第218話:魔法スクロール集め
さあ、今日も元気いっぱいだ。朝ご飯にしっかり米を多めに炊いておいた分もあるが、天気も良くダンジョン日和である。外はすでに暑さを迎えており、ゴールデンウィークというよりも夏日。爺ちゃんが若いころはこのぐらいの暑さが夏の盛りだったらしいが、今ではそんな様子はない。夏はもっと酷暑である。
まあ、ダンジョンの中では天気のよさは関係ないし、徒歩0分の自宅ダンジョンには外を出歩く必要もなく、そのまま自宅で全てを完結できるので問題なく任務を遂行できる。
朝起きて歯を磨き、出すもん出したら朝食を作るついでに昼食の準備もする。昨日のうちにある程度加工しておいた野菜や冷凍の餃子や唐揚げなんかをしっかりと弁当箱に入れておくと、空いたスペースに米をしっかりと詰め込む。そして、炊飯器に余った分が朝食になるわけだ。程よい量が残ったので朝ご飯としては充分だろう。
なお夕飯は鍋パスタにする予定である。かまぼこや白菜なんかの鍋用の野菜を煮込んだ後でパスタを入れてしっかり混ぜ合わせ、雑炊のパスタバージョンみたいなものを作る予定だ。
今日もちゃんと飲み物を用意してあるので途中で喉が渇いたから一度撤退する、というような可能性はない。飲み物が本当に切れるか、荷物が一杯になって入らなくなったら戻る予定ではあるが、そこまで荷物が一杯になってくれるかはモンスター次第。是非ともスキルスクロールで一杯にして帰りたいものだ。
今日のモンスターの予定は十二層。スケルトンメイジから魔法のスキルスクロールを全種類用意してもらって、彩花がいつでもスキルレベルの向上ができるようになってもらうことと、いつでも奥に行ってより確かなレベルアップとドロップ品の回収、そして短時間高収入を維持できるようになっておくことが大事だ。
俺個人としては【火魔法】以外の魔法のスクロールを複数枚所持しておくことで、いつでもどの魔法でも覚えられるようになっている、というのが理想。その為にはスケルトンメイジの大量退治が必要だ。本来なら一日頑張って一枚か二枚……というのを、一日がんばって、それぞれ5枚ずつぐらいのペースで探索することができるはずなので、それとレベルアップも込みで楽しませてもらおう。
さあ、朝ご飯を食べて片づけをしたら装備を身に付けて早速探索開始だ。
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一層に到着し、早速ワープポータルから十層へ一気に移動する。どうしてワープなのだろう? という疑問は今更だが、これのおかげで便利に移動できているので細かい文句は……そうだな、どこかの大学の研究室が研究してないかどうか調べるのはありだな。
もしかしたら俺はワープポータルの仕組み解明や実装するためにはどういう技術が必要になるのか、というリバースエンジニアリングの研究で飯を食っていく人間になるのかもしれないしな。何気なく使っているワープポータルだが、こいつも充分に不思議装置の一つではある。ダンジョン学という学問の中でどう扱われているのかまでは解らないが、しっかり覚えて身に付けて、出来るなら金に換えられる研究にしてしまおう。
早速十一層方面へ移動すると、シャドウウルフが襲ってくるが、威圧をかけると、途端に腹を出し、服従のポーズで顔だけは威嚇してきた。顔はそんなでも体は正直だな。正直な身体に山賊刀を突き立てて、次々に現れるシャドウウルフを降参のポーズからの一突きで楽にしていく。威圧はレベルが上がりすぎると向こうから降参してくる……これ、何かの情報として使えるかもしれないな。
十一層にたどり着き、ホブゴブリンにモンスターが入れ替わる。ホブゴブリンに威圧は……効いた。が、流石にある程度耐性があるようで、シャドウウルフのように降参のポーズとまではいかず、膝をついて動けない、という様子に変化した。それでも、【威圧】を重ねただけの効果はあったな。気楽に首を刎ねて回り、魔石と50%ぐらいの確率でくれる銀貨を背中のバッグに納めていく。
やはり、換金効率だけを考えるとホブゴブリンは銀貨の分もあり、魔石を落としやすい点も含めて換金効率がいいな。スクロールの売却を含めればスケルトンメイジのほうが上なのは明らかだが、売却のことを考えるとまとめて売りに出しにくい金額であるので、やはりホブゴブリンのほうが手軽に扱えるモンスターであることは間違いないだろう。
銀貨の枚数が10枚に達しようとする頃、十二層へたどり着いた。今日の目的はここだ。昨日の三層オークと似たような距離感ではあるが、スケルトンメイジに【威圧】が効くのかどうかも気になる所だが、威圧を気にせず出来るだけ素早い動きで倒していき、どんどんモンスターの数を狩ってスクロールを集めていこうと思う。
早速現れたスケルトンメイジの赤色が、俺に向かって火魔法を放とうとする。そのスケルトンメイジに威圧を放つと、唱えていた魔法が中断されてヒュボッという音ともに掻き消えた。どうやらびっくりしてうっかり魔法を途中でキャンセルしてしまった、というような形になったらしい。その間に近づいて核を割り、スケルトンメイジを倒す。
