第246話:爺ちゃんへ報告
クリティカルに土日が暇になった。なので土日を使ってちょっと里帰り。爺ちゃんに扶養家族のこととか説明しないといけなくなるし、こういうのは面と向かって話した方がいい。
爺ちゃんに説明するために、実家へ一度連絡を入れてから、今日一旦帰る時に話す用事があるから、と伝えて、そのまま電車で一路、地元へ。彩花には実家に帰ってるからいないぞ、と一報を入れておき、これで部屋に来ても誰もいなくて……と言うことは回避できた。
後は爺ちゃんにちゃんと話して、俺今年から稼げる男になったんだということを説明して、既に稼ぐ手立ても稼いだ金もこれだけあるんだと納得してもらって、扶養家族に今年分から入れないことを伝えておかなければいけない。
金の面では散々お世話になった爺ちゃんだ、早く楽にさせてあげたいというのと、残った金で老後楽しく暮らしてほしい。そのためには俺がいつまでも学生気分でぶら下がっている訳にはいかないだろう。
実家の最寄り駅について駅に着いたと連絡を入れると、向こうでクラクションが鳴る。振り向くと、爺ちゃんが車で迎えに来てくれていた。
「おう、年度末以来だな。元気にやっとるか」
「やっとるぞ。一人暮らしも四年目やし、まあ色々と楽しんではいる。前より部屋も広いしな」
「そうかそうか、それはええことだ」
爺ちゃんの運転で家まですぐ。歩くつもりだったし道中でアカネの祠を見てくるつもりだったが帰りだけになりそうだ。
家に着くと、どっこらせと座卓に座り込んで、爺ちゃんと対面で向かい合い、まず茶を一口。それから話し合いの場が始まる。
「で、真面目な用事ってなんだ? 」
「うん、俺今年から真面目に稼げるだけの目処が立ったから、とりあえず、少なくとも今年に限っては扶養家族から抜けることになる。というか、なった」
「それは探索者の仕事としてやっとる、ということか」
「そう。去年もチマチマとは稼いでたけど、今年も来年も……となると問題が発生するから、今年の分で……下手に就職するより随分稼いでもうた」
爺ちゃんにレシートを見せて、稼いだ証拠として大学ダンジョンのギルドで換金した品物の数々の検品結果といくら稼いだか、のリストを全て提示する。
「これは……稼ぎ過ぎじゃの。ワシの一番多い時の年収よりも多いかもしれん」
「探索者だから誰でもこれだけ稼げる……というのとは違うけど、俺は稼げた、そしてまだ今年は半年残ってる。だから、できるだけ使わないように残しておいて、細々とやっていこうと思う」
茶を飲み切ると、お代わりを注ぐ。爺ちゃんもお代わりを要求してきたので茶碗に注いであげる。
「ふむ……まあお前のことだからその辺はキッチリやってるとは思うが、税金や確定申告の手伝いを他人にしていいのは税理士だけだから助言は出来んが。その辺のレシートはキッチリ一枚逃さず残しておいて、経費にできそうな分は経費にしろ。それだけだな」
してんじゃん……助言さ……。まあいいけど。
「それを言いにわざわざ電車賃使ってここまで来たのか。まあ大事な話ではあるし、電話で他人に聞かれて気分がいい話ではないしな。わざわざ金の話をするために金を使ってきてくれたのはありがたいし、大事な孫の顔も見れたしでワシとしては文句はない。強いて言うなら……ちょっと寂しいのう」
完全に俺が手から離れたような感慨にふけっているのだろう。
「ただ、稼ぐ暇がなくて扶養に入れそうになったらまた連絡するからその時は来年以降よろしく。後、生活費も足りなくなったらちょっとせびりに連絡するかも」
「その時は任せとけ。お前の両親……雄介と和美はお前が育ちきるまでの金は残しておいてくれたからな。まだ半分以上手を付けずに残っとる。本来ならお前が相続する資産なのだから、大学卒業したら名目共にお前のものだ。好きに使え……と言っても、その間にお前もそれなりに稼ぎそうではあるがな。今のペースを考えると」
確かに、去年からの分だけでこれだけ多くの金額を稼ぐことになっているが、去年と違って今年は夏休みをフルに使って探索にあてられる。その分だけ専用ダンジョンで潜ったら……と考えると、とんだ金鉱脈がここに眠っていることになる。
自分を強化する方向でスキルスクロールを掘り出しまわってもいいし、アカネに頼んで更に拡張してもらい、二十層まで作ってもらってそこまで潜って、大学ダンジョンでも二十層まで潜って実績を作っておいて、堂々と換金することもできる。むしろ、夏休みの学生はこぞってダンジョンに潜ったりするのではないかとすら考えるほどだ。
そう考えると、今後の換金作業は大学ダンジョンと、一部のスクロールに関しては売却もしていく方向で良いんじゃないかな。【盾術】とか【槌術】とかは使い道がないスキルだし、一般に広く開放してしまってもいいスキルだ。【槍術】もそうか。【威圧】は引き続き集めるとして、【精力絶倫】も枚数が集められる以上はキッチリ集めて現金化して、俺の所持金に替わっていってもらおう。
「まあ、なんだ。ダンジョンに行くなとは今更言わん。無事で帰ってくるならそれでええ。ただ、嫌な電話や病院からの電話なんかで家に連絡が来るようなことが無いようにだけしといてくれればそれだけでええぞ」
