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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第243話:えらいひと、くる

 デートも無事に終わり、しばらく彩花の機嫌の良さを堪能しながら毎日を過ごす。どうやらプレゼントしたバッグを本当に気に入ってくれたらしく、勉強道具が入っているトートバッグと、それからサブのバッグとして使ってくれている。


 そのまま汚れてよれよれになって穴が開いてしまうまで使い倒してほしい。そうしたほうがバッグも喜ぶだろうし、俺も喜ぶ。店も喜ぶだろうし三方得だ。


 記念品だから丁重に扱ってくれているのはもちろんのことだが、日々のことに役立ってくれているのは一番うれしいところだな。彩花とバッグを見るたびにデートに行った時のことを思い出すし、あの時燃え上がった白昼の残月がまだ脳みそに新しく残っている。


 またどこかちょっと離れたところへデートへ行って、新しい盛り上がりを見せることにしよう。まだ【精力絶倫】に頼らなければならないほど俺は枯れてもいないしマンネリ化もしていないな。


 さて、今日はゼミの時間が少し変更になった。本来の時間なら昼休み直後のコマなのだが、来客の調整上いつもより遅らせたコマを取ることになった。俺も彩花も朝日奈も三人そろってそんな遅い時間に講義を取っていなかったため実現した時間割変更である。これには大泉先生もニンマリ。


「もし研究で行き詰まっていたり、時間的計測が必要な講義になってしまったらちょっとだけ延長も許されるってことでいいのかな? 」


 などとふざけたことを言っていたので、ぶら下がり状態にした後朝日奈に好きなことしていいぞ、と猛獣を放とうとした。しかし、大泉先生の勘が警鐘を鳴らしたらしく本気で嫌がったため、朝日奈が逆に落ち着いてしまい、そういうのは正式にお付き合いを申し込んでからにしようと思います、と固辞。


 大泉先生のほうは逆に「私にそんなに魅力がないというのか……」と落ち込む始末であり、これは明らかに俺が悪いので彩花に怒られる前に調子に乗って申し訳ありませんでしたと謝罪。ともかく、講義時間の変更と相成った。


 一時間半ほど暇な時間が出来たので、まだ暑くないゆっくりスポットに彩花を呼びよせて二人でのんびりして時間つぶしをしたが、それでも30分ぐらいで彩花のほうが限界に来たらしく、このままゆっくりしているとそのまま帰って寝るか、俺の部屋へ来てしっぽりしてしまいたくなる、という話になったため途中で切り替える。


 結局一時間ほど早く大泉ゼミにたどり着いてコーヒーでも飲んでいくかと、手伝わされるのを覚悟のうえで訪れる。


 大泉先生は資料をまとめているところだった。こちらの姿を認めると、明らかにあたふたと焦り始めた。


「おや、もう時間かい? これはまずいね、間に合わないね。どうしよう? 」


「落ち着いてください。まだ一時間はあります。あまりに暇なので早めに準備だの手伝う事だのがあるだろうと思って来ただけです」


「暇なので……って、君らどこに出しても恥ずかしくない、学内でも一、二を争う美形カップルだろう? 一時間半もあったらしっぽり三回ぐらいはできそうなもんだけどねえ」


「美形なのはまあおいといて、そんなにしょっちゅう腰を振り合ってる二人、みたいな言い方されるとちょっとムッと来るものはありますね。アカハラですよアカハラ。そろそろそういうのも気を付けていかないと、来年は学生が取れなくなるかもしれないですね」


「その時は……君らがいてくれるよね? 半期だけでサヨナラとかないよね? 」


 おめめをパチクリされながら懇願するような顔でこっちに庇護を求めてくる。


「そんなことをやる暇あったら準備進めたらどうですか? 後一時間しかないですよ」


「とりあえずプロジェクターの準備を手伝ってくれると嬉しいんだが。原稿の草稿は出来上がってるので後は最終チェックとコピーして渡す用の資料の内容の確認と……まあ、色々あるんだ。えへへ」


 えへへ、と言いながらあざとく間に合わないどうしようポーズを取る大泉先生。


「はいはい、手伝いますよ。どうせ暇してる学生ですからね。俺はプロジェクターの上映準備がいつでもできるようにはしておきます」


「じゃあ私は原稿のコピーを取ってくることにします。そのあとのやることはそれぞれ指示出しはお願いします。一から携わってる案件ではないので何をどこまで進めて何をどうすればいいか、というところまではまだ解らないのでお願いしますね」


「すまないねえ、ギリギリになってしまって。わかってることと現状のデータをギリギリまで詰め込んでいたら実際にプレゼンする方の準備を忘れていたのだよ」


 大泉先生がカタカタとものすごい速さでパソコンを叩きつつ、資料をまとめていく。その進捗に合わせるがごとくプレゼンの準備と資料にあわせた内容が出来上がっていく。プロジェクターへの接続準備とパソコンの出力テストが終わったところで、こっちの作業は終わりだ。


「ありがとう。後は……これで資料終わりっと」


 カチャカチャ……ッツッターンと資料を作り終えると万全の態勢が整ったと言わんばかりに一仕事やり遂げた顔の大泉先生を横目に、一口ブラックコーヒーを飲む。苦くて濃いその味は慣れたものだが、ちょっと頭がすっきりするのは間違いないな。


