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古都の陰陽道具訪問販売人 拙生さん 〜呪物もお引き取りいたします〜  作者: アワイン
1 ひとりかくれんぼのぬいぐるみ【呪物お引き取り】
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 幽霊は足がない人やイメージ通りの人、そのまま人間の姿の人などいる。

 鬼の稲葉さんといるから、幽霊と妖怪は俺が生者と気付かない。いや、稲葉さんがいるのが大きいだろう。

 聞き込みをする際、妖怪には男が稲葉さんの女に手を出したから探していると云う呈で話している。本人は許してくれた。許さないと拙生さんが怖いと言っていた。拙生さんに注意しておこうかな……。

 俺は一つ目小僧に聞き込みをしている最中であった。


「……じゃあ、その男片原壱牙はとんでもない男だったと言うことでよろしいでしょうか?」

[まあ、妖怪の俺から見ても、普段の行動を見てたけど女好きと女遊びが酷い酷い。それで問題を引き起こしてた。人間の社会ではにゅーすってのになって話題になってたって? まあなるようになったろ]


 被害者男性について、素性と素行を書いていく。

 ……SNSの情報で調べて知ってはいた。鵜呑みにしないほうがいいけれど、現場を見ている妖怪や幽霊の証言では概ね当たっているようだ。

 気分屋、用心深い、自己保身が過ぎる。情緒不安定。言っていることをコロコロ変える。女好きで女遊びが激しいナルシスト。男のSNSはハンドルネームであったが、過去に特定された痕跡があり、そこを調べると普通にこのバンドがいいやら顔や目を隠した写真などが乗っていた。

 ネットでも外面は良かったようだ。


「……なるようになったということは、つまり?」

[貢がせてたんだよ。一部の女も甘い顔に騙されてやんの。それで何人か女を自殺に追いやってるし、女を付き纏って無理矢理恋人にしたりな]

「……今までよく無事でしたね。その男」


 聞いている男の俺でも、げんなりとする。一つ目小僧は不思議そうに話す。


[親が良いとこって噂だかららしいぜ。人間って親の懐が強いと威張れるんだろ?]

「……ははっ、それは人間よりけりかもしれませんね」


 一つ目小僧に話を聞いたあと、俺は頭を下げた。


「ありがとうございます」

[いいってことよ。それじゃあ、大江山の親分によろしくな]


 稲葉さんは頷くと、一つ目小僧は手を振って去る。稲葉さんの子分と思われているのか、妖怪達は色んな事を教えてくれる。使わない手はないけど……稲葉さん本人は逆に俺の子分になっているつもりかも。

 ここまで何度か妖怪から聞き込みをしてから、休憩をする。俺は面を取って、稲葉さんは普通の人間の姿になる。

 この雑面を顔につけても目の前の視界を遮らない。いつもの様に自身の目で風景を見ている感覚と変わらない。何でできているんだろうか。

 疑問に思いつつ、近くのハンバーガーチェーン店に行く。ポテトを買って食べつつ、俺は聞いた内容をメモにしてまとめた。

 男は片原壱牙。それなりにいい大学に通って、実家が太い。だが、性格は最悪で女好き。女遊びが激しく、遊んだ相手を貢がせては破滅に追いやっていた。見た目はまあ良かった方らしく、自身の風貌を利用していた。

 外面が良い奴ほど自分は不都合な話は消すし、中身は最悪なやつが多いと聞く。さて、被害者男性の話を聞いたけど……救いようがない。結果は自業自得と言われてもおかしくない。だけど、一点おかしな点がある。


「……男がひとりかくれんぼをした理由はわからない」


 ポテトを手にして、一口食べる。

 用心深い上に、今の時代はひとりかくれんぼと検索すればどんな忌々しいものか分かる。方法だって調べないとわからない。可能性のパターンは作っておくべきだろう。

 俺の呟きを聞いた稲葉さんはハンバーガーを一口食べて、飲み込んで頷く。


「わても同じです。話を聞く限り、人を自殺に追い込んでも証拠を残さないようにする用心深さ。そんな男がひとりかくれんぼをするとは思わへんよ」

「……そうですけど、いくつかの推察はあげられますね」

「へぇ、どんなもんです?」


 考えながら言う俺に、興味津々に俺に聞く。人にとっては下世話な話なのだけど、鬼にとっては食いつきがいのある話なのだろう。

 俺はいくつかの可能性を挙げた。


「一つ目は、単純で妥当なのは彼の好奇心。普通ではつまらないからやった。こっくりさんやひとりかくれんぼをやる人はそんなものです。

二つ目は、他人に唆されてやった。これは可能性として考えるにはもう少し根拠が欲しいです。

三つ目は追い詰められてやった。これはないでしょう。ニュースの内容を鑑みるに、ひとりかくれんぼをやって殺されたと見ていい。

四つ目は、俺があげた内容の複合型です」

「複合型?」


 キョトンとする稲葉さんに俺は教える。


「複合型というと簡単ですが、人間のやることには色んなことが噛み合っているのです。だから、色々と調べていかないとならない。こうして聞き込みをして外堀を埋めていく警察捜査の人海戦術は間違ってないんです」


