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平均点の少年は、誰の痛みも分からない  作者: くるみ


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第24話 7人目

白塔で犠牲になった生徒は、6人と発表された。

救出された3人。

すでに死亡していた3人。

学院は遺族へ謝罪し、補償を行うと発表した。


「1人足りない」


ネネが言ったのは、発表から3日後だった。

4人は食堂にいた。

リナがユリウスの隣に座り、ネネは向かい側にいる。


「何が?」


ダリオが尋ねた。


「退学した生徒は、6人だったでしょう?」

「救出された3人と、死んでた3人で6人だろ」

「ミロは、退学した6人には入っていないよ」


ダリオの手が止まった。

ネネは紙を広げた。

過去3年間に退学した奨学生の名前が書かれている。


アルマ・ノイス。

セドリック・ベル。

ほかに4人。

ミロは在学中のまま連れ去られた。


「なら、白塔にいたのは7人になる」


リナが呟いた。


「そう。救出された3人と、亡くなった3人では、1人足りない」

「学院が数え間違えたんじゃないか?」

「人の数を?」


ネネの声は静かだった。

怒っているときほど、彼女の声は小さくなるらしい。

ユリウスは最近、それに気づいた。


「先生に聞いたの?」

「聞いた。でも、発表が正しいと言われた」

「では、退学した1人は白塔と関係なかったのかもしれない」


ユリウスが言う。


「その可能性もある」

「なら、問題はないよ」

「本当に?」


ネネは紙に書かれた名前を見た。

最後の1人。

エマ・ルース。

2年前、家庭の事情によって退学したことになっている。


「この人の家族へは、連絡がついていないの」

「孤児だったの?」

「記録では、王都の仕立屋の娘」

「なら、店を探せばいい」

「住所に行ったけど、仕立屋はなかった」


ダリオが顔を上げる。


「行ったのか?」

「昨日」

「1人で?」

「昼間だったから」

「そういう問題じゃない」

「何も危ないことはなかったよ」


ネネは紙をたたんだ。


「でも、近所の人は、そんな店は最初からなかったと言ってた」

「記録が偽物なの?」


リナが尋ねる。


「たぶん」

「学院が、存在しない家族を作った?」

「分からない」


ネネはユリウスを見た。


「調べるのを手伝ってくれる?」


ユリウスは紙の名前を見た。

エマ・ルース。

知らない人間だった。

生きていても、死んでいても、自分には関係がない。

グレゴールは逃亡している。

エマの記録を調べれば、彼の行き先につながる可能性はある。

それならば、調べる価値はあった。


「いいよ」


ユリウスが答えると、ネネは少し安心したように笑った。

その表情を見てから、ユリウスは別のことを考えた。

グレゴールと関係がなくても、おそらく自分は同じ答えをした。



エマ・ルースの記録には、不自然な点が多かった。

入学時の魔力測定値は、学年平均を大きく上回っている。

それにもかかわらず、実技試験の成績は低かった。

本人が力を制御できなかったのか、意図的に低い成績を取っていたのかは分からない。

後見人の署名は、すべて別人の筆跡だった。

生徒名簿に貼られた肖像画も剥がされている。


「最初から、いなかったことにしようとしたみたい」


リナが言った。

図書館の一角で、4人は古い記録を広げていた。


「なぜ1人だけ?」


ダリオが尋ねる。


「ほかの生徒は、死亡したことを隠すために退学扱いにした。でも、エマは記録そのものを消そうとしている」


ネネは考え込んでいる。


「逃げたのかもしれない」


ユリウスが言った。


「白塔から?」

「あるいは、連れていかれる前に気づいた」

「なら、生きている?」

「可能性はあるよ」


ネネの顔がわずかに明るくなった。


「探せるかな」

「記録がほとんど残っていない」

「でも、入学していたなら、誰か覚えているかもしれない」


4年前の上級生や、当時の教師へ話を聞く必要がある。

時間がかかる。

ユリウスは面倒だと思った。

同時に、ネネがどこまで調べ続けるのか見てみたいとも思った。


「少しずつ探そう」


そう答えると、ネネは頷いた。

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