第219話:現状把握とスキル育成、中古品売却
二日かけて調べて整えたところ、手元のスキルスクロールの在庫は【火魔法】が4枚、【水魔法】が6枚、【風魔法】が4枚、【雷魔法】が8枚になった。それとは別に【精力絶倫】が五枚あるので、なんだかんだ金持ちになっているのは間違いないらしい。これは……どうするべきだろうか。
風魔法は二枚ほど売り払ってしまったので勿体ないことをしたとはいえ、流石にこれだけのダンジョン資産を抱えてひたすら毎年ちょっとずつ流す……というのは無理がある。【火魔法】は彩花に覚えてもらっていくとして、三属性どのスキルを覚えていくか。
ちょっと悩むのは時間の無駄なので、まずは一枚ずつ覚えてみて、一番使い勝手が良さそうな魔法を重点的に覚えていく、ということにしようかな。どうせ枚数はあるんだから無駄遣いにはならないだろうし、足りなきゃまた補充しに行けばいいんだ。
そんなわけで【水魔法】、【雷魔法】、【風魔法】……と順番に覚えて、装備も持たずにダンジョンに入り、それぞれ撃ち分けて加減や使い勝手を調べる。直感的に使えるのは【風魔法】と【水魔法】なのはわかった。それぞれ、思ったところへ狙って発射するようなイメージで順次発射されて着弾する。
問題は【雷魔法】だが、こいつは少しばかり溜め時間が必要になるらしいな。一定レベルまで力を溜めた後、最初に思いついた場所へ着弾する、という形で、これも数秒ほどかかるようだ。スライムのような弱いモンスター相手なら問題はないが、動き回るようなモンスター相手には効果が薄く感じるだろう。
何かしらブレイクスルーが必要になるな。使い方を変えてみるとか、着弾を点ではなく面で想像して……電気トラップの床のような感じで発射させて、その範囲に閉じ込めておけばいい、という風にすれば使い勝手は多少マシになるだろう。
それぞれのスキルの使い勝手を調べたところで、ネットで検索だ。それぞれの魔法の使い方について使い分けやコツ、テクニックを披露している動画を探し、それを参考にしてみよう。
スキルについては、ある程度意識的な使い分けにより、初弾の発射速度やイメージによる加速、それから威力の可能な範囲での増加軽減、などが出来るようになっており、雷魔法でも着弾時間差を短くすることができるらしい。これもイメージの力なんだそうだ。
雷のイメージとして落雷をイメージするか、それとも静電気をイメージするか。それだけでも随分速度差が変わるらしいことがわかった。なるほど、落雷がイメージなら、たしかに着弾までに時間がかかるイメージがあっても仕方ないな。でも、落雷なら音が遅れてくるだけだからまた違うような気がするが……うむ、細かいことを考えるのはやめにしておこう。
静電気でピリッと来るイメージを両手の間に持つ……いや、ここでやるよりダンジョンでやろう。うっかりここでやって電気ショートさせてパソコンが壊れたりしても困る。
ダンジョンの中に再び入り込んで、スライム相手にイメージの練習をする。静電気を発射するイメージをしながらスライム相手に打ち込むと、たしかに数倍速く雷撃が飛んでいくことが分かった。今日一日ひたすら的にされているスライムがかわいそうだが、これも実演とより確実な威力アップのため。君らの死は無駄にしないよ。
雷魔法が素早く起動させられるようになったところで、改めてどの魔法を使っていくかだが……マジックミサイルがある現状、どの魔法を使っても問題はないように感じられる。風魔法と水魔法は……レベル1さえ覚えておけば喉が渇いた時の補充が出来るし、それで問題ない。風魔法じゃないと効果がないモンスターというのも思いつかないので、ここは【雷魔法】で行かせてもらうことにしよう。
手持ちの【雷魔法】のスキルスクロールを全て覚えてしまう。8枚あるのでレベル8、エネルギーボルトと同レベルの魔法になった。使い分けができるかどうかはわからないが、確実に戦力になってくれることは確かだ。エネルギーボルトとマジックミサイルと雷魔法、それと威圧に近接攻撃。俺のスキルも大分増えてきた。スキルの分だけ何かができるかどうかはわからないが、これも一つの指標として考えていくことにしよう。
さて……残りは塩漬けだ。そして、今日はやることがもう一つある。山賊刀の売却だ。彩花に山賊刀を引き取るかどうか連絡したところ、もっといい武器を見つけられそうだからそっちにしたいということらしいので、手元にある山賊刀の三本のうち二本を売りに出してしまうことにした。新しいのと、使い慣れたのを一本それぞれ出す。
さすがに二本抱えて自転車に乗るのは苦労したが、どうやらギルドがある近くには中古ショップがあるのが世の中をうまく回す仕組みらしく、パチンコ店の近くに景品交換所があるような形で、ダンジョンがあるからには必ず中古品の出回りがあるということで、できるだけ近くの美味しい場所に中古品ショップが店を構えている、ということらしい。
早速中に入り、買い取りカウンターへ山賊刀を持っていく。
「すいません、買い取りお願いします」
「解りました。まずは検品させてもらいますね」