さすがに一発目からスキルスクロールという風にはならなかったが、【威圧】が充分に効果を発揮することがわかったのでよし、としておこう。ささ、今日もせっせと野良稼ぎだ。
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午前中に6枚のスクロールが手に入った。まあ、大体予想通りの枚数ではある。重さはまだ大丈夫なのでお昼を食べたあともうしばらく十二層に駐留して、バッグの中身が8割を越えたら戻るようにしよう。帰りは弁当を入れていた所や、スクロールと銀貨だけを放り込んでいた側にも魔石を放り込んでいけるので、帰りの荷物は心配ないだろう。
弁当を食べるために、ちょっと空けさせたモンスターを倒したばかりの場所で食べ始める。うむ……昨日から仕込んでおいた甲斐もあって、かかった時間の割に満足感のある食事がとれている。特に、昨日寝る前に煮込んで冷まして、朝もう一度温めて煮汁をしっかりしみこませた大根なんかはかなり良い感じに出来上がっている。まだ鍋に残ったままの残り汁は、和風リゾットにして美味しくいただいてしまおう。
大根と一緒に煮込んだはんぺんの油が良い感じに大根に味わいをつけてくれていてこれもまたよし。大根葉も、彩りの少ない弁当箱の中で必死に緑を主張している。大根と米の白、大根葉の水色、はんぺんの茶色、そして冷凍餃子の……実質これも茶色だな。後はまあ、仕事が終わってから色々と食べることにしよう。
今日の所はお腹がちゃんと膨れたので弁当の出来は良かった、と自分を褒める所だな。よし、えらいえらい。さて、少し休んだら……っと、休んでる暇はなさそうだ。向こうからスケルトンメイジの足音が聞こえる。充分視界は取っているし、食事中も周りを警戒していたから大丈夫かと思ったが、どうやら巡回しているタイプのスケルトンメイジだったらしい。休憩すらさせてくれないとは、忙しいことだ。
素早く曲がり角から目の前に躍り出ると、威圧をかけながらマジックミサイルで迎撃、一気に核を割って倒す。魔石を残し、スケルトンメイジは黒い霧になり消滅していった。
ふーやれやれと魔石を拾うと、ゆっくり歩きながらドロップ品を集めて、重くなったら一回帰ってまた来るか。今日はスピード勝負をしている日でもないし、昨日よりはのんびりと探索が出来るのは間違いない。
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結局魔石が一杯になり、レベルが上がり、スクロールも合計12枚手に入れたところで一度帰還。荷物を一旦置いて、もう一度十二層に向かう。なんか、この繰り返しだけで一生飯を食っていけるような気がしてきた。明らかにこの二日間で充分以上の金額を稼いでいるので、覚えないスクロールの売却と銀貨と魔石の交換だけで十二分に生活できるな。
今年から早速始めるかな、探索者生活。でもあまり派手にやると実際の金額とダンジョンから持ち帰った分の乖離ですぐに気づかれることになるだろうし、少しずつ混ぜて使うしかないか。荷物を軽くしたところで作り置きの麦茶をペットボトルに補充して、再びダンジョンへ。もう一度十二層まで真っ直ぐ歩き、十二層でスケルトンメイジ相手にまた戦闘を開始する。
その後さらに6枚のスキルスクロールと1レベルを手に入れ、合計18枚の入手となった。そこで時間的にタイムアウトになったので素直に帰ることにする。今日の儲けだけで……スクロールを全部売りに出したら300万円か。
そもそも覚えた【威圧】の分だけで軽く900万円を超えるのだから、金がかかっている体になったな。マジックミサイルとエネルギーボルトの分も加えたら一千万円以上探索者として金をかけていることになるわけか。更にお高いな。とてもじゃないが貧乏大学生を気取っていることはできないわけだ。
真っ直ぐ部屋に戻って、スキルスクロールの山を机の上に置いておき、まずは魔石の整理からだ。この二日間でかなりの量の魔石を手に入れてしまった。こいつは迂闊に換金させられないのでどうするか悩む必要がある。
混ぜ込んで大学ダンジョンへ行くたびにちょっとずつ積み増ししていくしかあるまい。流石に四年間お世話になるダンジョンで誤魔化し続けるのも難しいだろうし、少し距離のあるダンジョンや、インスタンスダンジョンが発生した時に参加したふりをして魔石の引き取りをお願いするのが良いかもしれないな。
魔石をしまい込むと、早速スキルスクロールの鑑定のお時間だ。流石にこの量を一日で鑑定することはできないので、とりあえず10枚鑑定して、今夜は寝て、明日朝起きた後で続きの枚数を確認することにしよう。
一日10回の鑑定サイトも10回では少ないと感じてしまうのはこの専用ダンジョンの悪いところだな。いや、そもそも一日に18枚もスキルスクロールを探してくるのが想定外なだけではあるんだろう。むしろ二日できっちり鑑定してくれることに感謝しないとな。今度1000円ぐらい寄付を送っておこう。
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