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作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。
誤字脱字や引用の間違い指摘などはとてもありがたいので、知らせてやろうという奇特な方は宜しくお願い致します。
また、全ての作品において、暴力や流血などの残酷な描写、性的な表現がある可能性があります。不快に感じる方、苦手な方は読まないでください。
いっそ笑ってしまえば楽になるんじゃないかしら。
思い立って即行、顔面の全筋肉から力を抜いてみたら物凄く楽になった。後は口から飛び出す爆笑を、用意しておいた台詞に置き替えるだけ。
「黎明様!ご無事で!またお会い出来ると信じてましたっ!」
内心大爆笑で階段を駆け降りる際、追い越した伯爵様から「あ、ずるい」という呻き声が聞こえ、視界の師団長野郎が無理やり怖気を我慢したような引き攣り顔になるのが見え、もう何て言うか、絶好調にテンションが上がってしまった。
どろどろと絡み付いていた重く暗い感情を、あっさりと脇へ退かす事に成功してる。不思議。
あははっ!よーしポメを二匹にしてやろ!
ほんと楽しい。どれぐらいぶりだろう、こんな気分。駆け寄る足も軽い。
近付く強面に、ほんの1ヶ月前まで心底恐怖を感じていた事が信じられない。つい3日前にはその恐怖を再認識だってした筈なのに。たった一度、命を助けて貰っただけなのに。彼にとっては職務であり、大切な友人が保護している人物だったから仕方なく助けたってだけなのに。
殺すと言われた事、もうチャラになってるのかしら私ったら。
命を脅かす相手か、守ってくれる相手か。それはこんなにも人の心に影響を及ぼし、左右するものなのか。
それとも、英雄が本当はどういう人なのか、少し分かってきたから、かな。
「私の事、憶えて下さってますか。カレン・コーザックです。導師ヴァレンティヌスの弟子にございます。先日エミリオの森でお会いしました。あの、差し入れの方は召し上がって頂けましたか?」
ワザとポメラニアンには軽い会釈で済ませ、その斜め後ろぐらいで立ち止まって捲し立てた。2匹目のポメラニアンを目指してみたものの、実際に近付いてみるとやっぱりちょっと怖かったから、2歩手前で急ブレーキ掛けちゃったんである。撫で撫で?とんでもない!過去、縁日の金魚くらいしか飼った事が無い私にはハードルが高過ぎましたすみません。
一瞬躊躇ったが、ストールも取って顔を見せる。どうせここに居る人達には数日後の夜会で晒す事になるんだから、むきになって隠す必要性は無い。
いっその事、両手を組んで胸元へ添え、身を乗り出すようにして上目遣いにぱっちぱちに瞬きしておいた。必殺乙女。我ながらキモイ。もうなんならきゅんって口で言ってみようかしら、と思う間も無く白金色の真っ直ぐな眉が顰められ、眉間に目を逸らし難い皺が寄ってしまわれる。
わははっ!ちょーキモがられてる!こっえー!
館の出入口脇の壁に居た彼らに向かう私の正面には、師団長シェパード野郎と、ポメラニアンことカルヴァート子爵様の一人息子ニコライ様だけ。略してポメライ。私はさしずめポメンか。ポメライとポメンは並び立つと身長も然程変わらず、ポメライは髪が、ポメンは服が濃い茶色なのでとっても馴染んでしまった。
しかし、突然現れ英雄に遠慮無く駆け寄った奇妙な顔立ちの女に、玄関ホールに居た上流階級の人々は驚いているのか、固唾を飲んで英雄のリアクションを待つ空気になった。夜中にも関わらず煌々と魔導燭台が大量に灯り結構な数の往来が有って華やかなのに、突然凍り付いたように異様に静まり返って、誰だろこの女って顔に書いて小首傾げてるポメライだけが、衣摺れの音を立てながら私と師団長野郎を見比べている。
衆人観衆にド注目されてる。人生で初めてかも知れない。
瞬間、脳裏を過った孤児達に囲まれた夜の事は、瞬きひとつで奥へ押し遣る。
今回は何も起こらないと分かっているから怖く無い。台本は無いけど、ここでやる事は決められていて、予定されている通りに動くだけだから。
だって、ここでまさか彼が私を攻撃するなんて予定としては有り得ない。明日には恋が始まるんだから・・・とまで考えた時、目の前の三白眼が初めて恋って言葉を口にした時の事を思い出してしまった。
なので一層顔がにやけてしまったんだと思う。私を憮然と睨み下ろしていた青灰色の瞳に怯えに似た揺らぎが過ぎり、それに急かされるようにしてバリトンが絞り出された。
「・・・先日は、助かった。礼をさせて貰いたい」
