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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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222/225

第222話:おひるごはんはほしいつつ

 十四層を引き続き回り、トレントを屠っていく。樹液はもう充分に溜まったが、もう少し時間がかかる。意外と十四層は長いので、気を引き締めていく。その分だけドロップ品も溜まるし、樹液も落ちるのでこちらとしては文句のつけようはないのだが、どうも気楽に倒せる分にだけ集中力が薄まっていく。


 ここは一つ、空腹を紛らわせるためにもう少し真面目にやって、食事ができるゾーンに突入するまでみっちり体を絞り込もうと思う。お腹が空いては力が出ないではなく、空腹だからこそ腹に力を集中させてしっかりとした体捌きを体に教えつけよう、というほうに意識を向けていこう。


「そろそろ終わりかしらね、十四層も。十五層の前に休憩とるんだったかしら」


 アカネが確認を取る。十五層に入ったら草原に切り替わるのでそのギリギリの場所で休憩を取る、というのが良さそうだ。前のビッグバットの時みたいに、境界線で引っかかってるモンスターが居ない限りは問題ないだろう。


「ご飯の時間が近づいてきたか。胃袋のほうは準備万端なんだがもう少しの辛抱だな」


「私も。今日は多めに作ってきたから物足りない、なんてことはないと思うわよ」


「それは楽しみ。何が出てくるかわからない分期待値は高いぞ。がっかりはしないけど」


「じゃあ、きっとお眼鏡にかなったものが出てくるはずだと思っていいわよ。私の女子力の高さを思い知るといいわ」


 彩花謹製の気合の入った弁当らしいので、目も舌もしっかりと楽しませてもらうことにしよう。そんなことを言いつつも十四層を歩き抜け、十五層の草原が見えてきた。境目には……トレントは詰まっていないし、十五層側にもケットシーが引っかかっているような様子はない。これは安心して休憩できるかな。


「よし……【聞き耳】にも反応はないし、ここでお昼にしよう。思ったより時間がかかった分お腹が減ってるし、美味しく食べられそうだ」


 早速座り込んで、アカネに周りを警戒してもらいながら弁当箱の蓋を開ける。弁当箱の中には、男の夢みたいな彩りカラフル弁当が詰め込まれていた。


「いただきます」


 すると、アカネのほうへかなりの量の青白い光が流れ込んでいく。これは……それだけ手が込んでいて愛情たっぷりだというサインなのだろう。俄然楽しみになってきた。さあ、中身を確認していこう。


 アスパラガスのベーコン巻き、卵焼き、唐揚げ、ミニトマト、飾り人参、ブロッコリーなど彩りも豊かで量もある。量があるのはちゃんと俺の体の動かし具合と空腹を満たせる分を考えて作ってくれてあるらしい。前に隆介に自慢された彼女弁当をそのまま俺に移してくれたような、夢の弁当がここに今あった。


 何より、俺のためにと作ってくれたというのが一番うれしい。なんだか涙が出そうだ。ちょっと鼻から涙は出ているが、早速食べよう。


 ……これが愛情の味か。しっかりと運動をした後だから濃い味付けのほうが好みになることも考えてあるのか、しっかりとした味が付いていて美味しい。アスパラもただ茹でて巻いてあるだけでなく、ちゃんと麺つゆと塩胡椒みたいなもので下味をつけてある。もしかしたら茹でた時につけたのかもしれない。ただアスパラを巻いて焼いただけではないのは確かだ。


 唐揚げも冷凍とはいえ、しっかりとした肉感のある奴をチョイスされており、食べた満足感がある。卵焼きは砂糖で甘めにしたうえで少しだけ出汁を加えてあるので甘さだけで攻めていないのもポイント。そしてご飯にはちゃんとふりかけが添えられている。ふりかけがあるかないかだけでも食の進みは随分違うので、しっかりと喰わせてくれるように配慮がされている。


完璧(パーフェクト)だ」


「下手にこれがこれであれがあれで……と言われるよりもうれしいわ」


「うん、ひたすら食事に集中したい。しばらく無言になるぞ」


 ひたすら胃袋に詰めるだけでなく、きちんと味わって、よく咀嚼して、飲み込んで、飲み込んだ後の呼吸も香りとして楽しむ。うーん、ダンジョンの奥でこれだけ手の込んだ料理が食べられるなら文句はない。ありがたさしかない。


 十分ほどで食べ終わった後、全力のありがたみを感じながら箸をおく。はあ……美味かった。これは毎日食べたくなる味だ。でも、毎日食べてそれに慣れてしまうと逆にありがたさが薄れてしまうからな。これをたまの楽しみとして待つのも悪くないな。


「ごちそうさまでした」


「お粗末様でした」


 俺が必死に食べるのを見て彩花も満足そうにしている。アカネも養分が吸収出来てどことなく微笑んでいるように見える。アカネからしても、彩花の献身っぷりが気に入った、という様子だ。


「ダンジョンの中で良い雰囲気ね。とてもこれから中ボス倒しに行くという空気ではないわ。これはピクニックね」


「ピクニックで中ボス退治が出来るようになるまで強くなった、と考えればいいさ。それに、美味しさのおかげでやる気も上がった。これでケンタウロスに勝てる気がしてきたぞ」


