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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第230話:ダンジョン実習 1

 ダンジョン学部のダンジョン学3の講義時間を使ったダンジョン実地演習がもうすぐ始まる。ダンジョン探索時間としては非常に短い時間にはなるが、それぞれダンジョンに潜る格好で集合、装備は各自で持参ということにされた。


 用意が間に合わない、もしくは用立てられない場合は大学側から提供される装備……使い古した金属バットや鉄パイプ、それから大学ダンジョンに寄付されていった探索者サークルの備品や、探索者サークルでも使わないぐらい古い装備を提供されることになった。


 俺みたいに金欠学生だった頃なら喜んでその装備を受け取ってDIYしていくらかまともな装備にはしていただろうが、今は山賊刀もあるし、彩花も新しい武器に切り替えた。防具のほうは……まあ、まだ使えるし、怪我をしそうになったと体感したときに順次切り替えていく方針で良いだろう。


 俺と彩花はそんな装備ではあるが、朝日奈の場合はまた別となる。彼は誕生日の都合でほぼ大学入学後でしか探索者免許を取れなかったため、大学内で定期的に行っている探索者講習会に通って免許を取得したは良いものの、装備に関してはまだまだそろえることもできていないので、今回は彼の装備は大学からの貸し出し、ということになった。


 しかし、防具も武器も意外としっかりしたものを提供してくれるもんなんだな。それだけ、探索者サークルにしっかり残っている資本と資金、それから伝えられてきた秘伝のたれみたいなマニュアルもあったりするんだろうな。


「ううん……やっぱり二人の装備が数段階上のような気がするなあ。贅沢言っても始まらないんだろうけど」


 朝日奈が装備をモコモコと着こんで俺の包丁槍よりは随分とマシな、薙刀じみた武器を持っている。不似合いなのは仕方がないが、これではせっかくのなかなかの男前が台無しでもある。


「で、今日の目的はダンジョンの基本探索だから、私たちが行けるからと言って調子に乗ってうろうろするわけじゃないわよね。ちゃんと同期の面倒を見ながらダンジョンを改めて観察して、その様子や思いついた物事やダンジョンの不思議について調査してレポートにまとめろ……と言うことらしいわ」


「今更ダンジョンの不思議なことについて調べるのか。それはそれで面倒だが、朝日奈はその点お得かもしれないぞ。すべてが未知の領域だからな。あらゆる目に入る物が珍しさと奇妙さと楽しさでできているかもしれない。色んな疑問や色んな観点、それらを全て新しいものとして受け入れるだけの素養があるとも言える。ダンジョンに入る前にダンジョンについて学習こそしているものの、肌に触れたわけではないからな。そういう意味でもお前は恵まれてる。だから安心して色々悩んでいてくれ。必要なフォローは俺と彩花で入れるから。俺と彩花はお前を守ってる間に必死に疑問点を見つけ出して解説できそうなところは省いて、文章を組み合わせるから、後で三人で答え合わせしよう」


「答え合わせするとどうなるんだい? 参考までに聞きたいね。僕も自分の課題がかかってる以上真面目に取り組まなきゃいけない」


「簡単だ。初心者の視点の感想文と、中級者からの視点の感想文をそれぞれ分けて提出することになる。ネタが被ってたらコピーしたと言われるだろうから、それぞれ違う部分を見ながら疑問点と解決論、それから教わった内容から漏れ出てきてはいないかどうかのチェックが必要だな。まあ、三人で潜ればなんとかなる。スライムとゴブリンぐらいなら朝日奈でもがんばれば倒せるし、それでも倒せそうにないなら俺達が倒してしまうから安心しろ」



 胸をドンと叩いて任せろというイメージを朝日奈に植え付けておく。実際には威圧をかけている間に朝日奈にボコボコにしてもらうとか、いろいろプランはあったが一番大事なのは無理をさせないことだ。朝日奈自身がどう考えているかはわからないが、本人が探索者の道に進む気がないなら無理に探索をさせてモンスターを倒させることは止めなければいけない。


 そうでなく、もしも探索者としても副業で活躍したいならば、多少キャリーする形になっても奥へ進めるようにアプローチしていくべきだし、接待ダンジョンというわけではないが実際のダンジョンの歩き方に即した行動プランを練り上げることだろう。


「で、どうなの? 朝日奈君としては探索者としても活躍したいのか、それとも研究者として過ごしたいのか、両方やりたいのか、それとももっと別の道を選択したいのか。今すぐ決める必要はないけど、一回目の実習の間には一応のプランを固めておいてくれると嬉しいんだけど。もちろん最終的にどうなるのか、までは自分で決める必要はあるでしょうけど、とりあえず次の実習でどう動くかは決めてしまうに越したことはないと思うわ」


 彩花も俺も、朝日奈がどう考えているかによって決まる。後は朝日奈の応答を待つのみだ。


「うん、ありがとう。せっかくダンジョン実習もあることだし、出来る限りのことは自分でやって体験してみるのが大事だよね。だから、僕は研究者一本で行くというよりも、今のところは探索者でも居たいかな」


