第7話 君と僕とで意味を成す
その日の昼、僕は行動した。いたずらに日を延ばすのは無意味だと判断できた。樹との昼食を断り、3年5組にダッシュして前の廊下にいた。
僕の勘は当たった。
いち早く教室から逃げるように出て来た、髪の長いその子を待っていたのだ。
「加ノ上さん、だよね?」
「そうですけど・・・」
伏せていた目を上げた彼女の表情は、想像以上に生きていた。明るさは無いけれども、彼女の眼には虹のような鮮やかな光があった。僕も田中さんのように彼女の、”事実”、を捉えようとする。
加ノ上さんは、きれいだ。外見ではなく、どんなに押さえつけられても内面がほとばしる容姿とはこういうものだろうと思った。
「僕は3年2組の先代。一緒にお昼食べてもいい?」
彼女は少し目を大きく開いただけで、そのまま廊下を歩き出した。僕も並ぶ。5組の女子が、
「ちょっと、あれ」
って言ってる声が聞こえたけれども、どうでもいい。
しばらく2人して無言で歩いた。
校舎の外に出たところで、彼女が口を開いた。
「ごめんなさい。早く教室の側を離れたかったから」
「お弁当じゃないんだね。コンビニ?」
「・・・」
校門を出てから一番近いコンビニを素通りして歩き続ける。
10分ぐらい歩き、地元大手のスーパーマーケットの敷地内に入る。
「いつもこんな所まで来てるの?」
彼女は、うん、と頷く。
「先代くんはどうしたいの?」
「え?」
「わたし、前も何回か男子に声を掛けられた。けど、みんな断ったの。わたしにはそんな資格無いから」
「資格?」
「わたしと一緒にいると、先代くんも恥ずかしい目に遭うよ」
「昨日、加ノ上さんが頭をはたかれてる所を見た」
途端に彼女は目を伏せる。胸が痛むけれども、話を続ける。
「告白とかそういうんじゃないんだ。もっと大事な話」
「え?」
「その前に、加ノ上さんの下の名前って何?」
彼女は一瞬動きを止める。僕はもうひと押しする。
「教えるの、嫌?」
「ううん・・・”シナリ”」
「シナリ?」
「志が成る、で、志成」
一拍、どきん、ととてつもなく大きな鼓動が僕の胸を打つ。
”彼女だ!”
深呼吸する。
「僕は、先代タイシ」
「タイシ?」
「大きな志、で、大志」
ばあちゃんはこう言った。
「5人の敵を倒すために相棒が既に決まっている。ヒントは同じ学校の女の子で、名前を見れば、すぐに分かる」
僕は彼女に、クサいかもと思いながらも、こう言う。
「大きな志が成る、で、大志と志成」
そして、こうも思った。
彼女でよかった、と。




