疲れるなんて
手術をした次の日
桜泉は朝、目が覚めて体を起こした。
『(いつもより…体がだるいなぁ)』
ただの風邪だ。と思いながらまたボーッと壁の1点を見つめた。
『桜泉ちゃーん。朝ごはん持ってきたよー』
そんなところに高田さんが朝ごはんと体温計を持ってやってきた。
『朝起きたら体がだるいんですよ…』
桜泉は高田さんに伝えた。
『あら!そうだったのね。じゃあ、体温計測ってね』
高田さんは体温計を取り出して桜泉に渡した。
ピピッ
『36.5…うーん熱はないかなー。だるい以外に他に何かある?頭痛いとか』
『頭痛いです』
『はーい。今は熱なくてもお昼とかになったら急に上がったりすることもあるから、ちょっと様子見ようか』
高田さんにそう言われて桜泉はコクっと首を縦に振った。
『9時に片付けにくるからそれまでに食べててね』
スライド式のテーブルに健康を第一に考えられているであろう朝ごはんが置かれた。
高田さんはスタスタと病室を出ていった。
『…お腹すいてないんだよなぁ……』
今日は桜泉が好きなお味噌汁だった。でも、汁を飲んだだけで気持ち悪い。
『9時までに食べなきゃ…』
時計を見ると針は8時25分を指していた。
『ずっと前から…春也くんのこと好きでした!』
公開処刑だった。
『えっ…』
朝、教室の黒板前に呼ばれてでかい声で女子に告白された。
『桜泉ちゃんが入院してる間だけでいいから…』
周りがザワザワしてる中、小さい声で告白した人が言った。
『俺、そういうことしたくない。俺には今でも大切な人いるし…お前とは付き合えない。ごめん』
春也はキッパリそう言った。
『大切な人って…桜泉ちゃんのこと…だよね?でもあの子は今は入院してるし…それに私の方が春也くんの隣に似合うと思うんだけど』
『入院してるとかしてないとか、俺の隣に似合うとか似合わないとか関係ないから。』
『私…香織(告白した人)ちゃんの方が…春也君に向いてると思う…。』
1人の女子が口を開いた。
それに続いてクラスの男子が
『別に藤本のこと、悪く言うつもりねーけど田島(告白した人の名字)のほうが…藤本よりもいいっていうか…。藤本が嫌いなわけじゃないけど…なんて言えばいいんだろうな…』
『本当に、春也変わってるよな』
周りはどんどんざわついて『春也がおかしい』と言いはじめた。
『別に俺、おかしいって思われてもいいけど。』
『本当は喋れないやつよりも、喋れるやつの方が好きだったり…?』
何かを言えば何かを言い返してきた。
春也はいろんな人がいろんなことを言ってきてなにに返せばいいのかわからなくなってきた。
『もう春也、あんなやつといると疲れるだろ』
ざわついている中の一つに残ったものがあった。
『疲れる…?』
『そうそう。お前はあいつの介護みたいになっててこっちで見ててもかわいそう。本当は疲れてあいつの彼氏やめたいとか』
『思ってねーよ!!!』
急に大きな声を出すと、クラスのざわめきは止まった。
『図星だったんじゃねーのー?』
『桜泉の介護とかしてねーって!』
『喋れなかったら助けなきゃいけないこと増えるだろ。もしこのままお前と桜泉が結婚とかになったらお前、超大変じゃん。』
『俺だったら嫌だなぁー』
春也が言い返しても男子は言いたい放題だった。
朝9時。
『桜泉ちゃーん。ご飯食べた?』
高田さんがやってきた。
桜泉はどれも1口しか食べてなかった。1口だけでもかなり限界に近かった。
『今日、美味しくなかった?』
高田さんの問に桜泉は首を横に振った。
『全部食べたら戻しちゃいます…。』
桜泉は正直に答えた。
『ちょっと検査してみようか…。先生呼ぶからちょっと待っててね。』
高田さんは食べ残したご飯をお盆の上に置いてまた病室を出ていった。