「さて、後は結城君の印刷したプリントが届いてしまえば一件落着だね。さて、何を話そうか……」


 どうやら資料作りがメインになっていたおかげで話す言葉が決まってないらしい。大丈夫か。


「資料のほうで話す内容がまとまっているなら、資料に沿って解説入れればいいと思うのですが」


「そうだねえ。その方向性で行くか。実際にある物を動かしているところなのだから、それを見せつつ実際の発電量予測とこの装置がいつ止まるか、という予想を立ててそこから積算される発電量と総エネルギー量、そのあたりを説明に盛り込むか……そうなるとこの辺の文面が……」


 考えながらものすごいスピードで計算と説明内容に解説を加えていく大泉先生。今だけだよ尊敬できるの。普段はあんなに頼りなくおちゃらけているのに、自分の研究分野にだけは精通していて他の追随をゆるさないような姿勢。普段からこうならもっと尊敬できるんだけどな。


 あえて口にも視線にも出さず、指示待ちの姿勢でいると、追加のコピー文章を渡されたので印刷し、それを説明文章に足し込む。だんだん厚みが増えてきた説明文章だが、まだ一瞥できる量であるのは間違いない。おそらく本格的な所へ足を踏み入れたらこの量では足りないのだろうから、外部のお客さん向けの文章としてはこれだけあれば充分、という分量を確保して足し込むことが出来ているのだろう。


「さて、こんなものかな。後は質疑応答の際の受け答えだが、大体頭に入っているしいざ、もしも装置の起動する部分が見たいと言われたらその時は本条君、よろしく頼むよ」


「わかりました。もしかしたら、という範囲ですが、電球の数を増やして電力消費量を増やして短時間で結果を出したい、と言われた場合のことですよね」


「基本的にはそれぐらいしか思いつかないかな。後は出力の大きいものを繋いでいても同じことになるかどうか……という話にはなるかもしれないが、それはこの実験室で出来る範囲のことじゃないからね。そこまで研究するなら発電所や会社の施設のほうに試験用の物を作ってもらって、それで実験してもらう、という形に落ち着くと思うね。基本原理は同じはずだから、規模を大きくするだけなら問題ないと思っているよ」


 さて、三十分空けてプレゼンの準備は完了した。間に合ってやれやれ……というところで朝日奈が到着。


「なんだか二人とも疲れてるね。暇だから早めに来て手伝いでもしてたのかい? 」


「まあ、そんなところだ。おかげで良い運動になったよ」


「まあ、この後来るお客さんの準備は万端整ったってところね。朝日奈君はゆっくり来て正解だったかもね」


「あはは、そうみたいだね。それでも僕も暇つぶしが出来そうになかったから早めに来たところなんだけど」


 三人で話し合っていると、大泉先生から漆黒のコーヒーが運ばれてきた。


「さあ、手伝ってくれたお礼だ。しっかり飲んで、この後のお客さん相手のプレゼン中に寝ないように頑張って起きててくれたまえ」


 朝日奈の分はさすがに用意してなかったが、コーヒーを飲んで一服……苦い。苦いが、雑味がないのですんなり飲めるな。腕がいいのか豆がいいのかはわからないが、濃いめの水出しコーヒーを飲んでいるような、そんな清涼感もある。


 すると、研究室に内線がかかってきた。電話に出る大泉先生。


「はい大泉です……ああ、間違いなくお客様です。こちらにお通ししてください、連絡は来ていますし、受付にも予定として連絡は入れてあるはずですので……はい、確認が取れましたか。では、お願いします」


 どうやら、お客さんのご来訪らしい。コーヒーをグイッと一気に煽り、トイレを済ませておくとお客さんの到着を今かと待つ。やがて、研究室の扉をノックする声が聞こえた。


「失礼します」


「どうぞ、お入りください」


 大泉先生がまともな対応をしているのに驚くのは後にしておこう。今はお客さんに変な印象やここで本当に大丈夫なのか、と言った疑いをもたれないのが第一のはずだ。


「三勢電力魔石発電部技術開発課の久保田と申します。本日はよろしくお願いいたします」


 そういうと、俺に向かってお辞儀をして名刺を出してきた。


「ご丁寧にありがとうございます。ですが、大泉准教授はあちらの方です」


 大泉先生のほうへ目線を促す。久保田さんは俺と大泉先生を見比べ、慌てて自分のミスに気づくと大泉先生のほうへ改めて挨拶をしに行く。


「失礼いたしました。彼が一番迫力があったもので」


「慣れておりますので構いませんよ。本日はわざわざご来訪いただき感謝いたします」


 大泉先生のまともな丁寧語を聞くのはオープンキャンパス以来か。何はともあれ、実際の試験というか、今日までの成果をプレゼンして電力会社に向けて話し合う貴重な機会だ。俺達も同席することで経験を積むことができるだろう、ということでこの時間帯の講義にしたんだろう。


「では、早速こちらから現状報告のほうを務めさせていただきます」

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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