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紫煙の鎖  作者: Blood orange
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運命の分かれ道

宮田と尚たちの将来が決まってしまった話です。

あの後、美里は「目が見えないんじゃ、しょうがないよね」そう苦笑しながらも明るく振る舞っていた。

そんな美里が盲学校に転校することになった。

だが、まだどの学校にするのかは決めていないらしく、学校が決まるまでの間に点字表を憶えるんだと息巻いていた美里の姿が痛々しく思えた。

納得のできないオレは、親父や叔父たちに美里をこの学校に入学させてやってくれと頼んだ。

オレはやっぱりまだケツの青いガキで、親父から彼女の方がお前よりもよっぽど現実を知っていると呆れられた。

ならば、とオレは親父にサザンクロスが支援している施設にも盲学校がある。

そこに美里を入学させてくれと頼んだ。


「尚。そこに入学するかしないかは、全て彼女次第だ。自分の考えを他人に押し付けるな」


親父からその学校のパンフレットを貰うと、オレは親父に何度も礼を言って煙たがれた。

あれは、親父の照れなんだろうって今頃になって漸く分かった。

オレは盲学校のパンフレットを持って美里の病室にやって来た。

盲学校のパンフレットには、全て点字が打ってある。

それを美里が指を使ってゆっくりではあるが、言葉をかみしめるように読み始めた。

運動部もあると書いてあることや、自主性を育てるために寮生活を進めていると言う所に美里は興味を引かれたらしい。

その分、学費がかかるのはしょうがないが、それでも美里に奨学金制度があるから一度受けてみれば良いと言ってみた。

その奨学金はもちろん日高財閥が出している。


美里は目をキラキラと輝かせながら、パパたちに相談してみると言って来た。

本当に美里がやりたいことが出来ればいいのに…。

それをオレが少しでもサポート出来れば…。そんなおこがましい考えがふとオレの脳裏に浮かんで来た。

初めは美里を寮に入寮させるのでさえも嫌がっていた美里の両親が、美里の熱意に押されてようやく折れてくれた。

美里が盲学校に編入することが決まった日、パパから携帯を買ってもらったのと嬉しそうに言って来た美里を見てオレも嬉しくなった。


「美里ちゃん、じゃあ、オレとメルアド交換する?」

メルアドを交換しようとオレが言った途端、美里の顔が輝いて来た。

「え?良いの? でも尚兄さん…「オレは高校生だけど、付属だから同じ系列の大学に行けば良いだけ。だからオレの心配はしなくてもいいよ」

「尚兄さんは学校に行かないの? 美里、ちゃんと学校に行くんだから。だから、尚兄さんも学校に行って」

「美里ちゃん…」

「美里は大丈夫だよ」


それ以来、オレたちはずっとメールを送っている。

美里の携帯はメールを打った後、音声で確認出来るようになっている。

毎日美里からのメールを見ながらオレは不登校になっていた高校に通い始めた。

通い始めて知ったのは、宮田はあれから色々な不祥事を起こして、サザンクロスを退学になっていたこと。

それだけじゃなく、親父の会社との取引でさえも無くなってしまったと聞いた時には驚いた。

宮田の親父さんが代表をやっていた宮田商事は、奥さんが韓流スターに目覚めてしまって、そのツアーに行った先で知り合った韓国人の若い男性に貢いでいた。会社の金にまで手を出していた事から、離婚となった。宮田はマリファナから足を洗っていなかったのか、ヒョロ先輩を脅してマリファナを栽培し、それを売りさばいていたのが警察にバレ逮捕されていた。

初めのは初犯と言うことで見逃されていたが、今回のは暴力団をも巻き込んだ形となったことから、警察が重い腰を上げた。


阿部と美潮はいつかオレが帰って来るのを待っていたとか。

時々屋敷に学校からのプリントを携えて来る阿部と美潮の姿があった。


「尚。そろそろ、学校に戻って来いよ。いくらお前でも退学は免れないぞ」


「分かってる。明日から学校に行くよ。あの子にも言われたんだ」

美里から背中を押される感じで、オレは学校に戻ることにした。

久々に学校に行けば、あの入学式の時と変わらないメンツがそこに立っていた。

ただ違うのは宮田がそこにいないことだけ。


「阿部、美潮。宮田は?」


オレの言葉に二人は顔を曇らせながらも、いつかは尚にも分かる事だからと言って、宮田が退学になった経緯を教えてくれた。

宮田はヒョロ先輩を脅して麻薬を栽培させるとそれを売買させていたことが、この辺一帯を取り仕切る二階堂会の目に留まり、睨まれた。つまり、上納金を納めろ(自分達のシマで騒ぎを起こすな)と言われたがその警告自体を蹴った。

その事が、警察から学校の耳に入って来てすぐに宮田は退学処分になった。


「宮田ね…アイツ焼きが回ったんだよ。尚がいたから今までは学校だって大目に見てくれてたんだってことを知らずにさ。尚がいないなら、この学校を取り仕切るのは自分だなんて言ってさ、粋がって夏休みに少女四人を呼び出して監禁してたんだ。そいつらをマリファナ漬けにして」


「なんてヤツだ…」


「学校は事が公になる前に宮田を退学にしたんだ。尚の親父さんと宮田商事って古くからの付き合いなんだろ? とうとう尚の親父さんから他の会社系列に宮田商事とは取引をしないようにと言ってたってオレは親父から聞いているが、尚は本当に知らないのか?」

「あ、ああ…オレは知らなかった」


「そうか…尚が知らなかったなら良いんだ。アイツは尚が親父さんにチクったと思っているみたいだったから」


宮田が何処で何をしていたか知らないまま、オレたち三人は無事高校生活を謳歌していった。

オレもだが阿部も美潮もあれ以来悪い事からはスッパリと足を洗った。

阿部は部活(サッカーに勤しみ、サザンクロスを初の全国大会にまで導いた。

美潮はNGOに参加して世界へと飛び回って行った。

オレは、「美里ちゃん!」いつも美里(あいつの笑顔の側にいた。

学校の昼休みに学校を抜け出して美里の学校で補助をしていた。

だが、オレ一人の力では何もならないと言う事が分かった。

オレは学校を相手に部活動を新設する事にした。叔父たちは始めオレが何をはじめるか様子見をしていたが、オレは学校で社会福祉部を作り、部活動を美里の学校や他の施設でやっていた。

それが認められ、サザンクロスでは来年度から社会福祉科が設立されることになった。


オレたち三人は高校を卒業して大学に進んだ。

宮田とは相変わらず連絡は取れず終いだったが、オレも阿部も美潮も宮田の事はすっかり忘れていた。

美里に怪我を負わせたあの日から、オレたちは変わっていった。

サザンクロスの付属大学に進んだオレ達は、それぞれの道へと進んだ。オレは医学部。阿部は経済学部。美潮は教育学部にそれぞれ進んで行った。

 

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