何故かモヤモヤします
間に合った!!
まだ、セーフですよね!?
本編の前話と前前話を訂正&加筆しました。先に読んでおいてもらったほうがいいかと思います。
遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。
これからも、頑張って行きたいと思います。
「パーシー」
「こちらに、陛下」
サンドラに、“パーシー”と呼ばれた人物は扉近くに控えていた。
「では、我が愛しの君達を部屋へと案内してちょうだい。皆様、こちらはパーシー・フェルズ。この城で働く使用人たちを取りまとめています。何かありましたら、彼にいつでもおっしゃってください。あぁ、もちろん侍女の事は心配しないでください。全員、妙齢の既婚者たちですので」
「それは安心です。お気遣い感謝いたします」
侍女の件で素直に礼を言うアンジェに、アオイはこの人は過去に何かあったのだろうかと疑問に思うが、あってもおかしくはない容姿をしていたので何かあったのだと勝手に判断しておいた。
「そう言ってもらえてよかったわ。余計なお世話かと思ったもの。では、パーシーあとは頼んだわ。我が愛しの君、妾は仕事に戻ります。また、晩餐でお会いしましょう」
「わかった。じゃあ、サンドラは仕事、頑張って」
「我が愛しの君に“頑張れ”と言っていただけるなんて! 幸せすぎます。やはり、仕事に戻りたくありません」
「それはいけません。サンドラ、今日中に終わらせなければならない仕事が待っているのをお忘れですか? それを終わらせない限り、姫様との晩餐は夢のまた夢ですよ」
「分かっているわ。戻るわよ、スラーセル」
見るからに上機嫌になったサンドラだったが、スラーセルの言葉により一気に機嫌が降下したように見えた。それほど、仕事が溜まっているということだろうか。そんなサンドラは、パーシーが近くにいた扉とは反対方向の扉からスラーセルと共に出て行った。
「パーシーさん、サンドラとスラーセルっていつもあんな感じなんですか?」
「はい。陛下達はいつも、あの様な感じです。実は、陛下は姫様の存在を知った日から、浮かれ気分な様子で毎日を過ごされています。適切な表現は“誕生日プレゼントをワクワクしながら待つ子供”といったところでしょうか」
「その場合、私がプレゼントですか?」
「そうなりますね」
自分が誕生日プレゼントに例えられ微妙な気分になるアオイだったが、サンドラが自分の存在を待っていてくれらという事に嬉しくなった。それがどうしてなのかアオイ自身には分からない。
(でも、何か喉元まで出かかって出ない感覚っていうの? すごくモヤモヤする)
そのモヤモヤした感覚を紛らわすために、えいっという小さな掛け声とともにアオイは隣にいるアンジェの脇腹に攻撃を仕掛けた。だが、アンジェの着ている服の厚い生地に阻まれ、大した威力にはならなかったが。
「ん? どうした、アオイ」
「なんでもない」
「それなら良いが。何かあったら、すぐに言えよ」
そう言うアンジェに、アオイは「うん」と頷く。そこに、体に何かが抱きついてきた。横を見ると、クリスの顔が間近に見えた。
「どうしたの? クリス」
「うん。アオイを抱きしめたくなっただけだよ」
「いやいや、意味分からないし」
「じゃあ、女神ユリエルからのお告げってことにしておいてよ」
「それこそ、意味分からないよ。というか、“じゃあ”って付いている時点で嘘ついてるってことでしょ」
「ばれた? ただ、ボクがアオイに抱きつきたくなっただけだよ」
ニコニコといつもの笑顔でクリスは、アオイに笑いかける。
「おい、アオイを放せ。アオイには、俺が抱きつくんだからな!」
と言って、クリスを剥がしにかかったのはラシュだった。先程まで空気と化していた二人だったが、ここに来て存在感を発揮していた。アオイの取り合いということで。
「姫様は、人気者なんですね。さすがです」
「アオイは、確かに人気者だよね。可愛いし」
「褒めなくても良い。ナツメもだ。それよりも、部屋に案内してくれないか?」
アオイを褒めるパーシーに、それに同調するナツメ。二人の様子にアンジェは呆れた。
「ごめんごめん」
「申し訳ございません。ご案内いたします。どうぞ、こちらです」
そう言うとパーシーは、先ほど自身が近くに控えていた扉の方へ歩き始める。その後に、アンジェとナツメが着いて行く。アオイも、歩き出そうと一歩踏み出したがクリスが抱きついたままだったので進めなかった。
「神官長殿、姫さんを放してくれませんかねぇ。このままでは、姫さんが歩けないんですが」
「アオイが手をつないでくれるって言うなら、グレースに従って放してあげる」
「仕方ないなぁ。私も放して欲しいし。良いよ。手をつないであげましょう」
「有難き幸せ」
恭しい態度でクリスは、アオイの手をとった。空いているもう片方は、すかさずラシュが握った。
「オレとも手を繋ごうぜ」
「良いよ。つないであげる」
グレースは、両方のアオイの手を握っているてを叩き落としたい衝動に駆られたが、もし実行に移したらまたアオイに抱きつくのかと考え我慢をした。だから、祈った。できるだけ、早く部屋について欲しいと。そうでもしないと、我慢の限界を迎え力を込めて叩き落としてしまいそうになるからだ。
「おい、アオイ達。早く来ないと置いていくぞ」
「はーい。行きます。だから、置いてかないで。行くよ、グレース達」