エルデパルディア王国 2
「姫様! ルレリアーヌ姫様! 一大事でございます!!」
食事を終え、お茶を飲みながら一日の中でも唯一まったり出来る時をメアリと過ごしているところに、無粋な騎士が一人、息を切らしながら食堂の中に駆け込んで来た。
せっかくのプライベートタイムをだいなしにされた姫ルレリアーヌは一瞬眉尻を吊り上げるが、直ぐに冷静さを取り戻す。
しかしそれを許さない存在が一人いた。
「今は、ルレリアーヌ姫のプライベートタイムですよ。それをむさ苦しい騎士風情が邪魔をするとはどういう用件か? つまらぬ事なら切捨てますよ?」
その表情は本気と書いてマジだった。
その威圧ある視線を投げつけられた騎士はその時点で、自分は死んでしまったと思い込む程の精神干渉を起こしていた。
その様子を、嬉しく思いながらもやりすぎの彼女に溜息を小さくはいてしまう。
(私の為に尽くしてくれるのはうれしいけど、私に害があると見境がなくなるからなあ、嬉しいけどね。)
「メアリ、その辺で勘弁してあげなさい。彼も仕事で仕方なく伝令に来てるのだから許してあげなさい。」
「はい、ルレリ様がそうおっしゃるのであれば異存はございません。」
そう言っていつの間にか構えていた短めの剣をスカートの中の自分の太ももに隠している鞘へと仕舞った。その動作は実にスムーズで、スカートが一瞬、翻るものの大事な部分は全く見えない芸当を見せつける。
その動作に少し見惚れるルレリアーヌ姫だったが、直ぐに騎士の方に向き直ると、事の次第を尋ねる。
「それで一大事とは、何事です? こんな朝早くから私邸にまで訪れるという用件は?」
「は、はい! それが私も詳しくは存じあげぬのですが、」
それは一瞬だった。
その騎士が用件について知らないと言った瞬間、その騎士の喉元にメアリの剣が突き付けられていた。
「事と次第では切捨てると言ったはずです。」
その声は地獄の底から響く冷徹なもので、その騎士はガクガクと奮えその場に尻餅をつき倒れてしまった。
「あ? 情けない。これぐらいで失神するとは、王国の騎士が呆れてしまいます。」
その光景を涼しい顔で見ているルレリアーヌは、小さく溜息をはく。
「メアリ、めっですよ。やり過ぎです。」
「も、申し訳ありません!」
素早く剣を仕舞うと、ルレリアーヌ姫に向き直り、膝を付くと深々と頭を下げ謝罪する。
「それで、今ので判ったと思うけど、下手な良いわけならあなたの命、保障しかねますよ?」
半分冗談、半分本気の顔で騎士に最後通告を告げると、その騎士は機敏な動作で態勢を戻すと再度頭を下げる。
「は、申し訳ございません。内容については聞かされておりませんでしたので、ついその様な言い方になり誤解を招いたことお詫び申し上げます!」
「はい、謝罪は受けました。それでその後を聞きたいのですが?」
ルレリアーヌ姫は騎士のその後の言葉を要求する。
「は! 神王教と魔導教の双方の大司教から託宣があったとの報告がお城にあったそうです。王妃様は現在諸外国との会談の為数ヶ月お留守でしたので、王国の代表補佐であられる姫様にお伝えするよう、政府高官から承っております。」
一瞬戸惑うルレリアーヌだった。
(どういう事? ここ数年、託宣なんて無かったはず。それが神王教と魔導教の双方から? そんな事、エルデパルディア王国創設以来聞いた事がないわ!)
「それは本当の事ですか?」
「はい、間違いありません!」
「そうですか。判りました。では直ちにお城に登城する旨を大臣達高官に伝達するようお願いします!」
「は!!」
騎士は勢い良く立ち上がると、きびすを返し脱兎の如くその場から立ち去って行った。
(何かメアリの側にいたく無かったのかな?)
「メアリ、早速登城の準備を! ん? どうしたのメアリ?」
何時もは、ルレリアーヌ姫の言葉に直ぐ反応するメアリからなんの応えが返ってこない事に不思議に思い振り返ると、そこには恍惚とした顔のメアリが突っ立っていた。
(そうだった! メアリは相当な神王リョウ様と魔王キョウ様の盲目的なファン信者だったわね。)
「メアリ、そのまま突っ立っていると置いて行くわよ?」
ルレリアーヌ姫の言葉に、一瞬で素に戻るメアリ。
「も、申し訳ありません!!直ぐに準備を致します!!」
大きく頭を下げた後直ぐに準備んい取り掛かるメアリを横に、ルレリアーヌは一抹の不安を感じていた。
(一体、何が起ころうとしてるのかしら?)
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