第224話:ケンタウロス戦 2
ケンタウロスが力を失いつつある中、そろそろ終わりかな? と思いながら最後まで気を抜かないようにしっかりと対応していく。
ケンタウロスがヘロヘロになりながら槍を振り回してくるが、できるだけ小さく避けていきたいところだが、ここで避け損なってダメージを今更受けるのも勘弁してほしいのできちんと避ける。
「グルアァァァァ!!! 」
ケンタウロスが絶叫し、全身の色が茶色から赤に変わる。こんなエフェクトはさっきの動画では見られなかったな。特定行動だったり、一気に倒し切れなかった時に発動する最後っ屁みたいなものかな。
すると、ケンタウロスの全身から蒸気が上がり始め、皮膚が赤く、そして熱量が上がっていくのを感じる。すると、こちらがあちこちに付けた傷から黒い霧を噴き出させながら、今までより素早い動きでこちらに攻撃を仕掛けてくる。暴走モードみたいなものかな。最後っ屁とも言うけど、これを乗り越えたら多分終わりだろう。
こっちもきっちりスピードを上げて、ケンタウロスの攻撃スピードに合わせてしっかりと攻撃を捌いていく。ちょっと早すぎるが、流石に上げた分のレベルで対応できないわけではない。こっちも久々に全力を出せると、逆にワクワクしている。
こっちの手数で勝負を始めると、ケンタウロスも手数は足りないらしく、だんだん切り傷が増えていく。彩花の追撃が足りてないような気がするな……と横目で確認すると、どうやらケットシーに乱入されていた様子だ。火魔法を向こうでぶっ放している様子が見えたので、今は俺一人で耐える時間だな。
ケンタウロスの繰り出し続ける槍の突きをひたすら山賊刀ではじき返して、ケンタウロスの自分の動きで黒い霧を噴き出させながら、痛みはあるだろうにそれを平然と問題ないといった様子の顔でこちらに顔を向けて、ニヤリと笑う。
こいつは……なんて我慢強い奴だ。おそらくは今にも顔をしかめて傷口を抑えて、落ち着いて傷薬でも塗りたいところだろうが、こいつは中ボスとしての風格と役目、そして誇りを忘れていないらしい。
その誇りに免じて、全力でお相手しようじゃないか。更にスピードを上げて、ケンタウロスが一度攻撃を繰り出す間に、こちらは防いで更に引く手に怪我を与える形で二倍の速度で対応する。
そして、その間に彩花からの攻撃が更に続く。背中を焼かれ、黒い霧をプスプスと上げながら徐々に弱々しくなっていく。赤くなった皮膚も茶色に戻り始め、どうやらケンタウロスの頑張り期間はここらで終了らしい。
ケンタウロスの勢いが衰えていき、こちらの攻撃がズバズバとケンタウロスに当たり始め、ケンタウロスはついに膝をつく。膝をついたケンタウロスに彩花の火魔法と、彩花自身の攻撃が当たり始め、ようやく彩花も前衛として仕事にありつけるようになった様子だ。
「ケットシーの相手ご苦労様」
「本当よ。乱入がありだなんて聞いてなかったわ」
彩花がケンタウロスを斬り刻み始め、俺も膝をついたケンタウロスの首を狙ってしっかりと最後の一撃にしようと力を込める。
完全に力尽きた様子のケンタウロスから槍がコロンと転がり、抵抗する力も失せた様子を見定めると、ケンタウロスの首を切り落とす。そこから黒い霧が一気に噴き出し、そしてケンタウロスは消えていく。これで中ボス退治完了だ。そしてフワッと浮き上がるような感覚を覚え、レベルアップした様子だ。他のモンスターに比べて苦戦した分経験値も多かった、という事か。
「わ、わ」
彩花のほうもレベルが上がったようだ。そして、魔石とスクロールを二枚、後に残していた。ケンタウロスのことだから【槍術】とか【体捌き】は持ってそうだな。後は……最後の皮膚が赤くなって戦闘力が一時的に増幅された状態。それについても何らかのスキルが付いていても良さそうだ。もう二、三回戦ってみて、スキルスクロールの中身とその内容について帰ったら調べることにしよう。
「とりあえず、重たい荷物がなくて良かったわね。いきなり槍なんて落としてくれたらもう帰りの時間になる所だったわ」
「そうだな……スキルスクロールのほうが装備品より落ちやすいのかどうかも含めて、何回か戦っておきたいな。次は彩花が前衛を務めてみるか? 」
「状況によるわね。私の方へ来たら私が頑張る、その間に幹也にはしっかり全力で後ろから攻撃してもらうからそのつもりで信頼してるわよ」
◇◆◇◆◇◆◇
リポップするまでの30分の間、周辺にはあまり近寄らないようにしながらケットシーを倒して魔石とスキルスクロール集めをする。スキルの枚数で言えば、あと三枚は無断で俺が使って覚えても問題はないことになっているが、このあいだにまた一枚スキルスクロールが落ちたので、すぐさま鑑定サイトにお願いして、マジックミサイルであることを判定させると、そのまま覚える。
これでレベル7か。もう一枚落ちれば遠距離魔法スキルは全部レベル8になるな。どれが一番使い勝手がいいのかは今後の使い方次第になるが、しっかりとそれぞれの特徴によって使い分けられるようにして行こう。
