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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第232話:ダンジョン実習 3

 朝日奈とゴブリンの一対一の戦いが始まった。ゴブリンは朝日奈の得物の長さに驚くことはなく、朝日奈へと視線を一点に定め、俺の視線を気にすることもなく朝日奈だけを狙い撃ちにする様子だ。


 朝日奈は……こっちも集中しているようだな。【聞き耳】で調べるあたり、戦闘可能になる距離にゴブリンは存在しないので、しばらくはそのまま時間をかけて戦っていても問題はないと言えるだろう。ゆっくり鍛えてやれるのはありがたいところだ。


 朝日奈が薙刀を突き、ゴブリンに牽制を仕掛ける。ゴブリンはギリギリのところで避け、ギャッギャッと喜んでいる。どうやら、朝日奈が牽制ではなく本気で突き込んできたのを避けたので俺のほうが賢い、とそういう思考に陥っている可能性が高いな。ゴブリンの無邪気な喜びようを考えると、ゴブリンの頭の中ではそういうことになっているんだろう。


 ゴブリンが舐めプをしているその隙に、朝日奈が二歩踏み込み同じところへ薙刀を突き入れる。今度はゴブリンの脇腹にしっかりと狙いが定まり、ゴブリンの体を削るようにして黒い霧が飛び散る。ゴブリンは何で? といった表情をしながらも受けたダメージを確認して一気に元気をなくしていった。


「止めは早めに刺してやった方がいい。逆上されてこっちが怪我しても困るからな」


「わかった! 」


 朝日奈がそのままゴブリンが元気を取り戻す前に今度は薙ぎ払いの形でゴブリンの腹部に向けて斬り込み、ゴブリンの腹を切り裂く。そこからは臓物の代わりに黒い霧が吹き出し、ゴブリンは倒れ、黒い霧になって飛び散っていった。


 残心を取った後、朝日奈がこっちを振り向いたので、OKサインを出して初めてにしてはなかなか良かった、ということを告げる。朝日奈は嬉しそうにすると、こっちへ寄ってきて早速疑問を口にし出した。


「これ、なんで黒い霧になるんだろうね? おかげで汚れないのは嬉しいけど」


「それも今日のレポートで提出する奴が居るだろうな。ここのダンジョン……いや、全てのダンジョンかな。ダンジョンで出現するモンスターから血や内臓は出なくて、代わりに黒い霧が吹き出すようになっている。それが何らかの現象なのか、作用なのか、もしかしたらダンジョンを構成する範囲でモンスターというものを実装するためには必要な措置なのかはわからない。だけど、研究テーマとしては面白いものではあるな」


「ふーん。それなりに深く潜っても同じって事だよね。だとしたら世界中どこのダンジョンでも共通の話題であることに間違いはなさそうだね。この黒い霧を浴びたりして何か体に悪い影響とかはないんだろうか? なんか一定以上吸い込むと肺に悪影響があったりしそうなものだけど」


「だとしたら探索者はみんな肺病持ちになっているだろうし、そういう話は聞かないから少なくとも悪い影響はないな。ただ、いい影響はあるかもしれない、というのが俺の今の考えだ」


 朝日奈にレベルアップという現象があり、その現象を行うことで賢くなったり腕力に補正がかかったりするのは間違いない、ということを告げる。


「それを言えるってことは、本条君はレベルアップ経験者ってことでもあるんだよね。もしかしたら結城さんもかな? 」


「そうだな。そこについては二人ともそうだ、と考えてくれていい。かなりのモンスターを倒さないといけなくなるが、気持ちいいぞ、レベルアップは。できなかったことに手が届くようになる確実な手段ではある。道のりは長いがな」


「それだけ二人で潜ってたってことか……いいコンビだなあ」


「ま、そこまで求めないにしてもダンジョンにはそれだけ魅力がある場所でもある、ということは覚えておいて損はないと思うぞ。さて、次を探すか。次は……あっちが近いな」


 存分に【聞き耳】の威力を試しながらゴブリンの足音と、こん棒を引きずる音を聞いてそっちへ行き、朝日奈に実践訓練を積んでもらう。実際にこんなことしてるから大変なんだぞ、ということを教える意味では大事だろう。


 ダンジョン学部としては自分が頑張らなくてもいい御身分にはして見せるとは言うものの、実際にダンジョンで行われるドロップ品かき集めに一切ノータッチであるのと、少しでも現場を知っているのでは、苦労の度合いが分かるというもの。


「さっきから適当に歩いてるように見えるけど、ちゃんと行き先にモンスターがいるの、それもスキルだよね? 」


 朝日奈が不思議そうにしていたが、ハッキリそうだと伝えてしまおう。


「ああ、【聞き耳】というスキルを使っている。小さい音も拾えるようになるし、だからと言って大きい音に驚くようになるわけじゃないから便利だぞ」


「探索者にはスキルの恩恵もあるわけか。いくつか持ってると日常でも便利そうなものはあるね」


「いくつかはそうだな。水魔法なんかは何もなくても水が湧かせられるから便利と言えば便利だが……飲み水には適さないぞ、美味しくないから」


 指先からタラタラと水を垂らしてみせる。朝日奈は不思議そうに眺めていたが、水を止めると向き直り、次のモンスターはどっちだい? という感じで、精いっぱい時間を使って探索を楽しもうとしている。


