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さすらいのロザリー  作者: 村松希美


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第一幕 第九章 雪の逃亡





その夜、街はこれまでにない激しい吹雪に見舞われていた。


「黒猫の亭」の窓を叩く風の音は、まるで閉じ込められたロザリーの悲鳴を代弁しているかのようだった。

厨房の隅で冷え切ったスープの残りを片付けていたロザリーの背中に、バーバラ女将の冷酷な宣告が投げつけられた。


「明日からは、下町へ行くのは一切禁じだよ。あの泥棒猫の兄弟とつるんで、うちの情報を流してるんじゃないかってエレンが言ってるんだ。ろくに働きもしないで、外で遊んでる余裕なんてないはずだからね」


ロザリーの手から、皿が滑り落ちそうになった。

バーバラにとって、下町の兄弟はロザリーを支配するための新しい「弱み」に過ぎなかった。


ロザリーからジムとサムを奪うことは、彼女の魂の最後の一滴を絞り取ることと同義だった。


エレンは、母の背後で勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。


(これでいい。あいつからすべてを奪ってやる。あの惨めな路地裏での時間さえも、二度と手に入らないようにしてやるんだわ)


エレンの心にあるのは、もはや正義でも教育でもなく、自分より「精神的に高い場所」にいるロザリーを引きずり下ろしたいという、粘りつくような執着だった。


ロザリーは何も言い返さず、ただ深く頭を下げた。

けれど、その瞳の中で、何かが音を立てて砕け散った。


(……もう、無理だわ)

物質的な飢え、精神的な虐待、そして唯一の絆の断絶。

彼女の中で、自分という人間を繋ぎ止めていた細い糸が、ぷつりと切れた。


宿屋に戻るたびに自分の心が削られ、汚されていく。ここに留まれば、自分はいつか本当に、エレンやバーバラのような「憎しみ」だけで動く怪物になってしまう。


深夜、宿屋が静まり返った頃、ロザリーは一歩を踏み出した。

持っているのは、あかぎれだらけの手に握りしめた、ジムから貰った小さな石ころだけ。

かつて持っていた本も、家族の肖像画も、もう何もない。


裏口の重い扉を開けると、暴力的なまでの雪の冷気が彼女を襲った。


けれど、ロザリーはその冷たさにさえ、奇妙な解放感を感じていた。


(さようなら。……さようなら、私の地獄)

彼女は雪の中に足を踏み入れた。


どこへ行くのかも、どこで眠るのかも決めていない。

ただ、自分の中に残っている「汚れのないロザリー」の欠片を守るためには、この場所から逃げるしかなかった。

一歩、また一歩と、膝まで埋まる雪を掻き分けて進む。


宿屋の明かりが遠ざかるにつれ、彼女を包むのは完全な暗闇と、絶え間なく降り注ぐ雪の白さだけになった。


「ジム……サム……ごめんなさい……」

小さな呟きは、風にかき消された。

彼女を突き動かしていたのは、希望ではなく、切実な「拒絶」だった。


こんな世界で生きていくなら、いっそこの白い闇に溶けてしまいたい。

視界が次第に霞んでいく。


冷たさはやがて、不思議な「熱」へと変わり、ロザリーの意識を朦朧とさせた。


体力の限界は、とっくに超えていた。

空腹で震える足がつれ、彼女は街角の大きな屋敷の門の前で、力なく膝をついた。


(ああ……静か……)

降り積もる雪が、彼女の汚れた服を、傷ついた指先を、そして悲しみに満ちた心を、優しく覆い隠していく。


意識が遠のく中で、ロザリーは最後に、火事で失ったはずの母さんの手のひらの温もりを思い出した。


深い眠りの淵で、彼女は「さすらいの少女」としての自分に別れを告げようとしていた。




しかし、その時。

閉ざされていた屋敷の巨大な門が、静かに開く音がした。





あらすじを入力してAIが書きました。


高2の時に書いた未完成の小説ですが、AIもやりますね。

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