少し爺ちゃんの背中から寂しさを感じたので、爺ちゃんの傍へ立ち、肩を軽く押さえる。
「ちょっと立ちあがってみてくれる? 」
「お、おう……あれ? お前、そんなに力強……全然立てん」
「これがダンジョンで培った、俺の今の腕力だ。今はどうやら、ダンジョンで強くなれる時代らしい。だから、大丈夫だと思ってくれればいい。この力の上で安全率をかけて戦ってると思ってくれれば、それで」
「……分かった、信用する。好きにせえ」
爺ちゃんのお墨付きも頂いた。後は大人しく、落ち着いて、探索を進めていけばいい。
「さて、話は終わったし帰るわ。ちょっと寄りたいとこもあるしな」
「寄りたいとこって……もしかして祠のところか? 」
「うん、まだちゃんと形残ってるかなって」
「まだ大丈夫なはずやで。近々取り壊すという話も聞いてないし、まだあるんちゃうかな」
「そっか。なら安心。じゃあまた夏休みに帰ってくるわ」
「おう、その時は赤福でも買うてきてくれや」
爺ちゃん赤福好きだな……俺も好きだけどさ。個人的には焼き立ての安永餅のほうが好みではあるけど。
さて、帰り道にアカネの祠によって、ついでにお供え物もしていくか。ちょっと先に歩いたあたりに和菓子屋があったはずだ、まだやってたらそこでおはぎ二つ買っていこう。一つは祠に、もう一つは自宅のアカネに。
それぞれ個包装してもらい、祠に戻るとちょうど掃除しに来た人とバッティング。
「あら、若いのにお地蔵さんに参ったりするなんて感心ねえ。ここ、ご利益あるのよ? 」
掃除人のおばちゃん……俺より長いここの信者である可能性は高い、話は合わせておくべきだ。
「大学受験を願ったら叶ったので。また夏にもお参りに来ようかと思ってます」
「それはそれは。偉いわねえ。それに頑張ったわねえ。それのお礼にお供えに来たってことなのかしら」
「いえ、その時はその時でお礼は言ったんですが。その後もご利益があればいいなと思って通りがかるときにはこうしてお参りに来てます」
「あらあら。じゃあ今日あったのは本当に偶然なのね。ここのお地蔵さんね、小学生が直してくれたのよ。小学校の自由研究で自分で工作して、屋根と横っちょ取りつけてね、それでついでに綺麗に磨いていったのよ。それからみんなこの辺綺麗にしたりしてね。おかげさまで私もこの歳でまだこれだけ膝が動くし、体もあんまり悪いところもないし、道に迷ったりもしてないわ。なんだかんだでご利益のおすそ分けをもらってる最中ってところかしらね」
俺が知っていることを大体喋ってくれた。それ俺です、というのもおこがましいので、なるほど、そういう謂れがあったんですね、という顔をしておく。アカネの第一の信者かもしれない人は今日も元気にしてたと後で伝えておこう。
供え物をして手を合わせて、そして駅から自宅へ向かう。家について、ただいまーと扉を開けたら、中で彩花が待っていた。
「おかえり、どこ行ってたの? 」
「爺ちゃんに今年は扶養に入れないって直接言いに行ってきた。あと、ついでにアカネの本拠地にもお参りしてきた」
「あ、今度連れてって。私だけアカネさんの本体を知らないなんて、ちょっと失礼に値するかもしれないから」
「別にご利益は変わらないけどね……と、参ってきたということは、今から急げばおはぎに間に合うかもしれない! ちょっと大急ぎで行ってくるわ」
そのままドギャアァァン……と効果音を出しそうな勢いで窓から飛び出したアカネが本体のほうに急いで飛んでいった。
「ここにもあるんだけどな、おはぎ」
買ってきて置きっぱなしになりそうなおはぎを見て、彩花と二人顔を合わせて笑う。
「半分こしようか」
「そうね、アカネさんが帰ってくる前に食べちゃいましょうか」
半分齧りついたおはぎをそっと彩花の口の中へ放り込む。彩花が咀嚼した後飲み込み、口の中はおはぎの甘さで一杯になる。
「そういえば、何しに来てたんだ? 今日いないって伝えておいたはずなんだけど」
「うん、見たわよ。親から仕送りついでにまたパスタが届いたから、多分幹也に向けてだろうと思ったから持って来たの」
「まだ俺は塩パスタの男だと思われているのか……最近は塩パスタは滅多に食べてないんだけどな」
彩花がふふっと笑っているが、俺も実は彩花の家から来るパスタは色々種類としゃれっ気があるので気に入っている。コンキリエか……チーズとトマトソースでドリア風にして食べるのも有りだな。
「ただいま……間に合ったわ」
ものすごい速さで行って帰ってきたらしく、かなりの神力を使ったらしく、アカネの周りから青白い光が漏れている。
「なんか……おはぎの香りがするわ。もしかして、こっちにももう一個買ってきてたとか? 」
「残念ながら、もう彩花と俺の胃袋の中だな」
「そんな……そんなことって……」
ものすごい悲しさをぶちまけながらその場に膝を突き、床にめり込んでそのままorzの姿勢で力尽きるアカネ。どんまい。
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