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鎗ヶ崎の交差点  作者: 誠一郎
19/40

鎗ヶ崎の交差点⑲

 六本木ヒルズに着いて、途中でスタバに寄った時も僕らの笑顔は耐えなかった。くだらないことだった。コーヒーを買い、お釣りを取り忘れたので僕が知花のジャケットに無理やり押し入れるとポケットに穴が空いていて小銭が落ちた。

「これ古着だから」

 知花がそう言った瞬間に二人で大笑いした。

映画が始まると酔いのせいで爆睡して二人とも何も覚えていなかった。そこでまた寝てしまったことが可笑しくて笑い合った。

 この日の僕らは、十年前に出会った時も含めて一番心が通じ合っていたと思う。僕は今でも、この日の喜びを忘れられないし、毎日この日に戻れたらと願っている。

 映画館を出て食事の場所を探した。しかし日曜の六本木の店はどこも閉まっていた。仕方なくタクシーに乗って恵比寿に向かい、どうにか開いていた居酒屋に入った。

 二人ともかなり飲んだせいで酒は進まなかった。しかし話は尽きなかった。彼女は自ら会わなくなってからの十年間の出来事を話してくれた。

 僕と会わなくなってからもしばらくはあの蛇崩のマンションに住んでいたこと。中目黒内で点々と引越しをしていること。仕事も普通の会社に勤めたりしながら、二年前に店を引き継いだこと。そして今、付き合っている相手がいること。

 彼女に相手がいることを聞いて落胆しなかったわけもない。しかし、空白の十年の間に誰とも付き合っていないのは不自然だし、今この時、知花が僕とここにいるなら関係ないと思った。

 そんな想いを察したのか、知花が言った。

「彼とはうまくいってないの」

 僕は一緒に過ごした一日に自信を持っていた。そして、酔いに任せて言った。

「じゃあ俺、待っててもいいかな?」

 すると知花は照れながら嬉しそうに笑って頷いた。僕達は次の週に食事をする約束をして別れた。

 そのあとの一週間は僕の人生の中で一番長いものとなった。この一週間で知花は相手と別れるだろう。そして僕はやっと十年もの間待っていた運命の女性と付き合えると勝手に確信していた。

 しかし、僕らはこの時も付き合うことができなかった。若い頃の僕らにはどうしようもない差があり、この時はタイミングが合わなかった。運命はいつも僕らを、いや僕を弄ぶように彼女を遠ざけるのだ。

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