お守り
入院して1週間があった。
最初の手術は明日。桜泉は緊張で胸が締めつけられた。
春也は学校にいる。
『今頃…なんの授業してるのかな』
桜泉は目線より少し上に掛けてある時計を見た。
針は午後1時を指していた。
『桜泉ちゃーん。熱測ってー』
あれからすっかり仲良くなった看護師の高田さん。最初は律儀で真面目な人なのかと思っていたらかなりフレンドリーな人だった。
『明日は1回目の手術かぁ…』
脇に体温計を挟んだときには高田さんは壁に掛けられたカレンダーを見ていた。
『緊張すると思うけど、麻酔も打つと思うし痛みはそこまで感じないと思うよ。』
高田さんにそう言われて桜泉は目線を下げた。
ピピッ。
体温計を見ると36.9と表示された。
『ちょっと高いねー。頭痛とか吐き気とかする?』
高田さんは紙にメモをして葵に聞いた。
葵は首を横に振って口パクで『大丈夫です』と言った。
『はーい。それじゃあなんかあったら呼んでね』
トレーを持って高田さんは病室を出ていった。
本を読んだり、携帯をいじっていたらいつの間にか夜の6時を指していた。
『こんな時間…』
読みかけの本をパタンっと閉じて棚に置いた。
『…っ…っ…っ』
喋ろうと喉に力を入れた。
『……っ!……っ!……っ!!』
強く力を入れてもダメだった。
『(1回の手術で喋れるようにならないかな)』
桜泉はため息をついた。
そのとき、扉が開く音がして次にカーテンが開いた。
『よっ!葵!』
春也が来てくれた。
春也は毎日、学校が終わると御見舞に来てくれる。
『毎日ありがとう』
桜泉は笑って伝えた。
『1日で楽しみな時間って葵のお見舞いに行くことだから!全然苦じゃないよ』
爽やかな笑顔で春也はそう言うとリュックから何かを取り出した。
『これ、今日休み時間作ったんだけど…。桜泉みたいに裁縫得意じゃないから形おかしいかもしれない…』
春也は『明日、手術だろ?そのお守り』と笑って桜泉に渡した。
形は四角で開いているところから1枚の手紙が出てきた。
『(がんばれ…)』
春也の字でそう書かれていた。
『こんな手抜きみたいなやつでごめんな。でも気持ちはたくさん入ってるから!』
春也は少し照れながら頭をかいた。
桜泉は泣きそうになって両手で顔を覆い隠した。
『ど、どうした…?』
春也が心配して葵の顔を覗くと桜泉は首を横に振った。
桜泉はバッと手を目から離してお守りをギュッと握った。
『私、手術がんばる』
目に少し涙を溜めて春也に伝えた。
『うん。がんばれ』
春也もそう伝えた。




