自殺…?
桜泉は家に帰ると玄関でしゃがんでクッキーが入ったタッパーを抱き抱えて泣いた。
『(力に…なってあげられなかった…)』
自分にできることを探して見つけ出したかった。
声で元気づけることもできなければ『好き』という言葉でさえ口にできない。
『(晴也…いつもごめんね…)』
声は出るはずもないのに口を動かして届くはずもないのに晴也に謝った。
『(もしかしたら、本当に私は邪魔者なのかな…)』
桜泉はそう思うとスッと立ち上がってクッキーが入ったタッパーをテーブルの上に置くと家を出た。
気づけばもう夜だった。辺りは真っ暗。両親は朝方まで仕事。弟は友達と泊まってるんだろう。
桜泉に酷いことを言ってしまったと深く後悔している。
そんなことを思っていると桜泉からLINEがきた。
しかもかなりの長文。
内容をゆっくり読んだ。
『今日のお昼すぎに急に家に訪ねてごめんね。
表には出てないと思うから今ここで言うと、本当は晴也の支えになりたいって毎日思ってた。実際に喋れない私は毎日晴也に助けられてて毎日そばにいてくれて気づけば私はなんの役にもたってなかった。どうすればいいのかなって考えた。でもわかんなかった。人になにか訪ねたりしても笑われて。手話をしてても笑わられて。でも晴也だけは違った。笑われるんじゃなくて一緒に笑ってくれた。楽しかった。
でもねもうこれ以上晴也に迷惑かけられない。これ以上晴也に辛い思いをさせたくない。これからは晴也にはもう迷惑はかけないし、辛い思いもしないよ。本当にありがとう』
これで文は終わっていた。
晴也は手が止まった。
『桜泉…?』
嫌な予感がして外を出るといろんな場所を目指して走った。
『桜泉ー!!桜泉ーー!』
人目を気にせず晴也は彼女の名前を叫んだ。
その時だった。
キキィーーーーー!!!
急ブレーキの音と長く鳴り響くクラクションが晴也の耳に残った。
振り返るとたくさんの人だかりができていた。
重く感じる足をひたすらに動かしてその現場に行く。
『おい大丈夫か!?!?』
『女の子が轢かれたぞ!!』
『誰か救急車読んでください!!』
大勢の大人を掻き分け、現場を見る。
血の匂いがフワッとすると吐き気が襲った。
彼女だった。自分の彼女が血まみれになって横になっている。
パトカーと救急車の音が聞こえる。
『桜泉…?』
晴也はゆっくり横たわる彼女に近づく。
『おいそこの男の子!!この女の子の知り合いなのか!?』
男性が晴也に声をかけた。
『僕の…僕の彼女です!!!』
晴也は垂れ流れている血を無視して桜泉の肩を必死に揺らした。
『桜泉!!なぁ起きろって!!』
桜泉はびくともしなかった。
『君、ちょっとどいてくれるかい?』
救急車の中から医者と看護師が出てきた。
晴也は立ち上がると足を何歩か後ろに下げた。
担架で桜泉は救急車の中に運ばれて行った。
『みなさーん現場から離れてくださいー』
警察が周りの人達を現場から離れさせた。
晴也の手には血が付いていてまたフワッと血の匂いがした。




