エルデ神聖魔導高等学院 9
投稿いたしました。
台に乗っているとはいえ、顔が漸く見える程度のキョウは爪先立ちになり少しでも皆に見える様にする。
「わらわが、キョウ・クロフブロナじゃ。魔界から来たのじゃ。皆宜しくなのじゃ! 特に女子とは親密になりたいからドンドン声をかけて来てほしいのじゃ!!」
静まり返る講堂。
「天界? 魔界?」
「え? 神族の方と魔族の方?」
「は、始めて見た。」
「でも、可愛い、と云うか二人とも小さくない?」
「いや、そもそも、今、自己紹介したの、少女というより幼女だよね?」
生徒は勿論、この講堂にいる一部の者を除いて、その二人の可愛らしさに見とれながらも本当にこの子等がこの学院に入学するのか疑問に思ってしまう。
確かに、神族や魔族は地上界に人族よりも優れた能力を持っている事は皆解ってはいる。
実際、教会の信仰対象の神王、魔王は、人族から見れば超越者、比べる方が可笑しい存在。
それでも、神族、魔族の方が全員、神や魔として崇める訳でもなく、地上界で暮らしている者も極僅かだが存在している。
なので、此処に居る事自体はおかしいと思う者は多くないはずだが、ただその容姿に皆が戸惑っていた。
どう見ても、年齢が一人は10才前後の少女で、もう一人は明らかに幼女、4、5才にしか見えないからだ。
「皆様、こちらのリョウ様は天界六大天使のお一人、レティア・クラウディア様の遠い血筋のお方、そしてキョウ様は、魔界魔将四天王のお一人、コーウェン・クロフブロナ様の遠縁のお方です。お二人とも遠縁とはいえ神々の血ひく方ですので小さく見えますが、私達とほぼ同じ年齢です。」
ルレリアーヌが生徒達のざわめきの原因を答えると、生徒達の中からは、なるほどと言う声が聞こえて来た。
「ちょっと、無理矢理っぽいけど、納得されたのかな?」
小声でリョウがルレリアーヌに聞いてみる。
「そうですね、神族、魔族の方が長寿な事は皆知ってますし、年齢や見た目はそれ程問題にはならないと思いますよ?」
ルレリアーヌの小声で、リョウとキョウに説明する。
ただ、さすがにお二人が神王と魔王だとは言えないので、レティアとコーウェンの遠縁という設定にしたのだが。
「遠縁と言ってもあの、双剣の爆神と言われるレティア様と、知の魔将コーウェン様の血筋のお方!」
「なんと光栄な事か!」
「それに、お二人ともなんて可愛らしいのでしょう。」
「キョウ様は将来絶対に、凛々しいお姿になられるわよ!」
「リョウ様はもう今のままで女神といっても良い程の美しさをお持ちだわ!」
講堂は、二人を絶賛する声で沸き返る。
ルレリアーヌとリョウ、キョウの三人は受け入れてもらえて一安心になるが、リョウとキョウにとっては少し過剰な感じで自分達を絶賛する生徒達に少し引いていた。
「それでは、これよりお二人の入学証書の授与を行いますのでお静かに願います!」
ルレリアーヌの一声で、会場中が静まり返った。
「入学証書の授与は、ゴルディバ・レーベン学院長より授与されます。学院長お願いいたします。」
司会の言葉で舞台下の関係者席に座る長い白髪の老人がスッと席を立ち、舞台へと上がって行く。
その風貌から賢者にも見える老人は、ルレリアーヌやリョウ達が待つ演台の方へ向かう。
そして学院長の後ろに従う様に、学院の職員もまた大きな黒いお盆の様な物を抱えながら舞台に上がって来る。
このお盆に入っているのは、リョウ達がこの学院の生徒である明かしの証書等が入っている。
学院長がリョウ達に向かい合う様に立つと、両者の間にいたルレリアーヌはそのまま授与式を見守る為に学院長側の斜め後ろに控える。
まずは職員が学院長の横まで進み、黒いお盆を少し前に差し出す。
学院長はそのお盆から一枚の厚手の紙を両手で取り上げると、そのまま向かい合うリョウの方に向かって差し出す。
「貴殿に我がエルデ神聖魔導高等学院への入学を認める事をここに証明する。」
少し棒読みな感じで読む学院長にルレリアーヌは違和感を感じた。
(あら? 学院長ってあんな喋り方してらしたかしら? リョウ様とキョウ様の正体を知っている数少ない人物の一人ですから、緊張なさっているのかしら?)
心の中で、違和感について考えるルレリアーヌ。
ただ、見た感じおかしなところがある訳でも無く、取り敢えず心の中に留めおく事にした。
その間に、学院長が証明書を掲げる様に、リョウへと差し出すと、リョウも両手を伸ばし恭しくその証明書を受けとると頭を下げる。
その時、証明書の中心に赤く光ながら術式方陣が浮かび上がり、ゆっくりと回り始めた。
(あれ? 何? あの術式方陣。)
学院長の
斜め後ろにいたルレリアーヌには、その術式方陣が見えたが、リョウやキョウにはそれが見えていないようだ。
(でも、術式が展開しているのに、神聖力も魔力も感じない?)
通常、術式が展開すれば、何らかの力が発動しているので、周囲にもそれは伝わる。それ以前に術式が込められた物には、それなりの神聖力とか魔力が感じられるのだが近くにいるルレリアーヌでさえ感じていなかった。
(それよりも学院長が普通にしているのがおかしい? まさか学院長が隠蔽妨害術を発動して感知出来ない様にしている? どうしてそんな事を? それにあの術式、見たことが無い紋様。、何か嫌な感じが、)
ルレリアーヌが思考している間にもその術式の回転がドンドン早くなって行く。
それを唯一見る事が出来ていた、ルレリアーヌだけが、動き出していた。
それは考えてでは無かった。
ただ、頭に響く危険信号がそうしなければ、と判断し体が無意識に動いたのかもしれない。
自分の最大の神聖力を身体中に巡らせ、強化した筋力で前へと動いていた。
「ドゥガアアアアアンンン!!」
轟音が講堂に鳴り響いた。
読んでいただき有り難うございます。