「そこまでやる気の上がるものだったら、いっそのことカツ丼でも作ったほうがよかったかしらね」


 クスリと笑いながら彩花が満足そうにこちらを見つめている。作った方としても、これだけ美味しく食べてくれるなら作った甲斐はあった、というようなものを伝えて来るような、優しい目線だった。


「さて、少し休憩したら十五層へ行って、ケットシーを倒しながらケンタウロスのいる場所まで行って、一回は倒す。二回いけそうなら二回。それから帰る。そういうスケジュールで行こう。そういえば、中ボスは三十分、ボスは一時間でリポップするけど、この先も一緒なんだろうか。それとも、十五層の中ボスは一時間半で二十層のボスは二時間で……と段々伸びて行ったりするんだろうか? 」


 アカネのほうを向きながら質問をすると、アカネはうーんどうしようかしらね……と腕を組んでしばらく考えた。


「まあ……誰かが損をするわけじゃないから良いわよね。中ボスは全部三十分、ボスは全部一時間で統一していく予定よ。外のダンジョンでどうなのかは自分で調べてもらった方が早いと思うわ」


 三十分か。だとしたらかなり時間的余裕はあるな。一時間だと思って二回と言ったが、強さによっては三回ぐらい倒してやってもいいぐらいだ。それだけの時間的余裕がある。


 ただ、ボスのドロップ品によっては一回目で帰るような可能性もある。槍なんて落とされた日には片手に握って帰る以外に方法はないだろう。他の胸当てや靴なら最悪履いて帰ればいいということになる。


「三十分か。よし、ドロップ品によるけどできるだけ回数を稼げるように頑張っていこう。具体的には槍が落ちるか三回倒すまでは頑張る、という感じにしようか」


「苦戦したらまた実力をつけてやり返しに来る、ということでいいのよね」


「そうだな。でもアカネも大丈夫って言ってることだし、案外するっといけそうな気がしないでもないが、少なくとも【威圧】は効かないだろうと考えておいていいだろう。あくまで肉弾戦と魔法戦メインということで、できるだけのことをして戦っていくことにする」


「オークチーフの初戦みたいに、威圧をかけてくる可能性はあるのかしら」


「調べた限りではその様子はないけど、こっちを敵と見定めたらそのまま突進してランスチャージを仕掛けてくるらしいから、うまく避けないとまずい、と言うことらしい。その後はできるだけ距離を詰めて、再び突撃姿勢に入らせないことが大事……と書いてあったかな」


 スマホを取り出しケンタウロスの攻略法のサイトにアクセス……って、ここも電波通じるんだな。ダンジョンの階層によっては通じない所もあるらしいが、ここは通じるらしい。攻略法をドローン撮影した、第三者視点の動画があったのでそれを腹が落ち着くまで見る。


 動画内では、ケンタウロスのランスチャージを大盾で受け止め、そのままどっしり構えるタンク役の男。しっかりとした鎧に身を包んで、どこから攻撃されても問題ないといった装備の完全な本業探索者という風体を持つ人だ。


 その人ががっしり盾でランスチャージを受け止め、受け止めた勢いを上に弾き、その足でケンタウロスの足に盾を絡ませて転ばせる。転んだところにマジックミサイルと……エネルギーボルトか雷魔法のどちらかが着弾し、ケンタウロスに追撃を与える。


 しかし、それだけで倒れるケンタウロスではなく、起き上がると即座に槍で盾役の男に対して攻撃を加えるも、慣れた手つきで槍を捌き、槍を弾き飛ばすと、後ろから魔法で牽制しつつ、ゆっくりとダメージを蓄積させながらケンタウロスの頭を盾役が抑え込み、最後に近接攻撃担当らしき男がケンタウロスに何度か斬りこみ、そしてケンタウロスが倒れた。


「ふむ……これだと参考にならんな。盾役がいないパターンの動画を探そう」


「そうね。私たちどっちも盾持ってないし、ランスチャージされたら受け止める術がないものね」


 また動画を検索。すると、”回避タンクビルドで行くケンタウロス撃破”という動画が発見された。


「お、こういうのが見たかったんだ。早速再生してみるか」


 再生すると、そこには俺達に参考になりそうな情報がいくつか開示されていた。中でもベストな情報と言えば、動画内もこちらも剣持ちであることと、それぞれがスキルを持っていることだろう。俺もマジックミサイルと雷魔法を持ってるし、彩花も火魔法を持っている。


 つまり、近接と遠距離をスイッチしながらお互いが狙われながらそれぞれで回避行動を取り、自分がターゲットを取っていない間は遠距離攻撃に専念できる、ということになる。それぞれで交互ないし集中してターゲットを取って攻撃しながら、同時に槍のはじき返しによる防御も行いながらなので忙しくはあるが、二人で倒すには何とかなる相手かもしれないな。


 動画の続きを再生すると、手慣れた様子でスイッチしながら前衛を交代していく二人の息のあったコンビプレイが映し出されていた。ここまでのことが俺と彩花にできるかと言われると今のところ無理だろう。だから、足りない分は火力で押し切ることにしようか。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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