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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第215話:大泉ゼミは静かに進む

 ゆっくりポイントを確認したところで大泉ゼミへ急ぐ。ちょっとゆっくりしすぎてしまったので駆け足だ。なかなかの気持ちよさだったのでついつい時間に遅れるところだった。どこへ行くかは大まかに伝えてあるから良いとして、大泉先生も俺が構内にいてもしかしたらゆっくりしすぎて寝てるんじゃないのか、と言われて笑われるのは見えているので遅れないように急ぐ。


 この大学ではチャイムが鳴らないので、チャイムを聞いて急いで講義棟へ向かっていく、ということはなく、あらかじめ早めに着席なりしているようにしろ、という自主性を重んじてのことらしいが、時間を出来るだけ正確に把握できるよう自己管理に努めろ、という意味でもあり、今までチャイムを基準に生活していた人にとってはなかなか慣れないことだろう。


 時間になる前にダンジョン学部の講義棟に入り、大泉ゼミに入ると、まだ大泉先生は来ていなかった。


「ふぅ、間に合ったか」


「間に合ってないよチミぃ」


 目線を下の方へズズズッと下げると、アホ毛が目に入り、そしてその下に大泉先生と思しき女性が既に着席していた。


「すいません、小さくて見えてませんでした。ちょっとゆっくりできる場所を見つけてゆっくりしすぎました」


「うむ、後でそのゆっくりできる場所の理由と効能をレポートに添付すれば遅刻はつけないでおいてあげよう。私も君のゆっくりできる場所というのに興味が湧いた。それを詳細に書くならば、小さくて見えなかった発言も聞かなかったことにしてやろう」


 どうやら今日は機嫌が良いらしい。そのまま講義用の机と椅子セットに座り、講義が始まる。


「では、前回の続きからだが……朝日奈君、前回は何処までいったっけ? 」


「そうですね、前回は大きなくしゃみをしてくしゃみの振動で肋骨が折れたかもしれないと発言したのが最後ですね」


「そこをもうちょっと遡って、講義内容についてのところまで頼む。あと私の一挙一動をきっちり記録してるのは怖いのでほどほどにしてほしい」


「大丈夫です、今でほどほどですから。講義内容は、現在の魔石発電のスタンダードなツィンタラバ型発電のメリットとデメリット、そのデメリットによって算出された魔石くずに対してなんらかの科学的アプローチによってエネルギーの無駄を減らそうと研究しているのが現状である、という辺りまでですね」


 朝日奈はそんな細かいところまでノートを取っていて、本当に頭の中に講義内容が入っているのかどうか不安になるな。多分講義内容よりも先生かわいいとかホワイトボードの上までペンが届いてないとかそういうことばかり書いてありそうだ。


「では、そこからだな。このツィンタラバ型発電方式で得られた魔石くず、というのが最初の講義で渡して、本条君に魔石の残留物を抜いてもらった魔石くずになるわけだな。あれがライドルフ型発電方式になると……えーと……どこやったっけかな」


 あちこちを探し始め、付箋紙が貼ってある魔石を取り出す。


「あった、これがライドルフ型発電方式……略してライドルフ発電の場合に出てくる魔石くずになる。見比べてもらえればわかるが、ライドルフ発電のほうが魔石の中の黒くなった部分の中身が少なめに残っているだろう? そこが違い、というわけだ。そのため、ライドルフ発電のほうが経済的に効率的であることは言うまでもないが、問題がある。ライドルフ発電のほうは立地場所に容積が必要になる。発電施設の容積当たりの発電量がツィンタラバ発電に比べて少ないんだ。省スペースな場所に建設するならツィンタラバ発電、場所に余裕があるならばライドルフ発電、ということになっている」


 順番に回されてきた魔石を電気に照らして確認してみるが、たしかにツィンタラバ発電の物よりもライドルフ発電の魔石のほうが中身が少ない印象がある。実際に、同じ魔石を持ってはいるものの、どことなく重さも違うような気がするが、気のせいかもしれない。下手なことを言って恥をかかないようにここは黙っておくか。


「ちなみに、この二種類の魔石については、重さは同じなんだ、不思議なことにね。質量保存の法則から逸脱しているのは確かなのだが、でも確かにこの二種類の魔石はそれぞれエネルギー残量が違う。この質量保存の法則のねじれを解明するのも、また謎を解き明かす一端になるのかもしれない。ちなみに前回本条君が作ってくれた空っぽの魔石も同じく重さは同じだった。どうやら、”魔石くず”という状態になった場合、それ以上質量が変化しない、というのが不思議な所でね。ここがまた面白いポイントでもあるんだ」


