(21)眠いエリアス
今日は少し多めに投稿します!
「大丈夫ですか?エリアス様」
「ふぁ~い。大丈夫でふ~」
翌朝、どう見ても大丈夫には見えない植神エリアスを心配そうに見ているアドビとレーニャ達。
そしてその真実、単純に眠いだけだと知っているシズルとトリシアは苦笑いだが、まだまだ小さい子供の様に、エリアスの体が右に左に揺れているのを見ると思わず吹き出しそうになるのを堪えるのに必死で、他の事に手が付かない。
暫くアドビやレーニャ達は本当に心配そうにエリアスを見ているので、トリシアは彼等を安心させるためにこう伝える。
「えっと、皆様。ご存じの通りエリアスは植物を司る神です。ですから、少々、何と言いますか、起きてすぐに活発に動く事は苦手なのです。それだけですので、安心してください」
一応エリアスの威厳をなくさないように配慮しつつも、嘘はつけずに、何とかそれらしい事を言って納得してもらう。
「そ、そうだったのですね!わかりました。これで安心できます。でも、そのような状態で歩いて頂くわけにはいきません!荷物は収納袋で持ち運ぶので荷台がある訳ではありませんが、背負子ならば準備できます。如何でしょうか?エリアス様!」
「賛成~」
自分の足で歩かなくて済むと理解したエリアスは一も二もなく賛成するのだが……背負子に背負われてグデっと寝ている神様を想像してしまったシズルは、下を向いてプルプルしている。
「し、静流様。お気持ちはわかりますが、ここは深呼吸です!」
二人がこのようなやり取りをしている最中、集落の人々は真剣に背負子を準備して少しでもエリアスが座り易いように加工している。
「エリアス様、こんな物で申し訳ありませんが、どうぞ!」
エリアスが背負子で移動するとなった時点で、センライがその背負子を背負って移動する事を強く主張したので、集落の住民でヘルナンド公爵の屋敷がある町に向かうのはアドビ、レーニャ、センライの三人になっている。
そこにシズル、トリシア、シバが加わって再び町に向かっていく。
「あ、あの……大変申し訳ありませんが、僕とトリシアさんは前を歩いても良いでしょうか?」
「ん?どうした兄ちゃん。まぁ、かまわないが……」
シズルのお願いに少しだけ不思議そうな顔をするアドビだが、シズルとしては目の前に背負子に背負われたエリアスが本当にだらしなく揺れているので、もう笑いを堪える事が出来そうになくて立ち位置を替えてもらう事にした。
「よ、良かったですね、静流様。正直、私も限界が近かったので、助かります」
「ありがとうございます。これで何とか持ち堪えられると思います」
この周辺はエリアスの守護範囲でもあり危険はないのだが、一応最後尾にはシバが残って警戒しているので、一行は問題なく早朝の町に到着する。
当然販売場所にはベルヘルトを始めとした旅人と、何故か昨日騒ぎを起こした騎士、更には満腹亭の店主であるポフルもいる。
この騎士達はどうしても食事を手に入れろと厳命されているので、今日は仕方がなく列に並ぶ事にしたのだ。
そこに今迄見た事もない様な、トリシアと同格と言っても良い美貌を持った女性が背負子に背負われて情けない姿で現れたので微妙な空気が流れるが、一刻も早く任務を達成しておきたい騎士達は目的を達成する事だけに意識が向く。
エリアスには目もくれずに、早く食事を販売しろとがなり立てたのだ。
「おい!今日はきっちりと愚民と同じく並んでやったぞ。さっさと販売しろ!」
「あなたは相変わらず煩いですね。我らが称える神の前で不敬ですよ?」
その騎士の言葉に誰よりも早く反応したのは、だらしがない恰好で背負われながら寝息を立てているエリアスを背負っているセンライだ。
「はっ、神?どこに神がいる。確かに見た目麗しい者はいるが、とても神には見えない。いや、そんな事はどうでも良い。早く販売しろ!」
シズルとトリシアも、確かにあのエリアスの姿を見れば神と言われても誰も信用しないだろうと珍しく騎士の意見に同意していたが、センライは怒り心頭だ。
「そのような不敬な態度が取れる程度の人なので、神の加護がないのですよ。アドビさん、レーニャさん、良くわかりました。今後この場所、満腹亭の前での販売は止めましょう。どのみちこの町の人々に販売する事は今後無いのですから、旅人向け限定になる以上、町に入る必要はありません」
これだけ言うと、額に青筋を立てながらさっさとエリアスを背負ったまま踵を返してしまうセンライ。
「確かに、それが良いな。それじゃあ販売場所を変更するので、購入希望の人は申し訳ないがついてきてくれ!」
ぞろぞろと移動する旅人達だが、騎士やポフルはこの場に残って茫然としている。
町の外の活動であれば、騎士の立場や領主との繋がりは一切関係が無くなるので権力を使う事が出来ない。
仮に街中と同じような行動、強制的に聴取や恫喝等をしてしまうと、神の加護がある者達に反撃されたとしても、偽りの正義すら主張する事が出来ないのだ。
センライ達は先日、植神エリアスの加護を受けていると言い切っているし、冷静に考えれば実際センライ達を追跡した時に植物の不思議な動きでその行動が阻害されているので、事実なのだと思っているが、あのだらしがない恰好の女性が神とはとても思えなかったので強気に出た結果、あっさりと逃亡されてしまった。