30分経ち、スマホのアラームが鳴ったので円形巨石群のほうへ向かう。ケンタウロスは……やはり存在していた。きっちり30分というわけではないが、おおよそ30分で復活する、で問題ないらしい。
「じゃあ、今度は私が戦ってみるわね」
「ランスチャージが出来ないようにマジックミサイルで弾幕は張るからな」
「任せたわ。是非私の足元に来る頃にはしっかりスピードを殺した状態で届くようにお願いするわ」
「その後は……まあ、好き放題やるとするか」
ケンタウロスに一定距離近づくと、立ち上がりケンタウロスが槍を頭上で振り回しながら急接近してくる。そうはさせまいと、マジックミサイルでちょうど足元に当たるように牽制射を数回撃つ。突進してきたケンタウロスはマジックミサイルの物理的な邪魔に引っかかって転び、顔から転びに行く。あれは絶対痛い転び方だ。俺なら泣いて帰るところだが、さすがの中ボスだけあってそういうわけにもいかないらしい。
そして、立ち上がった目の前には彩花がいる。あやかがそのまま剣でケンタウロスの右手を切断しにかかる。彩花のその剣の断面は傷を深くするためだけに付けられたような文様と刃のおかげですんなりと、とまではいかないが比較的簡単に右手を切断し、槍を落とさせた。
そして、ケンタウロスが槍を拾う間に胴体へ攻撃を仕掛け始めたので俺も負けじと後ろから雷魔法とマジックミサイルのありったけをぶつけにかかる。
彩花に当たらないように、というのを心がけているし、出来るだけケンタウロスの真後ろから攻撃するようにしているのでケンタウロス自身もやり辛そうなのは承知の上だ。もしケンタウロスが機転を利かせて避けたとしても、彩花側からは見えてるはずなのでそれも問題ない。マジックミサイルの誤爆だけが怖い……ってところか。
そういう意味では真後ろよりは同じ方向から撃ちこんだ方が安心安全なのだろうが、ちょっと悩みどころではある。しかし、何もしないのは一番まずいので、できるだけ足を動かしながら魔法を撃ち続け、そしてたまには近寄って後ろから斬撃を撃ちこんで一瞬こちらに意識を向かせて、その間に彩花が火魔法と攻撃を同時に繰り出すといった、まだ仕上がりきっていない連係プレイで二匹目のケンタウロスも撃破された。
そういえば、二匹目の時は一匹目みたいに赤くなって動きが早くなったりはしなかったな。あれは何かのスキル、ということなんだろうか。
それはさておき、今回の戦利品は魔石と一枚のスキルスクロール、それと……靴だ。靴が出た。これがケンタウロスの靴……らしいんだが、蹄鉄でも馬蹄型でもなく、人間が履く用の靴を落とす、という奇妙な状態にちょっとたじろいでしまう。そして、靴は……でかい。ケンタウロスサイズなのかどうかは解らないが、30センチほどの靴の大きさがある。これ、履ける人のほうが珍しい気がするが、とりあえずバッグに入れておこう。
「さて、二回終えたわけだけど、もう一回行く? 」
「さっきよりスマートに終わらせられたわね。やっぱり、幹也に盾役を任せながら攻撃に参加してもらうよりは、火力のある幹也に攻撃を任せて私が盾役を務めたほうがいいのかしら? 」
「どうだろう。一回目はとにかくターゲットをずらさないことを念頭に置いてたから、攻撃の手より防御の手の方が優先されていたからな。次は魔法も斬撃も合わせてきっちりガードして見せるから、更に素早く終わらせられるんじゃないかな」
「そうね、幹也に攻撃に回ってもらった方が早いのは確かだと思うわ。彩花も幹也ほどスキルが育ってないのもあるけど、剣に慣れてないって感じがするわね。もう少し【体捌き】や【剣術】のスクロールで補えれば立派に同等に肩を並べられるんじゃないかしら」
アカネが岡目八目の意見を言ってくる。なるほど、外側からはそう見えるわけか。
「つまり根本的に見直すところというのはあまりないわけだな。二人でケンタウロス倒すには充分力はあるから、後は流れと力の強弱でしっかりカバーすればもっと楽に倒せるってことでもあるわけか」
「そういうことよ。実力はある、後は慣れってことね。三回目はもっとうまくいくと思うわよ。後、幹也が気にしてるのは多分【狂化】のスキルね。自分の体力と防御力、理性を手放す代わりに攻撃力を充分以上にあげるスキルなんだけど……幹也のレベルによる補正のほうが高かったってことになるのかしらねえ。なんにせよ怪我がなくて何よりだわ」
ふむ、あれもスキルか。自分で使うことはなさそうだが、そういうスキルを使ってくるモンスターがいる、ということは覚えておいて良さそうだな。
「さて、もう30分フラフラしようか。そろそろ荷物も危なくなってくるけど、よっぽど重たいものを用意されない限りは大丈夫だろうし、予定通りもう一回だけケンタウロスを狩って帰ろう。十五層まではこれで制覇……ということでいいよな」
「そうね、十六層以降は学校ダンジョンを参考に作っていくことにしようかしらね。一応近くにダンジョンあります、ってご近所様に連絡を入れておくのは悪くないでしょうし」
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