超絶ドン引きしてらっしゃる。わは。こんなに嫌そうに「させて」って言われたのも生まれて初めてだ。むふふ。激レア。
「まあっ!嬉しいっ! でもお気持ちだけで十分ですわ、黎明様。貴方様がご無事な事が、何よりのプレゼントですもの。 あ、でも、ひとつワガママを聞いて下さいますか?」
小説とか読み倒してる私としてはド定番だが、この世界や彼らの生活圏ではどうなのか。途中から喋るペースを落として、もじもじして見せたりして、伯爵様が傍まで来る時間を稼ぐ。
そして師団長野郎の目線が私の背後にちらりと流され、もうすっかり慣れた伯爵様特有の深みと甘みのある重い香りがしたのを確認してから、頬に手を添えて腰を振り振りしてみた。無論声も張り気味に。
「あの、私の事、カレン、って呼んでくださいっ! きゃっ、言っちゃった!」
数瞬、沈黙が降りて。
まず最初に、すぐ背後から物凄く珍妙な咳払いが聞こえた。噴き出すのを咳で誤魔化そうとしたらしいが、伯爵様ったら失敗しちゃって苦しそう。ポメライは瞬く間に頬を、いや顔中から首から耳から全部真っ赤に染めて照れる。しめしめ、なんか思った以上にウケた。
でも、楽しい浮かれ気分は、そこまでだった。
ギャラリーをこっそり観察して満足してから目線を正面に戻すと、私を真っ直ぐ見下ろしていた師団長野郎の目が、見る見る感情を失っていくのが見えて。
釣られて引き潮のように心が醒めてく私に、やや待って、完全に無感情を取り戻した鉄面皮が低く言った。
「カレン」
例えばガラスやカバンみたいな、3文字の無機物を言い指したような、そんな声だった。
「・・・」
・・・・・・殺したくて堪らない虫けら、じゃなくなっただけマシかな?
今の流れで何が、どこが、師団長野郎の心に冷水ぶっかけたんだろう。気になる。ちょっとくらいおちょくられても、鋭利ツッコミでスルーするヒトなのに・・・。
カレンって名前の女に騙された過去がある、とか?
口説いて来る馴れ馴れしい身の程知らずな女は嫌い、とか?
戦時中なのにのん気にはしゃいだりする奴は軽蔑する、とか?
私が知らない見えて無いだけですんごい嫌な感じの人と目が合った、とか?
気を許したらもう、殺せなくなるから、とか?
「おやおや。これはまた味気無く呼んだものだ。照れてしまったかね? それにしたって女性の名前を、そんなに素気無く呼ぶのでは無いよ」
そうフォローしてくれた伯爵様のテノールも、釣られて低く冴えていた。声を失くして師団長野郎の前で縮こまった私の隣に並び立つ姿は、あの森での一幕を思い出させる。
同じようにその事を2人も思い出してくれたのかと感じたのは、流石に希望的観測が過ぎるか。
でも、それ以上耳に痛い言葉は交わされなかった。その事に少し驚いて、少しほっとした。今までの流れだと、このまま彼らは溝を深め兼ねない応酬を始める可能性も高かったけど。
「無事で何よりだ、導師」
「ああ、貴殿も健勝のようだね」
私が望む穏やかな暖かい空気は戻らなかったけど、馬鹿っぽいボケもツッコミも無かったけど、不必要に傷つけ合う遣り取りに発展しない事を、今は喜ぶべきかな。
冷たい拒絶の青灰色と、鋭く熱する赤色と。他人行儀な姿は今更で、傍目にはこんなにも滑稽なのに。
それでも当人達は、いっぱいいっぱいなんだ。身を切るような痛みを伴う感情に苛まれてるんだ。胸が痛くて痛くて、本当は堪らなくて、でもどうして良いか分からなくて。
私に信頼が有れば、私が彼らにとって大切な人物だったら、誤解を恐れず今すぐ言葉を尽くして仲直りするよう説く事が出来たろうか。
・・・どうして欲しい?
やっぱり土壇場になると怖くなる。ぎりぎりまで引き絞られた糸に、状況を熟知していない赤の他人が手を出す危険性はどれくらいなのか。
誰か正解を教えて欲しい。目に見えない大切なものを守るには、引き止めるには、どうしたら良いのか。どんな言葉が適切なのか。
私は失敗者だから、正しいやり方はまだ知らないんです。
お立ち寄り下さった全ての方に感謝致します。また来てね。
以下小ネタ・小話
だいぶ亀更新ですが、この辺りの下書きはもう2年前くらいになります。
・・・あれ、3年か・・・?
とにかくもうそれくらい時間経っちゃうと、当時流行ってたけど今はもうアレな言葉とかが出てきます。
てへぺろとかね。
アップ直前の最終チェックで直せるところは直すのですが、もうめんどくさくなってそのまんまな事も多々あります。
私は結構その時々の流行口調とか使っちゃうクチなので、●年前に書いたプチ不良が主人公の作品なんか目も当てられません。
シンプルが一番。
反省です。




