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紫煙の鎖  作者: Blood orange
3/9

美里サイド

あの日は、私のパパの誕生日で、私とママの二人でパパのプレゼントを買いに行った。

パパの誕生日だけど、パパとママの結婚記念日でもあるこの日は、特別な日だ。

いつも仕事で忙しいパパに、初めてのお小遣いで何か買いたくって、ママに買物に連れて行ってもらった。


「良いのが、見つかって良かったね〜」

「うん」

「それ、二つも買ってたけど、どうして?」

「ナイショ〜」

「え〜」


あの日、私が公園を通って帰ろうなんて言わなかったら、あんな事に巻き込まれる事なんてなかったのに。


どうして、あの時『公園を通って帰ろう』なんて言ってしまったんだろう。


いつもみたいに、ブランコで遊ぶと「そろそろ帰りましょ」。

ママの言葉に促されるように、私はママの手をとって歩き始めた。

公園で何かあったのかな?

警察の人達が沢山いた。

三人のお兄さんたちが、地面に座らされているのが見えた。


「美里あっちを見ちゃいけません」


ママに怒られちゃった。

でも、あのお兄さんたちって何をしてたの?

警察の人と言い争っているようには見えないけど。

三人の内の一人のお兄さんが、笑いながら走って行った。

なーんだ。

鬼ごっこなんだ。

じゃあ、次の鬼になる人を捕まえに行くんだ。

それが分かった私は、ママの手を引っぱってまた歩き出した。

あのお兄さんが捕まえる鬼って、どんな感じの人なんだろう?

美里は考えるだけでワクワクしてた。


彼女の学校でも、鬼ごっこ(ドロケイ)は人気の遊びだ。

いつも最初に掴まってしまう美里は、最後まで鬼に掴まらない人に憧れていた。

だから、見てみたかったのだ。

最後まで掴まらなかった鬼って、どんな人かって。

どうやったら、掴まらないのか教えて欲しいって子供ながらに親権に考えていた。

まさか、本物の警察が追いかけていたなんて、まだ子供の少女は知るはずもない。


ここの公園は美里も友達といつも一緒に遊んでいるから、大体人が隠れそうな場所は分かっている。

そこにママを連れて行くためにぐいぐいとママの手を引っ張って行った。

美里が知っている限りの隠れ場所を探したが、最後まで鬼のお兄さんと逃げている人は見つけきれなかった。


もっと別の場所だったのかな?

首を傾げる美里にママが帰りましょって頻りに言って来る。

「うん」

返事だけは良い美里は、まだ辺をキョロキョロしている。

だが目の前に鬼のお兄さんと逃げていたんだろうと思われるお兄さんを見た時、目を輝かせた。


逃げていたお兄さんはパパよりも背が高そうだ。

キラキラお日様みたいな髪で、美里が好きな絵本の中の王子様みたいだ。

もっと見てたくてママの手をギュッと引っ張った。


熱い。

真っ赤な太陽が私の目の前に降りて来た。


「ギャァァァァ!!」


あまりに熱くて顔を太陽から反らしたら、小さな黒い虫みたいなのが美里に向かって飛んで来た。

量目を抑えて踞った美里。


「美里? 大丈夫?」


熱いよ、痛いよ、ママ…!!

助けて…!!




真っ暗な世界に独ぼっちになってしまったみたいで、怖かった。

鼻にツンと来る匂い。

ここって、病院なの?

どうして目が開けれないの?

自分の顔を触ろうとする美里の手をママが握って止めた。


「今は、まだ触れないの」

「何で?」

「色々と検査しなきゃいけないから」

「検査?」

「そうよ。お医者様が美里のことを看てくれるの」

「美里、どこも痛くないよ」


美里の言葉を聞いた医師が、目のガーゼを剥がした。

それでも暗いところに独ぼっちになった美里は、しきりにママを捜し始める。


「ママ!! どこ? ママ!!」


美里の言葉にママは泣いてしまった。

一体何があったのか小さな美里には分からなかった。

ぼんやりと見えるモノクロの影。

怖いよ…。

ママの泣き声に美里まで怖くなって泣き出した。


「美里ちゃん。少し横になろうか。腕をだして、お注射するからね」


ごわごわした硬いベッドの上にゆっくりと横になった美里は、言われるがままに腕を差し出した。

消毒液を染み込ませた綿が美里の腕に付けられると、「こわい…ママ…こわい」そう泣いて来た。

いつもの美里なら注射は怖がらない。

暗闇の中で受ける注射ほど、こわい物はないのだろう。

ゆっくりと目を瞑った美里は、深い眠りに落ちて行った。



「帰って下さい!」


パパの大きな声で驚いた美里は目を覚ました。

少しだけ見える右目を使ってベッドから抜け出した美里は、大きな声がした方向に壁を伝って歩き始めた。


「パパの声だ!」


パパにお誕生日おめでとうって言わなきゃ…。

そう思いながら一歩、また一歩と声がする方へと向かって歩いてく。

途中、壁がなくなったときは赤ちゃんのようにハイハイするしかなかったけど、誰にも見つからなくて良かった。

見られてたら、恥ずかしいもん。


実際は周りに看護士や医師たちが美里の行動を見ていた。


バサッと紙が舞っている音が聞こえた。

何だろう?

プリントかな?


「な、何の真似だ?!」


「どうしたの?パパ?」


パパの声が怖いくらい震えてて、美里はそんなパパの声は聞きたくなくて、つい声をかけてしまった。


「み、美里…病室に戻っていなさい」

「いや! パパのお顔が見たいんだもん」


美里はこの時、パパの顔がすぐ側にあったことなど知らなかった。

パパに抱きしめられた美里は、少し汗臭いパパの匂いに抱きしめられた。


「パパ、誰と話してたの?」

「美里は知らなくていいんだ」

「太陽の人なの?」

「太陽の人?」


美里は公園で見かけたサラサラ金髪で優しい顔をした王子様ー尚の事を話した。


「申し訳ございません。お嬢様にこのような大けがをさせてしまって…」


突然知らない声が降って来た。


「誰?」


美里は手でパパの体を押しやるとその声の方に近寄って行った。


「美里!」

「あなたに大けがをさせてしまった家の者です」

低い声の人だ。

「太陽の人じゃないんだ。おじさん、悪い事をしたらゴメンナサイって謝るのが本当だって、私だって知ってるよ。どうして、太陽の人がいないの?

どうして、おじさんがここに来てるの? 変だよそれ」

子供だからこそ、歯に衣を着せぬ物言いをしてくる。

それが被害者だからこそ、正当性がある。


「申し訳ございません」


低い声のおじさんは美里に何かを握らせようとした。


「いらない!こんなのいらない! パパの顔が見たい! ママの顔が見たい! 暗くて怖いよ!! パパ…助けて」


美里が絞り出した声にパパは美里を抱きしめると「娘には会えたんだ。もう、いいだろう?帰ってくれ」そう言ったパパの声も震えていた。


パパ…美里はどうしちゃったの?



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