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嫌われ者と生徒会長〜優しさに触れて、解けていく〜  作者: 月星 星成


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18話

『いいの? 本当に、そんな方法で』

『……うん。黒瀬さんの考えに全面的に賛成したわけじゃないんだけど、わたしも少しだけ怒ってみたい。けれど、やっぱりわたしのせいで、誰かが不幸になるのは耐えきれないんだ』



「ははっ、茜は凄いよねぇ。怒りながらも、他人のことを考えてた。……ほんと、私とは大違いだ」


 まぁ、手段は私と似たような物なんだけどね、と呟きながら、私は学校の屋上から正門から続く校庭を見下ろしていた。

 校庭では、学校に来た生徒たちが、蟻のように列になって歩いてきた。やっぱり、高いところの景色は好きだね。こうして人を見下ろすのは、最っ高の気分になれるんだから。


 空は雲一つない快晴。風は吹いているものの、弱すぎず強すぎないちょうどいい強さ。

 今日この時が、コレをするのにぴったりだ。


(せんせーに怒られそうだなぁ。まぁ、私はどうなってもいいんだから、気にするだけ無駄なんだけどね)


 そんなことを思いながら、私は用紙していた紙の束を持った。

 白い紙が風に揺れ、端がぱらぱらと踊る。そこに印刷したのは、白黒の写真――それも、カメラを使って盗撮したいじめのシーンだ。


 けれど、個人の特定は難しいだろう。

 何故なら、いじめっ子たちの目には、黒い線を引いており、ある程度推測することが出来ても、それで確定することは出来ない。

 そのせいで、先生や生徒会はいじめっ子を裁くことが出来ないだろう。


(でも、アイツらは違うよね)


 第三者は、この写真が誰なのかわからないだろう。しかし、自分のやったことに自覚がある人は、この写真が誰なのか一瞬でわかる。

 だから、いつ自分がいじめをしたことがバレるのか常に怯えてしまい、これ以上茜をいじめることが出来なくなり、勝手に自滅していくのだろう。


 しかも、この写真のたちの悪いところは、個人の特定が出来着ないだけで、推測自体は出来ると言うところだ。

 きっと、いじめっ子たちは、先生たちに要注意人物として見られてしまい、罰則自体は無いものの、しばらくの間は息苦しい生活になるだろう。茜は、誰も傷つけたくなかったみたいだけど、この方法もかなり悪趣味だと思うよ。


 まぁ、人間ってそういうモノだ。自分がこの方法は良い方法だと認知すれば、それは良い方法になる。傲慢で醜悪な生き物、茜だって例外ではない。


「ははっ、じゃあやるか。心の底から楽しめる方法だしね!」


 ちょっとだけ、紙を持つ指が止まった。風がその隙間をすり抜けていくのに、私は気づかないふりをした。

 紙の束を屋上から放り投げた。

 指先から離れた瞬間、風が一気に紙をさらい、ひらひらと校庭へと舞い降りる。白黒の写真が、太陽の光で輝いていて、落下の軌道だけが妙にゆっくりに見えた。


「え、なにこれ」

「いじめ?」

「やばっ、写真とろ」


 地面に落ちた写真を見た生徒たちが、ざわざわと集まり始めた。

 誰かが拾い上げ、誰かが覗き込み、誰かが距離を取る。


「これ……誰?」

「分かんないけど、やってることはガチだよね」

「てか、これ学校にばら撒かれてんの、普通にやばくない?」


 誰も名前を言えない。

 でも、心当たりのある人間だけは、きっと胸の奥がざわついている。

 

「さて、撤退しようかな」


 学校は小さな社会だ。新たな噂が出れば、それは一瞬で広がっていく。

 その噂が、新たないじめを生んでしまうこともあるだろう。だから、それをさせないために、先生や生徒会がいじめが起きないように監視を強める必要がある。


 そのおかげで、少なくとも数か月は、いじめが起きない環境になるだろう。

 もし、先生がそんなことをしなくても、あの生徒会長は絶対にいじめを防ぐために働いてくれるし、生徒会の仕事に誇りを持っていそうな茂木先輩や遠藤先輩とかも、きっと協力するだろう。


「これから、どうなるのかな?」


 私のしたことが正解か不正解かなんて、誰にもわからない。

 というか、物事には正解なんてものはなく、どうしようもない間違いか、まだマシの間違いしかないのだろう。

 だからこそ、私はこの行動をしたことに後悔はない。間違いだったとしても、それは結果論なのだから。


 校庭のざわめきは、もう屋上まで届いていた。

 写真を拾った生徒たちが、誰かに見せ、また誰かが覗き込み、その輪がゆっくりと広がっていく。


(……そろそろ、行こっか)


 私は金網から手を離し、屋上の扉へ向かった。

 風が背中を押すように吹いて、紙の落ちた方向へ流れていく。


 階段を降りる途中、校舎の窓からちらりと校庭が見えた。白黒の紙が地面に散らばり、その周りに生徒たちが集まっている。

 その中心に、見覚えのある後ろ姿があった。


 肩がわずかに強張っている。

 顔は見えない。でも、誰なのかは分かる。


(安心して、君には何も起きないはずだから。あと、これからすることは、私の我儘)

 

 約束とは少し違うけど、これからすることは、私のこれからを良くするためのもの。

 ちょうど良い取引に使えそうなものが手に入ったんだから、勝手に使っちゃうね。


 人は嘘で作られているんだから、これは良い教訓になると思うよ。

 

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