(20)対策と
「……と言う事があったんだ。ベルヘルトと名乗った彼が間に入ってくれて向こうが引いたが、今後はどうなるか微妙だな」
「ご、ごめんなさい、アドビさん。僕達が一緒に行っていれば良かったです」
「私からも謝罪させてください。もう安全だと思っていました」
「いやいや、頭を上げてくれよ、兄ちゃん、トリシア様。二人が悪いんじゃなくて、ヘルナンドとその娘のヨシエ、それと言いなりの騎士が悪いだけだ」
少しトラブルがありながらもあっという間に完売して即集落に戻っているアドビ達は、食堂兼自宅で集落の人々と食事をしている。
その中の一角で話をしているのがアドビ、シズル、トリシア、レーニャだが、他の人々もアドビ達の話を聞いて渋い顔をしていた。
「あの~、お代わりが欲しいです~」
その一言で、騎士が怒鳴った時と同じく一瞬で静寂に包まれるこの場所。
「おぉ!!エリアス様!!」
声の主は植神エリアスであり、あまりにもアドビの食事が美味しくてお代わりを欲していたのだが、蔦の先に手紙をつけても話に夢中である集落の誰にも気が付かれる事がなかったので、重い腰を上げてここまでやってきたのだ。
逆に言うと、あれほどグウタラな植神エリアスの腰を上げさせるほどにアドビの食事は魅力的になっていると言う事だ。
エリアスはこの集落の人々に慕われているので一瞬で囲われるのだが、アドビとレーニャはしっかりとエリアスの希望を聞いていたので、せっかくならば作り立てを食べてもらおうと調理を始めている。
「それで~、話は聞きました~。美味しい食事の為に、明日は~私が同行します~」
「そ、それならば何も心配いらない!」
「これでアドビも安心だね?」
人々にこう言われて安堵から笑顔になりつつも、調理の手は止めないアドビ。
「お待たせしました!」
「お~、湯気が出ていますね~!」
いくら出来立てを祭壇において即座にエリアスが蔦で引き上げても、その途中で多少冷めてしまうのは否めない。
今回地上に来て正に出来立てを食べる事ができるので、湯気が立ち上っている食事に口をつけるエリアス。
一瞬で眠そうに見える目を開き、黙々と食事をかみしめている。
「アドビさん、エリアスは相当嬉しいみたいですよ。眠そうに見えませんから」
トリシアの説明の最後の部分は理解できないアドビだが、誰の目から見ても美味しそうに食べているエリアスの姿を見て更なる気合が入っていた。
「ふ~、とっても美味しかったです~。こんなに美味しいのであれば、週に一回はここにきても良いですか~?」
「え?エリアスが週に一回も起きるのですか?」
「……トリシアちゃん?」
思わず漏れたトリシアの言葉を、牽制するような笑顔で抑え込むエリアス。
一応神としては最も幼い立場であるトリシアは、エリアスの笑顔によって口をつぐまざるを得なくなった。
一方でアドビを始めとした住民達はとても喜び、かつてない程に騒がしい食事になったのだ。
「ところで、レーニャさん。この場所でできるピュアリーフ、どう見てもここだけでは消費できないだろう?少し前にあの町でセンライさんが販売していたけれど、他の町でも売っているのか?」
「そうですね。実は帝国アグニには時折販売しに行っていますし、帝国の方が時折この集落に見えますよ。あの方達……と言っても限られた方だけですが、この集落に入る事が出来ますので。私もその話を初めて聞いた時に少し不安だったのですが、何故かあの国は私達に非常に好意的ですし、ピュアリーフを奪おうとも値切ろうともしないので、助かっていますね」
「そうだったのか。あれほど貴重な葉なのに、帝国程国力のある国から何も強制されないなんてちょっと信じられないが、余程できた国なんだな」
「えぇ、私達もその話を始めて聞いた時は驚きましたが、エリアス様曰くあの国を守護している神とは仲が良いそうなので、その影響らしいのです」
ここで神と言う単語が出てきたので、トリシアよりも早くシズルが反応する。
「え?……あっ、突然ごめんなさい。その神様って?」
シズルとは異なって、トリシアはレーニャの話の神が何の神であるのかはわかっているので落ち着いている。
「フフフ、炎神ファントですよね?レーニャさん。静流様、制約が入っていない二人、植神エリアス、炎神ファントの内の一人ですよ」
この流れであれば、次の目的地は空の国であるサンロイア王国ではなく帝国アグニになるのかな?と漠然と考えているシズルは、未だにワイワイ楽しそうにしている集落の人々、特に新たにこの集落に来た五人の子供達に視線を向けて微笑んでいる。
この時は、まさかその炎神ファントを祀る国、帝国アグニの皇帝と共に旅をする等想像もしていなかったシズルとトリシアだ。
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
明日は少しまとめて投稿する予定です!




