみましょう。少し前に呼んでしまった方の情報も得られると良いですし」
焦る必要がなさそうなので、ゆっくりと活動できるのは本当に助かるよ。
昨日一日だけでホントの急展開だったから、少し体がついて行かない……のは、幸せタイムが長かったからかな?ムフフフフ
「静流様?」
おっと、いけない。妄想、いや、瞑想してしまった。
「じゃあ、食事が終わったら行きましょうか?」
「はい。これはデートとも言えますね!」
今まで閉じ込められ続けてやりたくもない事から解放されたせいか、いやに積極的なトリシアさんだけど、可愛いから良いよね。
僕も本当に嬉しいし。




