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神の揉め事に巻き込まれた男と被害者女神の世直し旅  作者: 焼納豆
植神エリアス

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(17)謎の男とヨシエ

「君!待ちくたびれたよ。早くしてくれるとありがたい!」


 翌日の昼に同じように町に三人で繰り出すと、あの男性を始めとして昨日お弁当を購入してくれていた数人が今か今かと待ち構えており、おそらく同じ宿に泊まっていると思われる旅人の姿も見える。


 不思議そうに周囲を見るアドビの姿を見て、男は少し笑ってこう説明する。


「あぁ、彼等は君達の想像通り乗合馬車の乗客だよ。今日の朝までに着いた人達だが、私と同じ苦しみを味合わせたくなくてね。事情を説明したら自分も食べてみたいと言うので、朝食もとらずに待っていたのだよ。だから全員お腹がすいているんだ。早速売ってくれ!」


「良かったですね、アドビさん!」


「本当ですよね。さっ、早速並べましょう、静流様、アドビさん!」


「お、おう。そうだな。ありがとうございます。少しだけお待ちください。直ぐに準備します!」


 三人は、夫々が持っている収納袋から三種類のお弁当を出して並べる。


 その数は各種類10個なので、合計30個だ。


 本来は三人共に収納袋を持っている所が驚かれる所なのだが、今この周辺にいる人々は三種類の料理に目が行っているので気にならない。


「お、おいおい!これは悩ましい!昨日は一種類で悩む必要がなかったが、三種類になると話は別だ!」


「お兄さん、本当に凄い技術ね。見た目が凄いわ。これなら噂通り味も凄いのでしょうね」


 一日しか経過していないのに噂になるほど衝撃的なお弁当だったらしい。


「私の言った通りだろう?待っている間暇だから覗いた満腹亭を見れば、違いは一目瞭然。そもそも匂いからして大きく違うからな」


「「確かに!!」」


 どうやら朝から空腹を我慢しつつボーっと待っているのが辛かったらしく、満腹亭の食事を覗いて(・・・)いたようなのだが、食べる事はしなかったらしい。


 今日も今日とて満腹亭の店主であるポフルは騒がしくなった表に出てきて忌々しそうにアドビ達を睨んでいるのだが、それ以上の事は出来ない。


 周辺の町民は、旅人達を羨ましそうに見ているだけで自ら購入しようとはしなかった。


「俺は決めた!」


 一人が購入すると、自分の分が無くなる可能性に気が付いたのか、我先にとお弁当を購入する人であふれて瞬間で完売になってしまった。


「う……私の食事が……」


 ポフルに睨みを利かせながら、如何にアドビのお弁当が素晴らしいかを食レポ宜しく話し続けていた男は、気が付けばお弁当は全て完売されており、購入できなかったあぶれグループに入っていた。


「えっと、本当に申し訳ない。今日の夕方も販売させて頂く予定だが、少し早く来て量も多くするので、待っていてくれ!」


 アドビが大声で話すので満腹亭から出てきた者達もアドビの周囲に集まり、自然周囲で美味しそうに食べているお弁当の匂いや見た目の美しさ、何より食べている者達が本当に美味しそうに幸せそうにしている姿に目が移って、悔しそうな、羨ましそうな顔をしている。


「君達も食事に納得いかなかったのだろう?聞いての通り、このご主人は夕方に素晴らしい食事を多数販売してくれるらしい。味は数多の食事を経験している私ベルヘルトが保証しよう」


 何故かベルヘルトと名乗った男が意気揚々と勝手にアドビの食事の味を保証し始めたのだが、何の流れか周囲の者達がそれに乗っかるように囃し立てていた。


「良し、すぐに戻って皆の食事と夕食用の販売品の作成だ。忙しくなるぞ!」


 ランランと輝く目で大急ぎで集落に戻り、成果を嬉しそうに聞いているレーニャと共に準備に取り掛かるアドビ。


 ここまでくれば、もう自分達が共に出向く必要もないだろうと考えたシズルとトリシアは、もう直ぐこの集落ともお別れだな……と思いつつ長閑な一日を過ごしていた。


 一方、満腹亭のポフルはこのままでは破滅だと危機感を覚え、虎の子ピュアリーフを手に持って領主の館に向かっており、着くや否や急ぎ面会を申し込んでいた。


「ヘルナンド様。こちらがピュアリーフでございます。ですが、あの行商人の男がもう販売はしないと啖呵を切って帰ってしまったため、次に入手できるのはいつになるのか……」


「そうか。ヨシエ、これが万病に効く素材の一つ、ピュアリーフだ」


「え~?ただの葉っぱじゃん?ちょ~うける。何かあったらあたしの回復魔法があるから、無駄じゃん?」


 ポフルが領主にピュアリーフの献上の為に面会を申し出ると、そこに領主の娘であり召喚者でもあるヨシエがいたのだ。


 ボサボサの金髪のまま聞くに堪えない言葉を聞かされているポフルは、何とか表情は取り繕う事が出来ているが、内心はこんな事を思っている。


『チンチクリンが!だったら返せ!貴重な素材なんだぞ!!』


 だが、ここで余計な事を言うわけにはいかずに何とか怒りを抑えて、本来の目的を告げる。


「実は、あの町で領主様に無礼な態度をとって断罪された親のガキ五人を庇っていたアドビですが、納税が出来ないのか店を捨てて逃げました。そこまではかろうじて許せますが、何と臆面もなく食事時に私の店の前で弁当を売り始めたのです。これは満腹亭ではなく領主様、ヘルナンド様への挑戦に他なりません!」


 領主であるヘルナンド公爵を巻き込み、何とか満腹亭の客離れ阻止を企むポフルだ。


3日に連続投稿の予定です!

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