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エルデ神聖魔導高等学院 10

投稿いたします。



何かが爆発し、轟音と共に講堂が大きく振動する。

その揺れに耐えられなかった生徒や保護者達はその場に立っていることが出来ずに倒れていった。

舞台が爆心なのか黒くまがまがしい色の煙りが立ち込めているのでその周辺がどうなっているのか、

生徒達側からは見えていない。


「護衛騎士は何をしている! 至急出入口の閉鎖! 神導師、魔導師は、講堂周辺3ライル内で超防御二重結界を展開! 今よりこの場にいるものは全て退出を禁ずる! 騎士長状況報告!! 」


女王が騎士達に号令する。

要所要所に配置していた騎士達が、女王の号令の下、爆発が起こった舞台、各出入口に移動する。


「女王陛下!」

「騎士長か?!」

「はっ! 誠に申し訳ございません! 爆発を見抜けず防げなかった我が騎士団の罪、いかようにも。、」

「そんな事はどうでもよい! それより今はこの状況の確認と犯人の探索が重要! あなたの処分は後ほどの話です!」

「はっ! 現在部下が爆心部分を調査中であります! 姫様他、舞台上におられた方々の安否の確認をしております!」

「解りました、爆心捜査と、他の生徒、来賓の方々に怪我が無いか確認を急ぎなさい!」

「はっ!」


片膝を着き深々と頭を下げる騎士長に向かって、なんとか冷静に対応しようとする女王だが、どう見ても爆発した中心は舞台の上、演台があった所。

そこには、娘ルレリアーヌとリョウ、キョウが居た事は自分の目で見ていたのだから間違いはない。


(なんと云う事だ。全く感知に掛からないなど有り得るのか? この様な失態、レティア様になんとお詫びすれば良いと言うのだ?! それにルレリ、どうか・・)


母としては、すぐにでも娘が居た爆心のところに駆けつけたいのだが、国をあずかる女王として、この講堂に集まる生徒や他の人の安全を放っておいて動く事は許されない。

女王は不安な気持ちを表に出さずにただ非常事態の対応を続ける。

暫くして、爆発による煙りと埃が徐々に薄らぎ舞台の状況が確認出来るようになってくる。


「女王陛下!」


突然舞台側から騎士長の大きな声が女王の耳に届く。

各方面の責任者にそれぞれ指示を出し終えた女王は、騎士長が呼ぶ方に急いで向かう。

舞台袖から上がった女王は、その中心の惨状を目の当たりにして血の気が引いていくのが判った。


「ルレリ、ルレリアーヌ!!」


女王は、何とか自分を見失わないよう感情を抑えながら、リョウの腕に抱えられ倒れている娘の所へと近づいていく。

近くに来るにつれ、自分の娘が置かれている状況がはっきりと解り始め、自分の体が震え出している事に気づく。

それは余りにも酷かった。

白い制服と顔も髪も全てを赤くに染め、放心状態のリョウの腕の中で、同じように体中を血の色で染めたルレリアーヌ。

まだ微かに息は有るものの、それは今にも途絶えてしまいそうな、細い息に女王はこの時、覚悟をしていた。

そして、それを決定づける娘の体。

真っ赤に染まった制服のお腹部分。

そこが半分無くなっていた。勿論服だけで無くお腹の部分がそっくりえぐり取れていた。

傍らにはメアリが両手をそのお腹部分に手をあて神聖術の高位回復術式を展開し何とか止血をしているが、ただそれだけだ。

臓器が元に戻る訳でもなく、心臓が停止するまでに体を蘇生する等地上界の人族では到底無理であった。

それは、神族でも魔族でも同じであるが、彼らの体はの蘇生スピードは異常で、腹がえぐられようが、意識さえもち堪えられれば、死ぬまでには至らない。


「姫様! 申し訳ありません! 私が、私が側に付いておきながらこの様な!」


涙と鼻水で濡れた顔をぐしゃぐしゃにしながら必死に呼び掛け術を掛けつづける。

そこへ女王が近づく。


「これは、どうしたと言うのです?」


女王は荒げる事なく、誰に問う訳でもなく呟いていた。


「解りません! 解らないのです! 学院長がリョウ殿に証書を手渡しされたと同時に、ルレリアーヌ様が突然動き出されたと思ったその瞬間に爆発が起こったのです!」


この当事者以外で一番近くに居た、生徒会長のルキアーノが言葉を荒げながら何とか言葉を繋ぐ。

この時ようやく女王は周囲を見た。

倒れているのは、我が娘以外、リョウ様とキョウ様、そして学院長が舞台から投げ出され下の講堂の床に倒れている。

そしてちょうど演台があった場所には、木の板とその下の石造りの基礎が0.5ライル、人の背丈分くらいの穴が開いていた。

それ以外の部分には殆ど被害が無く、爆煙と爆音の割に被害範囲が限定的であった。


「これは、指向性の爆発術式か、いやそれだけではないか。ルレリアーヌがその体で爆発の規模を押さえ込んだのか。」


か弱い息をし目をつむる娘に向かう。


「そなたのおかげで、被害を最小に留める事が出来たようですね。リョウ様とキョウ様は?」


必死に術式を掛けつづけるメアリの側に座りながら、救護に駆けつけた衛生師の女性に二人の状況を確認させる。


「はい、キョウ様は気を失っておられますが、怪我等はございません。脈拍も正常です。リョウ様も少し放心状態で精神的に不安定に見えますが外傷もかすり傷程度で命に別状はございません。」


衛生師の報告を聞き、少し気持ちを落ち着かせる事が出来たセルマリアーヌ女王陛下。


「しかし、王女殿下は・・・」


衛生師の女性は、王女の惨状を確認し、手の施しようが無い事を判断するがそれを母である女王に言い出す事が出来なかった。

しかし女王は言われなくとも判っていた。

この状況で助かる事など出来ない事など。


「メアリ、もう良いですよ。これ以上ルレリを苦しめないであげて。」


そっとメアリの方に手を優しく置き、諭すように語りかける。


「しかし! 女王陛下!!!」


ぐしゃぐしゃの顔で女王に振り向き、諦めるなど出来るはずも無いと訴えようとしたメアリだったが、女王の表情を見て思い止まる。


「ルレリアーヌ、リョウ様、キョウ様ともご無事ですよ。学院の生徒も皆無事です。・・・本当にありがとう。」


女王は、ルレリアーヌの血に染まった手をそっと握り、優しく微笑みながらお礼をのべると、ルレリアーヌの顔が微かに笑った様に思えた。

そして、母である女王に持たれた手の温もりが徐々に無くなっていく。


「・・・・・・・・・・だ・・・・・だめ・・だめだ」

「リョウ、様?」

「・・・・・だめだ・駄目だ、駄目だ! そんなの絶対に駄目だああああ!!」


今まで放心状態だったリョウが突然大きな叫び声をあげた。

王女の運命は?

読んでいただきありがとうございます。

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