本当は
桜泉は海の崖から水平線を見た。綺麗な水平線。けれど雨で少し波が荒かった。
『(最後の最後で見る海がこんなに荒れてるって…本当に私は…)』
その先の言葉は思い出せなかった。
桜泉は崖の先端部分に座った。
あと少し前に行けば海に落ちて死んでしまうだろう。
『……な…!!……さ…!』
遠くから何かが聞こえる。
目に涙を溜めて辺りを見回す。
『桜泉!!』
後ろに晴也が息を切らして立っていた。
桜泉はハッとして立ち上がると晴也の方を向いた。
『なにやってんだよ!!桜泉の母さん、心配してたんだぞ?!俺だって心配して…』
その時、桜泉は首を勢いよく横に振った。
携帯を取り出してなにか打つと晴也に見せた。
『嘘つき』
そう書かれた携帯のメモを見て晴也はハッとした。
『は!?嘘なんてついてねーよ!本当のことだって…』
桜泉は怖くなって泣き出した。
『泣くなって…』
桜泉は泣きながら何かを言おうとしていた。
もちろん声は出ない。けれど叫ぶように泣きながらなにかを訴えるように晴也に向かって口を開いた。
『わかんねーよ…。言いたいことあるなら手話かメモで教えろって…!!』
『(なんで…。あの子と話すときは楽しそうだったのに。私が話そうとするだけで怒るの…。)』
桜泉はまた口を開いて叫ぼうとしていた。
『もうわかんないって言ってんだろ!?…どんなことしたって話すことできねーんだから…』
その時、晴也はしまったというように話すのをやめた。
『ご…ごめん…』
桜泉は涙が止まらなかった。
『(晴也も…そう思ってたんだ…。もう…晴也は…諦めてたんだ…)』
『今のは…その…』
晴也は言い訳を言おうとした。
桜泉は首を横に振ると走って行ってしまった。