「先生、未使用の魔石から比べた場合でも重量に変化はないのですか? それとも、未使用と一度でも発電作業を行ったものとでは差があるのですか? 」


 気になったので質問をしてみる。そこがポイントなのかもしれないしな。


「良い質問だ。そしてまず結論から言おう。未使用の魔石と、一瞬でも電力を取り出した魔石とは質量が変化している。つまり、はじめの一歩を踏み出すまでは魔石の重さは一定で、何らかの発電にかけた段階で一気に質量が下がる……下がると言っても明らかに手に持って違いが分かるほどではないが、それでも質量は低下して、その後空っぽになっても質量は一定になり続ける。ここが不思議の壁、ということになるわけだ」


 ホワイトボードのかなり低い位置に発電前、発電中、発電後、スキル使用、空っぽ、とそれぞれポイントをしていき、そこに見合った位置へ折れ線グラフを書き記していく。折れ線グラフの縦の目盛りは振ってはいないが、はっきり違うと言えるだけの質量変化はある、ということなのだろう。


「不思議な点は二つだ。発電前と発電中の、この境目で発生する質量の減少、そして、発電後とスキル使用時、空っぽの境目で本来なら発生するべき質量の減少が起きない、というこの二点。こいつは一体どういうことなんだ? というのが、謎を解くカギになっているのかもしれないな」


 ふむ……たしかに不思議な現象だな。質量が変化しないけどエネルギーとしてやり取りはできる……フォトンやグルーオンの類型である、という見方もできるな。


「ちなみに前回も言ったと思うが、そもそも魔石がエネルギーに変換できるというのも、事実上そうなっている現象観測だけであって、詳しい事実関係や科学的な作用が解明されている訳ではない。なので現状はそうなっているものについて、なぜそうなっているのかを解説できるようにしていくという研究も大いに結構だ。理論と科学的作用との間にまだまだ解明できていないダンジョンの不思議という奴がある。そもそも、スキルスクロールを手に持って覚えたい! と念じるだけでスキルを覚えて行使できる、という行動にすらまだ説明はつけられていないんだ。それらも含めて研究対象にして、ダンジョン関連のエネルギー体系として大きな説明理論を打ち立てる、というのも中々悪くないね」


 ふむ……スキルで行使するエネルギーも言われてみれば、魔力みたいなものがある、と言われているがこの魔力自体がエネルギーに変換されて電気になっているんだとすれば、人の力を介して発電を行う、という技術者の育成に進む未来もあるかもしれない訳か。


 専属の技術者……エネルギーボルトを撃ちこんで、無理矢理流入させた電力をライドルフ発電方式に組み込んで、発電量の底上げをする、なんてこともできそうではあるな。スキルや技術は探索者のものだけではない、という新しい方向性へのシフトが行われるかもしれないな。


「ともかく、現状ではこの二種類の発電方式については世界的に技術特許が公開されていて、どこの誰でも発電施設の建設や運用、発電を行えるようになっている。そこは世界で一斉に現れたダンジョンと魔石をエネルギーに変えることができ、地球環境にいい方向に向かわせることができるなら、というのと、ダンジョンだけ持ってても魔石があるだけで何もできないのでは意味がないし、世界的にこれを普及させることでエネルギー格差や発展途上国での汚染物質の発生を抑えることができるから……という理由らしい。中には自称発展途上国の先進国もあるが、そう言った場所でも同じように技術を扱えるように……ありていに言えば、技術と金と人手は貸すからこっちの発電方式に移行しろ、でないと大気汚染が広がって困る、といった風に圧をかけた形になるんだろうね」


 どこの国かはあえて伏せて言っているようだが、地学も世界史もやってきた俺には大体わかるような言い方を含んでいた。おそらく、かの国も自前でより効率的な発電システムを模索しているのは間違いないが、それまでのつなぎとしてタダで使えるのだったら使ってしまおうという腹積もりなのだろう。


「……というわけで、ゴールデンウィーク中の課題だ。各発電方式についてのメリットデメリットをまとめてレポートを提出すること。ついでにより効率的な発電方式があるのではないか? という話ならそれを添付すれば加点しておこう。それと、本条君はゆっくりできる場所の、ゆっくりの定義からそれに基づいたゆっくりできる場所の説明と解説、出来れば画像付きで頼む。私も気に入る場所かもしれないのでね」


 俺だけまとめる文章の中身が増えたことになったが、まあいいや。趣味の領域でレポートを書いて各評価を出せる所までちゃんとまとめられていればそれだけでも遅刻の減点は相殺されるだろうし、きっちり書いてまとめておくか。


「さて、次のコマの前に予習と、簡単にレポート内容をまとめておくか。とっとと移動しようぜ」


「うん、今ついてく」


 次の講義は彩花と同じものを取ったので移動も席もほぼ同じだ。予習をするか、ゼミのレポートの下書きをするか……両方やっておくのが良いだろうな。軽く下書きし、ゆっくりできる場所のそもそもの存在意義から、それが俺に与えてくれる影響力、そしてその具体的な構内スポット……うむ、良い文章が書けそうだ。しっかり作って、本文の発電方式のレポートよりも出来が良いものを提出してやろう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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