60 再会
アイはアキナスの話を聞き、まずは巣を壊すことに決めた。
アキナスの話が本当なら、巣さえ壊してしまえば、男達のほうが簡単に治りそうだ。
しかし、しばらく進むと、そこらじゅうで、うめき声をあげる男たちが人を襲っていた。
動きが遅いこともあり、捕まっている信者は少なかったが、アイは信者が逃げるのを手助けしながら、目的地へと進んだ。
そして通路の曲がり角に差し掛かった時、突然現れた女性とぶつかった。
「うわっ!」
「わっ?」
アイが驚いて見ると、涙で目をにじませた、シェリーが目の前にいた。
「アイ!!!」
「わ、シェリー!会えてよかった、今……魔物の……」
シェリーに強く抱きつかれ、アイは言葉を止めた。
「よがっだぁ……私が置いてったせいで……そのせいでまた……」
アイを部屋に置いていったことをひどく後悔しながら、姿を消したアイを必死で探し回っていたシェリーは、アイを見つけたことで安心して涙を流した。
「見つからなかったらどうしようって……私のせいで……私のせいでぇ……」
「ご、ごめん」
アイは動揺しながら、シェリーをなだめた。
すると、シェリーは泣きながらも顔を上げ、キッとアイを睨んだ。
「ほんとだよ!何考えてるの!」
「シェリー、ごめん。シェリーがいなかったら終わってたよ……一人で無茶して、失敗して、ごめん……」
薬品でどろどろになっていた時の記憶がかすかにあるアイは、シェリーに助けてもらったことも覚えていた。
「許さない……絶対許さないから!」
シェリーは再びアイの胸に顔をうずめて、泣いた。
アイは自分の胸で女性に泣かれるのはくすぐったく、困っていた。
少しするとシェリーは落ち着いて、身体を離した。
「それで……どうしてあの部屋を離れたの?」
「実は、主犯にさらわれてて……でも、解決方法を聞き出したよ」
「そいつはどうしたの?」
「逃がした。人々を直す方法と引き換えに」
「逃がしたぁ?」
「ごめんって……」
アイなりに、人々と犯人の二つを天秤にかけてした判断だったが、シェリーだったら情報は吐かせた上でひっ捕らえるのだろう。
言葉通りに逃がすなんて、信じられないことかもしれない。
「その……思ったよりかわいそうな奴かもしれなくてぇー……ほら、実は人も殺せないような奴で……」
アイは小さな声で言い訳をする。
「平和ボケ!頭お花畑か!この男たちがどこかで女性信者を殺してるかもしれないでしょ?それに、本当にみんな異常無く治るの?後遺症は?操られた人々の気持ちはわかる?」
「うっ……確かに」
「アンタは自分がひどいことされても平気かもしれないけど、ほかの女性もみんなそうだと思わないでよね」
「ぐっ……返す言葉もない」
女性の気持ち、か。アイには一番わからないものだった。
ずっと間近にいたシェリーだからこそ、女の姿なのに鈍感なアイに、ずっと思うところがあったのかもしれない。
「まぁ仕方ない。世間知らずのお嬢様なんだから。それで、どこへ向かうの?」
「まずは、巣を壊します……」
意気消沈したアイは、敬語でシェリーに答えた。
シードルたちも含め、シェリーに叶うメンバーは、三人の中にはいないのだった。
アイたちは、居住区の奥、地下へ進む階段を探した。
操られた男たちは、ゆっくりと掴みかかってはくるが、とにかく数が多く、一度掴まれたら力は強い。
シェリーは風魔法で突風を生み出すことで、比較的安全に相手を遠ざけることができていた。
アイも同じく、大きめの、先をとがらせない氷柱を生み出し、押しのけるように相手を近づけさせなかった。
「アイ、あそこかな?」
シェリーが居住区の奥に、更に下に降りる階段らしきものを見つけた。
「きっとあれだ……でも、人が多いね」
まるで目的地から湧き出してくるかのように、男たちの姿が多くなってきていた。
「巣が近くにあるから。魔物は巣を中心としてその生息域を広げるからね」
「本当に、魔物と同じ習性になってしまったってわけね」
アイとシェリーは何とか、上手く連携しながら、狭い階段を敵を押しのけ、吹き飛ばし、進んだ。
そしてその先にあった分かれ道に辿り着いた。
アキナスによれば、右へ進めば巣だ。
アイたちは、左の道の先には更に多くの男たちがいることに気づいた。
「臭いものには蓋だね」
アイはそう言って、氷の壁で、右側の道を完全に塞いでしまった。
「アンタ、ほんとたまに思い切ったことするよね」
シェリーが苦々しい顔で、アイに言った。
「いいアイデアだと思ったんだけど。これ以上、上に上がってくる人たちが増えないし」
そうして、アイとシェリーは、ついに巣があるという部屋らしき場所の前に辿り着いた。
両開きの木の扉が、いかにもという感じで、待ち構えていた。
「それじゃあ開けるよ」