 少し恥ずかしそうに話す朝日奈のその一言で、俺も彩花もニッコリ笑顔。肩をたたいた後、次の実習までにあらかじめ頭に入れておくことを伝えて当日を待つだけとなった。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 実習当日。大学ダンジョン前に集合するダンジョン学部の全員。それぞれ違う武器や防具を持ち合って探索へ入り込む準備ができている様子。そんななか、朝日奈はプルプルと震えていた。


「お前緊張しすぎ」


「いや、緊張するでしょ。初めての経験は誰でも」


「俺はそうでもなかったかなあ。ワクワクのほうが勝ってたから気軽にダンジョンの中をほっつき歩いてモンスター探しに赴いてたかな」


「なんというか幹也らしいわね」


「そういう彩花も人に当てられてワクワクしながらダンジョンに赴いてたんじゃないのか? 」


「そ、それはそうなんだけどね。まあ、その点は私たちはお互い向いてたってことでいいんじゃないかしら」


「二人とも逞しいなあ。僕にはちょっと真似できそうにないよ」


 っと、朝日奈にいらんプレッシャーを与えても困るな。


「まあ……なんだ。そんなわけで個人差はある。が、お前には二人のバックアップがあるから、安心して気になることを調べて書き留めて、ついでにモンスターを倒したければ倒してくれればいい。メモ書きしてて忙しい時は俺と彩花でモンスターは倒すからな。接待ダンジョンみたいなものになるだろうが、下手に動き回って怪我をするよりはマシだからな」


「そこは二人にしっかり甘えようと思うよ。だから申し訳ないけど、僕のバックアップはよろしくね」


「あぁ、よろしくされたぞ」


「朝日奈くんが可能な限り自由に動けるようにするつもりではあるからよろしくね」


 パーティー決めが完了し、各自自主的に何人で行動する予定なのかを報告し、それからダンジョンに入場していく。


 ぼっちの生徒とかいないよな……ちょっと心配になったが、見回した限り最後に残ったりするような学生もみたあらなかったので安心して自分達の課題に集中できる。


 大学ダンジョンに入り、さっそくあちこちを見回す朝日奈。


「本当に異空間なんだね。入り口からは想像できない広さが中にあったよ」


「そういうのを書き記しておくと、後のレポート書きが楽になるから今のうちにスマホに録音させておくとかメモっておくとかしておいた方がいいぞ」


「っと、それもそうだね」


 朝日奈はスマホに録音させておくほうを選択したらしく、スマホに語りかけていくつかの情報を入力していった。後で聞かせてもらって感想のネタが被らないようにしておかないとな。


「さて……せっかくの探索だからまずはモンスターを見つけて相手したいところだけど、どっちへ行けば出会えるんだろうか」


「ちょっと待ってろ……こっちだな」


 この間の換金で手に入れた【聞き耳】のレベルアップでスライムの足音というか跳ねる音も聞き分けることができるようになった。地味に活躍しているな。所詮スライムだが、それでもモンスターに違いはない。こちらから攻撃を仕掛けない限りは襲ってこないが、攻撃を与えようとして失敗すると装備を溶かしにくるか、体当たりを仕掛けてくる。


 スライムを見つけると、朝日奈に小声で話しかけて攻撃する場所やタイミング、それから動きをよく見ることを教える。


「いいか、スライムは体の中にある核が弱点だ。あれさえ削ってしまえば……というか、当たればほぼ確実に倒せる。そのぐらい弱いモンスターだから安心して戦え。目をつぶらずに正確に狙っていけば倒せるはずだ。見本が必要なら見本を見せる。最初から自分でやってみるならやってみるといい。好きな方を選べ」


 朝日奈は少し考えた後、黙って俺を制止すると、前に出始めた。スライムの前まで出ると、核がある程度動き回りはじめ、スライムは「こいつは一体何の用事なのだろう? 」と考えてでもいそうなそぶりをした後、そのまま朝日奈と見つめ合うかのようにじっと二人対峙し合う。


 朝日奈は覚悟を決めたのか、スライムの核の動きを見定めて、スライムの体内を動く核が止まる瞬間を狙っているようだ。やがてスライムの核がピタッと止まり、その瞬間朝日奈が薙刀を突き入れる。薙刀は綺麗に核に当たり、スライムはそのままパンと弾け、少しばかりの黒い霧をばらまいて消え去った。


「やった!一撃で倒せたよ! 」


「そうだな、初回としては上等だな」


「おめでとう、これで探索者デビューね」


 とりあえず褒めておく。厳しいことを言うのは後でいくらでも言えるからな。まずは最初は褒めて伸ばす。それが大事だろう。彩花もそれがわかってるらしく、朝日奈をべた褒めしている。


「ありがとう。でも、このスライムは襲ってこないし、一対一でこんなにゆっくり倒してたら時間がかかって仕方ないよね。そこをもうちょっと改良しなくちゃいけないのが次の課題かな」


「そこまで解ってるならモンスター退治は後回しでもいいな。ダンジョンの構造や壁や照明、そういうところに目をつけて歩く方がいいかもな」


「そういうものなのかな? 」


「自覚があるってことは次は同様にできるってことだ。なら優先度はそれほど高くない。それよりも、実際に目で見たものをきっちり感想としてまとめておけるようにする方が、講義としての優先度は高いからな。今日は稼ぎに来たりモンスターを倒した数を争いに来たわけじゃないんだ。貴重な時間だ、有意義に使おうぜ」

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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