早速店員が刃を確認し、反りが伸びていたり刃が欠けていたり、持ち手が変化していないかどうかを一つ一つ項目ごとにチェックしながら、買い取り用の書類にチェック項目を入れていく。
「これ、オークチーフからのドロップ品であってますか? 」
店員の見る目もそれなりにあるらしい。それほど巷にあふれてる品でもあるんだろうか。
「はい。片方は使いまわした後ですが、もう片方は一回も使ってない新古品になると思います」
「なるほど……ありがとうございます」
店員は納得した表情で更に続けて俺が今まで使っていた方の山賊刀を真剣に見つめる。
「大分使われてますね。使い始めてどのぐらいですか」
「初めてのオークチーフ戦で出たものなので、それから今日までは使っています。まだ一年は経ってないってところでしょうか」
「なるほど。その割にあんまり使い込まれてないですね。ダンジョンへは時々向かう程度、というところでしょうか」
ざっくり見るだけでそれだけの情報を引き出せるらしい。この店員なかなか目利きのできる人だな。
使いこなした思い出の一品なんです、とかも考慮されたりするんだろうか。流石にそこまで思い入れがあるなら中古に流したりはしないとは思うんだが、まあ人それぞれ理由はあるもんだしな。新しいものが手に入ったので古いものを売るでもいいし、さらに新しい武器が手に入ったので予備にしていた武器ともども売りに来た、という言い訳を考えることもできる。
「お待たせしました。こちらの使われていない山賊刀が16万円、使い込まれた方の山賊刀が12万円になりますがそれでよろしいですか? 」
事前相場だと、購入時の価格は新古品で20万円という話だったので、まあ売れなかった時の処分料金を考えるとそのぐらいの物か。前に売りに行った時と同じ金額だとすると、ここに品質差や地方差による金額の差異はそこまでないらしい。しかし、使い込んだ方はかなり安く流されるんだな。ざっと販売時は16万円ぐらい、ということか。
「わかりました。それでお願いします」
「はい、では少しお待ちくださいね。あと、探索者証を用意しておいてください」
中古品の武器売買を行う際は銃刀法の枠外規定を使うため、購入者も販売者も探索者であることを確認された上で取引を行う、ということになっている。そのため、両者が探索者であることを確認する必要があるのだ。これも探索者講習で聞いて覚えていたので、ちゃんと持ってきているぞ。
「では……探索者証をお願いできますか」
そのまま探索者証を渡し、チェックマークだけ付けると探索者証を返してきた。どうやら、探索者証のナンバーを控えられるというようなことまではないらしい。
「はい、確認できましたのでこれで取引は終わりになります。金額のほうをご確認ください。
店側から一万円札を28枚出されて、枚数を確認した後財布にしまう。
「本日はありがとうございました」
「毎度ありがとうございました。今度は是非購入のほうもよろしくお願いします」
装備を売ったのだから次は買うほうにも回ってくれ、ということらしい。装備品を色々見て回るが、これは全部経費で落とせるんだろうか。金額によって経費にできたりできなかったりするらしいし、その辺はちゃんと調べておかないといけないな。でも、装備品の金額は気になるので一通り調べておこう。
どうやら、ケンタウロスの装備品セット、というものがあるらしい。ここでも一揃い80万円で販売されている。金額だけの価値はある、ということかな。だとしたら防具も武器も……まあ、武器は槍だが、胸当て、靴、ズボン……これはちゃんと二足歩行用だ、あと籠手、槍の五種類をそろえてケンタウロスセット、としていっぱしの探索者であることを証明するものになるらしい。
武器は……【剣術】を取っているところもあって、槍を使う可能性は低いだろう。たとえば【槍術】のスキルを複数枚買い入れて体を無理矢理慣らす……という方法も取れるが、それはケンタウロスセットが揃ってから考えても遅くはないこと。いまのところは山賊刀を新しいものに交換したことで多少また使いよいことになっているだろう。さて、彩花も言っていたが、俺もそろそろ新しい武器に交換するべきなのだろうか。
中古ショップを一通り回るも、これといってピンと来るような武器はなかった。しばらくは山賊刀を使いまわしていくことで問題ないらしい。もしも気になる武器があるならそれを購入するために費用を捻出するところだろうが、今日の所は買い込むような品物もない。今のところ怪我をするような目には合っていないので、防具の新調もしなくていいだろう。危ないと思った時に防具は新しくしていくことにしよう。
ちょっとした金が手に入ったので、コンビニでお菓子を買ってアカネにお供えしてから軽くベッドの下の掃除だ。この魔石の量はさすがに隠し切れなくなってくるので、次にダンジョンに潜るならそのまま大学ダンジョンにも潜って、証拠品として確実に換金する必要があるだろうな。まったく……誰だよこんな面倒な換金方法しか取れないダンジョンくれなんて言い出したのは。
「あんたよ」
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