 千里の道も一歩から。塵も積もれば山となる。そんな小さな積み重ねが大きか結果となっていく。俺もそう思って、少しずつできることをやっている。


「監視かめらや電話のつーるがあっても、地道が一番かぁ」

「そうですね。ちょっとした話題になのですが……人の推理小説ではこんなものがあります。

『WHODUNIT(フーダニット)』犯人は誰か

『HOWDONEIT(ハウダニット)』どうやって犯行を成し遂げたか

『WHYDUNIT(ホワイダニット)』なぜ犯行に至ったか

俺が見た近年のアニメではWHYDUNIT(ホワイダニット)に基づいて推理してましたね」

「へぇ、人間ははいからなもんを考えてはるなぁ」


 ハイカラ、昔の言葉でおしゃれという。稲葉さんの感覚的にはハイカラなのかもしれない。


「俺達の場合は、推理小説の定番『WHODUNIT(フーダニット)』犯人は誰かを考えるべきです」

「? 流れ的にほわいだにっとじゃあらへんの?」

「ひとりかくれんぼのぬいぐるみは明らかに男を殺害しているんです。何故、犯行に至ったのかなんて、簡単に語られた殺害現場の状況を見て男が原因だ。『HOWDONEIT(ハウダニット)』は調べてわかってます。『WHYDUNIT(ホワイダニット)』は大方分かっても、犯人が分からないと詳細がわかりません」


 犯行を成し遂げたのは、ひとりかくれんぼの中身の幽霊だ。何故犯行に至ったのかは、悪霊が取り憑いていた事やニュースの内容、聞き込みを鑑みて男が原因である。男が原因なのは状況証拠ではあるけれど、ひとりかくれんぼのぬいぐるみが暴れるように部屋の中を傷つけるわけない。強い殺意があったことは明白だ。もう一つの理由としては、拙生さんが引き取るまでに施したぬいぐるみの封印のやり方。あの強い殺意が怨霊に近くなった原因だ。鎮める為に御霊信仰を利用して封印をしたのだろう。よほど、強い殺意を抱くに至った動機がある。だが、犯人がわからないと、詳細は分からない。

 俺の説明を聞いて、稲葉さんは驚きながらも納得したようだった。


「……そうか、わてらが調べるべきはぬいぐるみの中身の方か」

「はい、中の幽霊がどんな存在かを調べられればいいのですが、拙生さんが引き取っちゃってます。……これは俺への課題ですから、調べさせてはくれないでしょう」


 これは俺の課題だ。試している部分が大きい。だから、俺のできることはただ一つ。地道にコツコツと、諦めずに糸口をつかむことだ。


「……今日の聞き込みはここまでです。受験生なので、勉強しなくちゃいけません」

「そうか……わては何をすればええですか?」


 稲葉さんの申し出には驚く。


「……よろしいのですか?」

「旦那の可愛がってる子を無下にはできへんってものあるけど……朝飛殿のきばるのを見てはると、わてにもできることをしたいと思うんよ」


 俺の姿勢を見て、か。彼の中で何かの値する価値があったのかな。不思議だけど、ご厚意には甘えておこ。

 優しげに笑う稲葉さんに、俺は頭を下げる。


「ありがとうございます、稲葉さん! ……そうですね。やり方と聞き方を教えるので、お願いしたいことがあります。わかったことを教えてくれるだけでいいです。待ち合わせの時間と場所は、今週の土曜日の午後。西本願寺の前で」


 俺は稲葉さんへに真っ白なメモに書いて、渡した。メモに書かれていることを彼は読む。ポテトを奢ってもらったけど、今回はちゃんとお礼させてもらおう。

 ……それに、気になることもあるしね。



 稲葉さんに送られて、家に帰ってくる。玄関をあけて、帰ったとわかるように挨拶をした。


「ただいま!」

「おう、朝飛。おかえり」


 エプロン姿のお父さんが出てくる。料理は当番制で、今日はお父さんが作る番だ。

 玄関の鍵を閉めていると、とてもいい匂いがしてくる。この匂いは……!


「お父さん、今日はもしかしてカレー!?」

「そう、は納豆カレーだ」

「おおおー!! 納豆カレー!」


 カレーライス。カレーは大好きだ! そこに俺の好物の納豆も加わるとは、最高だ!

 靴をぬいであがる。手を洗ってうがいして着替えた。俺は居間と隣接している仏間に向かう。俺たちの家はお祖父ちゃんから受け継いだ家だ。仏間の部屋には家柄が続いたことを示す当主の写真。近くの棚の上には祖母と祖父、母の写真がある。

 ライターで蝋燭に火をつけて、線香を近づける。……京都は線香にも困らないからいいな。今日の香りはカレーと混ざって違和感ないような香りにする。

 線香を灰の上に刺して、おりんを鳴らして目を閉じて合掌した。


 ……お祖父ちゃん。お祖母ちゃん。お母さん。俺は俺なりに頑張っていくよ。


「朝飛! カレー用意するぞー」

「ああ、ごめん。手伝うよ!」


 すぐに蝋燭の火を消して、台所へと向かう。最初は料理が上手くなかったお父さんと俺だけど、今ではちゃんと料理を作れるようになっている。俺も料理を作れるようになったのは、お父さんと練習したからだ。

 ──昔に初めて作ったカレーは微妙だったけど、今ではおいしいカレーになっていると思うと感慨深いな。

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