 ゴブリン狩りに精を出していたが、スマホに仕掛けてあったアラームが鳴る。どうやらここらで戻っておかないと講義終わりの時間になるようだ。


「朝日奈、悪いがここまでだ。ここで引き返して戻らないと次の講義に遅刻することになる」


「もうそんな時間なんだね。ありがとう、おかげで楽しめたよ」


「接待するのもたまにはいいなと思っていた所だ。それに、稼ぎたくても稼げない理由があるしな」


「本条君のことだから、来年の確定申告時の扶養家族に引っかかるギリギリまでもう探索を進めちゃって迂闊に動けないとか、そんなことまでしてそうだよね」


「……お前凄いな」


「え、マジなの? 」


 朝日奈がピンポイントで俺の状態を言い当ててきた。


「ほれ、じゃあ正解の商品は今日拾った魔石全部の換金権利だ。俺はお前の言った通り一円でもオーバーしたくない状態なんだ。多少の金額だが、それで痛い思いをしたくないし、今日は俺は仕事をしてないからな。ちゃんと自分で稼いだ分として、記念に魔石を取っておくなり換金して今日のおやつにするなり好きにしてくれ」


「わかった、早速夕飯にちょっといいお肉でも楽しむことにするよ」


 納得したのか、魔石を全部受け取った朝日奈と共に入口方面へ戻っていくと、途中で彩花から連絡が入った。そろそろ帰る時間なのでは? ということだったが、既に戻り始めていることを伝えると納得して電話を切った。向こうも気にかけていてくれたんだろう。俺と朝日奈がついつい熱中して奥まで入っていかないかどうか心配してくれてたってわけだ。うれしいなあ。


 入口の方まで真っ直ぐ帰って一層の出入口付近まで行くと、暇そうに待っている彩花の姿を発見して合流すると、彩花も十層でちょっとだけ稼いできたらしい。


「ワープポータルも一人で出入りしてると悪いし、たまたま近くにいたから倒したら落としてくれたので……あとちょっと踏ん張ろうかと頑張ったら結構出ちゃった」


 数匹分の魔石をカバンから出して、しっかり稼いできたのをアピールする彩花。まあ、いいんじゃないかな。主軸は自分の疑問点のレポート提出だし、それができてるならば問題はないだろう。


「で、それぞれの課題はレポートで提出できそうなんか? 」


「僕は何とか。結城さんは? 」


「出来そうだから暇つぶしにモンスター倒してたからセーフ。幹也は? 」


「まあまあ何とかなりそうかな。今日の分を満たすだけなら問題なく出来そう。それ以上に深く突っ込むとすると……ちょっと厳しいな、情報が足りない。俺にしては珍しく何処かで自習してきっちり調べていかないといけないかな」


 正直な話、アカネに聞くのが一番確実だが、仮定を基にしてなぜボス部屋のようなものが建造されているのか、ということに対してダンジョンの構造的な問題からアプローチを試みる、という論理だ。


 これはダンジョンを作っている存在がいて、自然現象ではなく人為的に近いものとしてダンジョンが建造されている、という建前を言わなくても解ってくれるよね論理で組み上げるため、危ないレポートでもあり、再提出を喰らう可能性もある。


 その場合はさっき考えていたスライムの生態でも研究してレポートにまとめることにするか。実際にやってみた、で専用ダンジョンで色々研究すればいいだろう。


 ネタはいくつか手持ちにあるのでその中から次の講義までに提出、ということになっているので時間はまだまだある。早めにまとめて課題提出してしまいたいので、帰ったら早速アカネにご教授願うことにするか。


 時間になり、まだ戻ってないパーティーも居るだろうが、講義としてはこれで終わりとする、ということで解散になった。朝日奈は装備品に消臭スプレーをかけた後、借りていた場所に返しに行くようだ。


 俺と彩花はとりあえず大泉ゼミにそのままの装備で行き、次の講義までに着替えないといけないことと、家に帰って装備を置きに行っては次の講義に間に合わないこと、なので一時的に服装を置かせてほしいということをあらかじめ伝えていたため、大泉先生の許可の下でお着替えタイムである。


 ちゃんとホワイトボードを挟んで二人着替えをして、本日の最終講義に出る。終わったら装備を回収して帰る。大泉先生には一時的にとはいえ、荷物置き場にして本当にありがたいと思っている。口にも出している。


「本当にありがとうと思うなら、講義の帰りに濃ゆいブラックコーヒーを買ってきておくれ。学内のコンビニで私がいつも買っている物と指定したら出てくるはずだ」


 つまりそれは、あなたしか買い手がつかない商品をストックしてもらっているということでは。それなら箱ごと買いに行って……ああ、重くて運べないのか。


「ちなみに重くて運べないから一缶ずつ買いに行っているのかとか考えてるかもしれないが、そういうわけではないぞ。私が飲んでいるのを見て一度飲んでみようと思う生徒か教師がいるかもしれないからな。そういう宣伝のためにも、わざわざ店のほうに置いてもらっているのだよ」


「なるほど。で、効果のほどは? 」


「まだまだ宣伝効果が足りないようだ。おかしいな、私が好むぐらいだから美味しいはずなんだが」

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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