新たな生活の始まり 1
新しい場面に入ります。
「姫様! ルレリ様! ルレリアーヌ王女殿下!! 女王陛下がお戻りになられました!!」
エルデパルディア王国の王城、エルデクリスタ城内に木霊する声が、王女殿下に届けられた。
城内に響き渡る、靴の音。
深緑色の絨毯の上をドカドカというけたたましい音と共に勢いよく走り抜ける女性。
普通これだけの質の良い絨毯を歩いても、これほどの音が鳴り響くはずがないのだが、確かにこの女性が通るとしっかりとした靴音が響く。
それ程この女性は急ぎ慌てていた。
女性はスカートの両脇を手で持ち上げ、裾が足に絡まらないように注意しながら、今出る最高の速さで突き進む。
勝手知ったるこの廊下がどれだけ長く感じるのか、まだ目的の部屋に着かないのをもどかしく思いながらも必死に走る。
ようやくその部屋の扉が目の前にあと3ライル!
バーン!!
大きな音と共に扉が大きく開かれる。
淑女とは思えぬその有様に、部屋の中に居た者の視線がその女性に注がれた。
「あら、セルマじゃない、お久しぶり~! 貴女、帰って来るのもうちょっと先じゃなかったの?」
レティアがセルマと呼ぶ女性こそ今、城の中を物凄い勢いで疾走し、城門からこの部屋へ最短時間で到達した、セルマリアーヌ・エルデ・パルディア女王陛下、このエルデパルディア王国の最高位その人であった。
軽~い感じで挨拶して来たのはレティアを見て普段は見られないだろう素の表情の女王がいた。
「レ、レティア様! ほ、本当にお出でになっていたのですか?!」
「まあね、それより貴女の娘、ルレリ、しっかりした子だね。私スッゴく気に入っちゃった! 彼女がいればこの国も安泰だね。」
「あ! お褒めにあずかり光栄であります。私が言うのもおこがましいですが、我が娘ルレリアーヌは、この私をも凌ぐ逸材だ、と・・・・・じゃ!ないです!!」
一瞬、愛娘をレティアに褒められてつい本気で嬉しくなったのだが、そんな事は今は置いて置かなくてはならない程の事態に陥っている事を思い出した。
「レティア様! 娘の自慢話は後ほどいっぱいしますのでそれより説明願えませんか!」
「あ、娘の自慢話はするのね。」
レティアはこれが他国からも一目置かれる女傑、天災と言われ恐れられているセルマリアーヌ・エルデ・パルディア王女がじつはただの親バカだと言うことを微笑ましく思っていた。
「相変わらずの親バカだね。まあいいわ。で何処まで聞いてるのかしら?」
「何処って全部ですわ! それが本当の事でしたら一大事じゃないですか!!」
「だから、諸外国の訪問を切上げて戻って来たと?」
「当たり前です!」
物凄い勢いでレティアに食ってかかるセルマリアーヌ女王。
普段の冷静な印象はこの場所では見られなかった。
「まあでも、大丈夫だと思うわよ?」
「何が大丈夫なんですか?!」
「ん~、見てもらった方が早いかしら。セルマこっちに来て。」
興奮しっぱなしの女王を宥めながら、奥の部屋へと続く扉に向かい、軽くノックをする。
「レティアだ。入るぞ。」
「はい、大丈夫ですよ!」
(あれ? 今の声ルレリよね。やけに楽しそうだけど?)
女王は扉の向こうから聞こえて来た自分の娘の声を聞いて怪訝に思った。
確か手紙には、国を揺るがす大事に直面し、死をも覚悟したと。言うような事が走り書きで書かれていた。
あの、ルレリがここまで字が泳ぐ程焦っているのは余程の事だと思い、外交を切上げ帰ってきた女王にとって今の娘の明るい声はそう思っても仕方のない事であった。
扉が開かれる。
今、女王達が居た部屋はプライベート区画ではあるが親しい友人とかを招く応接室であり、その奥にある部屋こそ、王族が使用する完全なプライベートな部屋になっている。
セルマリアーヌ女王は、その部屋が娘ルレリアーヌの私室であることはもちろん知っていた。
ただ、昔からルレリアーヌは出来過ぎた子で、歳の近い子とも話が会わず、誰かと一緒に遊んだり勉強したりする事がなかった。
しかも、将来この国を背負う事が義務付けられた王女である。
打算的な目的で近寄る者はいても、友達として近づく者など今まで居なかったのだ。
だから、親の友達など居なかったのでこの部屋に連れて来る事も一度もなかった。
それが今、セルマリアーヌ女王の目の前には、娘ルレリアーヌと、メアリ、そして見知らぬ女の子が二人、楽しげに笑い合っている姿が目に写った。
読んでいただき有り難うございます。




