エルデパルディア王国 1
地上界編にスタートです。
まだ、大人の女性と呼ぶには若干青さが残る、一人の少女が、カーテンの隙間から漏れる日の光を眠気眼の端に留めていた。
(ああ、また退屈な一日が始まるのね。)
ベットの縁に座り、まだ起ききっていない身体を解そうと、両腕を天井に向け突き上げ大きく伸びをする。
「う~~~ん、さて愚痴を言っても、どうしようも無いしさっさ身支度してしまいましょう。」
コンコン
「どうぞ、起きてるわよ。」
扉をノックする音に応えた彼女は、それ以上扉の方に感心を示さず、ベットの直ぐ側にある鏡台へと向かいゆっくりと座る。
その所作は悠然とし洗練された動作で、もしこの部屋に他の人が居れば、ホーと感嘆していただろう。
「失礼致します。」
彼女が鏡台に座ると同時に、先ほどの扉が開き、一人の紺色のワンピースに白いエプロンをした給仕姿の所謂メイドの女性が入ってきた。
「お早う、メアリ今日も宜しくね。」
彼女は、鏡台の鏡に向かったまま、メアリと呼んだメイドの女性に朝の挨拶をする。
「お早うございます。姫様。」
メアリは、鏡台に座る姫様と呼ばれた彼女の斜め後ろのところ一度立ち止まり姿勢を正し挨拶する。
その動作は隙がなく、歳も姫様より少し上位だろうが、その洗練され鍛えられた所作は見事であり、彼女が相当に優秀なメイドあることが解る。
メアリはそのまま姫様の後ろに立つと、何も言わずに目の前にいる美しい腰まで伸びるブロンド色の髪をブラシで丁寧に梳かし始めた。
「メアリ、今日の予定は特に変更は無いわね?」
「はい、この後、御朝食の後、身支度をしていただき御登城願います。午前中は執務室にて各国からの謁見の要望や貿易等の交渉、国内の貴族の査察報告、各街道の警備に関する改善点の調査報告に王都の守護部署からの治安改善の要望書等について各省庁から上がっています書類の決済をお願い致します。午後は、10件の貴族代表との個別謁見と、スワベル公国からの表敬訪問を王と皇太子殿下と同席していただきご挨拶をお願い致します。夜はスワベル公国との晩餐会にご出席いただきます。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうかなさいましたか?」
「溜息しかでないわ。」
まだ始まったばかりの一日なのに姫様の顔は疲労困憊にやつれているように見えた。
「私が口を挟む事では無いと重々承知してはおりますが、私、姫様のお身体が心配でございます。このエルデパルディア王国の執務の大半をこなされている上に各貴族、隣国との交渉、決済、挨拶などいくら姫様が優秀だからといって、王や皇太子殿下の分までされる必要は無いのではと。あまり甘やかすのもどうかと思いますが。」
「仕方ありません。あのボンクラどもに任せていたら、この国は直ぐに立ち行かなくなりますよ。それにあと半月もすれば、お母様が各国の表敬訪問よりお戻りになられます。そうすれば今の忙しさも半減しますから大丈夫ですよ。」
メアリの心配を嬉しく思う姫だった。
「でも、そんな事を兄上の前で言ったら不敬罪になりますよ?」
「大丈夫です。そんなヘマはいたしませんので。それにもし皇太子殿下や王の怠慢で姫様が倒れられたら、即刻、この命をかけ私がお二人を鉄槌を下しますので。」
鏡越しに見えるメアリの表情は、冗談には見えなかった。
昔、冒険者をしていたメアリは、相当な力量の持ち主で冒険者ギルドの中でも天才、神童とまで言われる逸材で、騎士が数十人で討伐に当たる特一級の魔獣を当時10才で単独で倒せると言われていた。
では、何故そんな彼女が今はメイドなんかをしているのかはまたの機会にお話いたしましょう。
(メアリなら本当にやりかねないわね。これは簡単には倒れられませんね。)
心の中で誓う姫様だった。
それから身支度を終えた姫とメアリは寝所を出て、食堂へと向かうのであった。
読んでいただき有り難うございます。




