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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第231話:ダンジョン実習 2

 朝日奈も無事にダンジョンで初モンスターを倒せたということで、モンスターを倒していくことよりもまずダンジョン全体の構造や、なぜ両手を空けて行動ができるようにするのか、なぜ明かりが用意されているのか、この光るコケはなぜダンジョン外では利用されていないのか……など、たしかに言われてみればの疑問がいくつかあり、ダンジョン学の他の講義の内容でもそれらには触れられている。


 この洞窟型マップを覆い尽くすヒカリゴケのような一種の細菌だが、ダンジョンから出ると途端にしおれて死滅してしまうことが確認されている。これは環境のせいなのかどうかはまだはっきりしていない。


 少なくともダンジョンの中では無事に生息していることから、ダンジョン内部とダンジョン外部で何らかの空気中の成分や計測できない何らかの形で作用しているのではないか、と言われていて、今でも絶賛研究中の課題だったはずだ。


 朝日奈というフィルターを通して、改めてダンジョンの不思議なところが表に出てくるという意味では俺も彩花も勉強になった。なにせ、ほとんどの疑問点や謎、どうしてこうなっているのか……などという部分については「ダンジョンだからしょうがない」で放置していた所でもある。


 そういう疑問点や不自然な点について、朝日奈から逆に質問を投げかけられる形で受け止めることになった俺と彩花は、そこは調べておくべき点だ、という部分をいくつかピックアップし、その中からお互いネタが被らない所を調べて課題にしよう、ということにしている。


「いやあ、ダンジョンって面白いね。現実の中にあるのに現実的じゃない部分も含めてだけど、知らないことがいっぱいだ」


「楽しみにしていてくれてダンジョンもうれしいだろうよ。こっちとしても、朝日奈の知識欲を満たしてやれるところは満たして、そうじゃないところは自分の課題として認識できてきたから、お互いの利益のある話し合いだと感じるな」


「そうかい? それなら嬉しいところだね。じゃあ僕の課題はダンジョンの明るさと、ヒカリゴケの光量に関する話題にでもするかな。これだけ眩しく光るためには光として励起させるだけの何かしらのエネルギーが必要になってると思うんだけど、そのエネルギーをどこから取得しているのか、そしてそのエネルギーの出どころは何か。そして、なぜダンジョンから取り出すと死滅してしまうのか。この辺りを調べて提出ってところかな」


 朝日奈が自分の研究課題を決めたようだ。残りのいくらかの研究課題は俺と彩花に託されたことになる。さて、俺は何について疑問点を持とうかなあ……


「私はワープポータルかしらね。なぜ十層おきにそういう設備が設置されているのか。それによってダンジョンという意思の形があったとして、その意思にどの程度の利益を発生させることができるのか。ワープポータルの作動原理なんかがあればより面白い話にはなるけど、ライバルは多そうね」


「実際にワープポータルを自分の手で作りだせれば通勤時間が0分になるからな。新幹線もリニアも目じゃない、最高速の移動手段になりうる。良いテーマじゃないかな」


 ダンジョン関連技術を現実に引っ張り込むための大きなテーマとしては非常に有意義なものであると言えるだろう。俺はどうするかな。ワープポータルもヒカリゴケもなし、となると残ってる議題から絞り出してチョイスするとしたら後は……


「うーん、俺はボス部屋、というかボス領域というか、なぜそんなものが存在しているのか、という生態系からのダンジョンへのアプローチかなあ。ダンジョンに意思がある、と仮定しなければ成立しない話ではあるけど、そうじゃない場合、ダンジョンのある一定区間ごとにエネルギーのたまり場が出来て、そこにボスと呼ばれる存在が生み出される……そんな感じか」


 ダンジョン学一年生の書く論文やレポートなんてこのぐらいの物だろう……と自分でも高をくくってはいるが、それでも着眼点としてはゲーム的、小説的な分野からではなく、ダンジョンというシステムの場所のエネルギーにおいて、五層おきに何かしらエネルギーのたまり場的なものがあるのではないだろうか、と仮定しての話だ。


 どこまでが与太話でどこまでが本当の話かまではわからないが、アカネにちょっと話を聞いてみて、そういえばなんでボス部屋があるんだ? というネタを振ってみてもいいだろう。多分アカネに聞けばちゃんとした理屈と理論に裏打ちされた丁寧な答えが返ってくるだろう。それをそのままレポートとして上げておいて、真実が公開された時に実は合ってました、というような話に持っていくのも面白いかもな。


 三人ともテーマを確認してそれぞれの行動に移す。彩花はちょっとワープポータルの使い心地を研究してくると一人でワープポータルに入ったり出たりを繰り返してみるようなので、朝日奈と二人、ダンジョンでモンスターを倒す方面で楽しむことにした。


