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93 教会の戦い


 アイ、ベリィ、エス、サーシャの四人は、寂れた教会の前に立っていた。


 この中に、プリンがいるのは、キッシュの部下が確認済みだ。

 魔物化兵士の軍隊をつくる計画を頓挫させるために、アイたちはプリンを捕まえる。

 キッシュは私兵を王都で動かすわけにはいかず、アイたちは少数精鋭で実行する必要があった。


 時刻は夜。

 闇討ちだ。


「ベリィ……始めよう」


「アイ。ありがとう。チャンスをくれて」


 ベリィは覚悟を決めると、姿を消した。


「本当に消えた……」


 サーシャはそれを見て、驚いていた。


 ベリィは隣の建物伝いに、教会の中へ侵入すると、中から鍵を開けた。

 そして、扉の前で待機していたアイたちは、内側からのノックを聞くと、その扉を開き、堂々と中に入った。

 その音を聞きつけてか、左奥の扉から、シスターがゆっくりと顔を覗かせた。

 シスタープリンは、アイたちを見つけると、ゆっくりと祭壇の前へと歩いた。

 アイたちも、慎重に距離を詰めた。

 ベリィは姿を消したままだから、プリンには三人に見えていることだろう。


「おかしいですね。私はたしかに、鍵を閉めたのですが。しかし、歓迎しましょう。迷える子羊のためならば」


 プリンは両手を広げて、そう言った。


「姿を見せないと思っていたら、ひさしぶりに仲間を連れてご登場?結社の忌々しい女……」


 プリンは位置までは掴めていないものの、ベリィの存在に気付いているようだった。


「お前が私のことを探しているって聞いたから、来てあげたんだ。グリサリアでのこと、怒ってるんでしょ?」


 アイはそう言って、挑発した。


「お前……お前か……グレイス。スティルはどうしたの?私の言うことをよく聞いてくれていたのに」


「スティルは無事だよ。ちょっと痛い目を見てもらったけど、シスターにはもっと痛い目を見てもらう予定」


「くっ……嫌な感じね、アンタたち」


 プリンはエスとサーシャの雰囲気から何かを感じ取ったのか、突然走りだすと、出てきた奥の扉の方へと入っていった。


「待て!」


 追おうとするアイを、エスとサーシャが両側から手で抑えると、二人は瞬時にその扉の元へと駆けた。

 アイの真後ろで、ベリィが姿を現す。


「大丈夫、ウチがいます」


「ありがとう、ベリィ」


 アイはベリィと共に、エスたちの後ろを追った。

 しかし、エスが扉に手をかけた瞬間、ものすごい勢いで扉が開き、そのまま扉ごとエスまで吹き飛ばされた。


「ぐぉっ?!」


 予想もしない一撃に、エスは宙を舞ったが、なんとか数メートル後ろの椅子の上に着地した。


 扉があったところから、全身が黒い殻に覆われた、人型の魔物が、次から次へと飛び出してきた。

 飛び出しざまに一体がサーシャに攻撃を加えるが、サーシャはそれを蹴り飛ばす。


「こいつら……メルカと同じです!」


 蹴った瞬間の金属のような感触に、サーシャはそう叫んだ。

 メルカが覆っていたのはその両腕だけだったが、次々にあふれ出てくる、その魔物化兵士たちは、全身を黒い外骨格で覆っていた。

 まさに黒い鎧だ。

 その数は、アイが見えるだけでも、五人にのぼった。

 アイは瞬時に判断し、プリンを逃がさないために、扉を目指して駆けた。


「エス!サーシャ!よろしく!」


 そう言いながらアイは駆ける。

 一体の魔物化兵士がアイに飛びついてくるが、サーシャが跳躍し、兵士に上から踵を叩きつけた。

 兵士は地面に叩きつけられ、教会の床にひびが走った。


「お気をつけて!」


 アイへの攻撃を阻止して、そう叫ぶサーシャには、既に次の一体が襲い掛かっている。


 あの二人なら五体相手でも渡り合える。

 何より、プリンを逃がすわけにはいかない。

 アイは扉があったところを抜けると、そこには地下に通じる階段があった。

 そこを駆け降りると、丁度教会の一階と同じほどのスペース、それもかなり高い天井の地下室があり、その中央に、プリンが立っていた。


「ちっ……!もう抜かれたのか!魔物化兵士も役に立たないな……!」


 プリンが首にかかったロザリオを引きちぎると、胸元から広がるように、黒い繊維が広がっていく。

 あっという間に黒い光沢のドレスを纏ったかとおもうとその背中からは幾本もの蜘蛛の足の様に触手が伸び、プリンの体を軽々と空中へ持ち上げ、足の代わりとなった。


「スティルから、何か聞いているんでしょう?でも、これはその時のより強化されているぞ!」


 プリンが手をかざすと、地下室に乗り込んだアイめがけて、何本ものワイヤーのような触手がしなり、襲い掛かった。

 それはアイがグリサリアで見た柔らかいものではなく、金属のように硬化したもので、軽々と階段を削って、砕かれた石を空中へとばら撒いた。


「くっ……!」


 アイは冷や汗を感じながら、それを避け続ける。

 まるで、橋にかけるような太い金属製のワイヤーを、振り回しているかのようだ。


 アイは分厚い氷で壁を作って盾にした。


 バキィン!と音を立てて、触手はまっすぐに氷の壁を貫通した。

 アイの顔のすぐ真横に、黒い触手がまっすぐに伸びている。


 ほんの数センチずれていれば頭を貫通していただろう。


 待て待て、こんなの聞いてないって!

 氷が役に立たない……!


 アイは必死で距離を取るが、プリンは触手でラッシュを仕掛けてくる。


 どうする、考えろ……!


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