 今回は最低でも魔石を一つ稼いでこいとか、そういうノルマは課されていない。ノルマを課されてダンジョンアタックするなら、俺と彩花が二人で一気に十二層あたりまで走って行ってスケルトンメイジ相手にして、拾ったスキルスクロールを換金することで課題は達成してしまうからだ。


 それではあまりにも味気なさすぎるし、俺の場合家から仕込んできた【水魔法】か【風魔法】のスキルスクロールを提出するだけでも達成できてしまうだろう。それに、本学部ではダンジョンに深く潜ることを課題の提出条件として認めない、という暗黙の了解がオープンキャンパスの段階から行われている。


 来期になってカリキュラムが変更になり、奥まで潜る探索者も育成する、となった場合はその限りではないが、それまでは奥まで潜って帰ってくる、と言った形の試験はしないだろうから、あくまで学術的視点や、観察、検証が元となってくる話が多いはずだ。


 今のところの疑問点を挙げて、それについてはこれから学ぶかもしれないし、まだまだ研究中の課題かもしれない。どちらかわからないがダンジョンにまず興味を持つという意味ではかなり効果的な課題と言えるだろうな。


「さて、男二人ほっとかれたし……俺達はモンスター倒して回るか。まず、朝日奈の課題を片付けよう。その後で俺が付き添うからスライムと……行ければゴブリンかな。倒してみて、感触から探索者としてもやっていけるのかどうかを確かめるでもいい。向いているか向いていないかは早めにわかったほうがいいからな」


「向いてなかったらどうするのさ。四年間ダンジョンに潜らず君らの帰りを待つのを楽しみにしていろっていうわけではないんだろう? 」


「その時は、無理矢理慣れさせるコースもあるし、この形のモンスターなら倒せる! というところまで何もしないでいてもらって、そこから先は活躍してもらうって方法もある。一応、俺と彩花で十五層までは、潜り込めているんだ、そのあたりまでは安心してただついてくるだけでも問題なく行けることは保証してやれるぞ」


 最悪【威圧】で身動き取れない間に止めを刺すのを繰り返してもらって、体に無理矢理慣れさせるって方法もあるしな。手段が色々取れることは良いことだ。


 朝日奈が触感や色つや、それから色々について画像に撮ったり動画に撮ったりしている間、暇なのでその辺のスライムをツンツンついて核を切り取って丁寧に処理をしていく。こいつも不思議なものなんだよな。ノンアクティブで人を見かけたら襲ってくるわけでもないのに、クイックインスタンスダンジョンの時は真っ先に出てきていた。


 何らかの命令機能がその半透明の体に備わっていて、そのスイッチが入ると戦闘モードに切り替わるとかなんだろうか。脳があるならその脳の部分が……いや、それが核か? だとしたら肝臓並みに色んな機能が備わっていることになるんだな。もしかするとスライムと呼ばれている物体自体が核からにじみ出たゲル状の体になるのかもしれない。つまり、本来はどこまでいっても核、か。


 これだけでも立派にレポート一本書けそうな話題だが、今回は他の人に任せることにしよう。


「本条君、もういいよ。参考になりそうなデータは取れたと思う。流石に味を比べるのはどうかと思ったので食べてないけど、それ以外は調べられるだけ調べた気がするよ」


 どうやら満足したらしい。さて、朝日奈と二人で……まだ一時間ほどあるから二層に行ってゴブリン退治ぐらいはできるな。


「じゃあ、いっちょ二層まで繰り出してみるか。人型の壁を朝日奈がクリアできるかってのも気になるしな」


「それは、人間の形してるモンスターを倒せるかどうかって奴だよね」


「そうだ。スライムは問題なく狩れるけどゴブリンは無理、ゴブリンは無理だけどオークやトレントなんかは大丈夫だったり……と人それぞれ壁の高さは違うんだが、一番安全でわかりやすく、それでいて判別が容易なのがゴブリンだ。今日はゴブリンと戦えるかどうかを試してもらうことにしよう」


 地図は前に買ってあるので地図通りに進む。ゴールデンウィーク前にも一度通っているので道は大体頭に入っているが、スライムが通りがかったので時々朝日奈に訓練がてら相手をさせている。ゴブリンは駄目でもスライムなら……スライムが行けるならトレントも行けるかもしれない……と段階的に人型への忌避感を薄れさせることもできる。


 そして二層に入ったところでは、早速他の学部生たちがゴブリン相手に戦っている様を観察することが出来た。腰が引けてるのは初めてゴブリンに出会った女学生が多い。やはり、小説やゲームの影響でゴブリンは女性を襲いやすい、というイメージが付いているからだろうか。


 逆に、物おじせず堂々と戦っているのはその女学生の前で格好をつけたい学部生なんだろう。ちなみにダンジョン慣れしている奴なら格好つける暇があればさっさと倒して次に行くので、ここで屯っている可能性は低い。俺は後者であるので、ゴブリンの数が居そうな方向へ進み、そこで初ゴブリンと遭遇できた。さて、朝日奈はどう動けるかな。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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