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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第212話:アホ毛修復の儀

 俺から袋を受け取っておにぎりを取り出すと、丁寧に剥き出して海苔を巻くと、パリッといい音をさせながらおにぎりにかじりつき始めた。そして、よくもぐもぐと咀嚼し、飲み込む。そして、ギュルルルル……と音を立てそうな勢いで、ご飯を黙々と食べ始めた。どうやら本当にギリギリの腹具合だったらしい。


 そこまで集中して研究を続けられるあたり、彩花とは相性が良さそうだな。二人して寝食を忘れて研究している姿が思い浮かぶ。俺も自分のカレーをとっとと食べ終えて、口直しのサラダに手を付け始める。春巻きは最後の楽しみに取っておくのだ。


 大泉先生の背筋がだんだん真っ直ぐになっていき、アホ毛も徐々にしおれて垂れ下がっていた場所から上へと伸び始めた。アホ毛の元気の良さでエネルギー残量が測定できそうだな、と思う。おにぎりを二個食べて、三個目に入って「すっぺー! 」と梅おにぎりに反応する頃には、アホ毛も元気に立ち上がり、いつものうざったそうな口調が帰ってきていた。


「だいぶ持ち直してきたかな? おーい、そろそろ大丈夫かー? 」


 アホ毛をチロチロといじりながら大泉先生の調子を観察する。


「本条君、そっちは私ではない。そのもうちょっと下に美しいものが付いているだろう? そっちに話しかけたまえ。それで、ご飯はいくらだったね? レシートをちゃんと分けて置いてくれると家計簿が付けやすいのでありがたいのだが」


「そう思って、あらかじめ別にしておきました。こちら領収書兼請求書となっております」


 あらかじめ分割しておいたレシートを渡すと、値段を見て、財布から小銭を取り出し俺に渡してきた。


「うむ……今回はお世話になった。ウーバー料金も込めてこのぐらい払っておこう」


 百数十円余分に払ってくれた。釣りはいらないにしても少々ケチ気味だが、自分の弁当のついでに買ってきてお小遣いが増えるならまあいいか。


「にしても、本条君はどうしてこんな所へ? 今日はみんな休日だろうから誰もいないし開いてるのは医学部の自習室ぐらいだと思うんだが」


「それはお互い様ですが……まあ、時間があるうちに大学内を徘徊して心地よさそうな休憩スペースを探してみようかと思いまして」


 コーヒーを飲みながら胃も落ち着き、サラダを食べながら何をしていたかを説明する。ふむふむ……とおにぎりをモニュモニュと食べながら俺の説明を一通り聞き終わると、ちゃんと口の中身を飲みこんだ後で話をし始めた。


「ふむ……確かに、トイレの中以外で落ち着けるスペースを作るのは大事だな。私もお気に入りのスペースがあってね。時々そこへ行っては日光浴だったりリフレッシュをしながら研究休みを得るのが好きなんだよ。もしも機会があったら君にも場所の紹介をしよう。共に気にいってくれると嬉しいところだ」


 いい年した女性が落ち着いた場所でリフレッシュ……となると結婚できない女性がやってそうなパワースポット巡りのようなイメージがある。この人もそういうのに興味があるんだと思うと少々面白みがあるな。自腹で買ってきたペットボトルのコーヒーを飲んで、昼食を終わらせる。ふぅ、ご馳走様。たまにはコンビニ飯で贅沢するのも悪くないな。


「ねえ幹也。この人が合法ロリって先生なの? 確かに私といい勝負か、もしくは私のほうが勝ってるように見えるんだけど」


『そういうことになっている。ちっこいだろう? でも頭の中身は確実に教える側の人間として適切なだけの物量と質は担保されていると思うぞ』


「ふうん。なかなか面白そうな先生じゃない。これも私のお導きかもしれないわね」


 大泉先生を目の前にして誰かと話すような独り言を言い続けるわけにはいかないので、頭の中を勝手に読み取ってもらう形の会話にする。


「本条君は午後も散策の予定かね? もしよければ……なんだが、他の場所から荷物を運んで来る仕事があってね。私一人で往復すると時間がかかるから、手伝ってほしいんだけど何とかなったりしないかな? 」


「手伝いですか、どうせ暇ですし良いですよ」


「それは助かるねえ。私はこの通り小柄だから一回で運べる荷物にも限界があってね。その点本条君はまともな体格をしているから活躍に期待しているよ。あっはっは」


 腹が満たされてテンションも戻ってきたのか、研究室内がにぎやかになり始めた。気が付けば、大泉先生のアホ毛もピンと張りを取り戻し、良い感じにビヨンビヨンと動いている。


「これ便利ですね。こいつを眺めてれば大体大泉先生のテンションが分かります」


 軽く引っ張っては手を離し、アホ毛は元の位置に戻って元気よさを取り戻している。


「引っこ抜いたら私の電源が落ちるからな。気を付けてくれたまえよ」


「ええ、注意しておきます」


 アホ毛で遊んだ後、食休みを終えて大泉先生の話通り、荷物の運搬を手伝う。確かにこの量は一人ではちょっと難しいだろうな。一人で往復させるだけ時間の無駄だ。その分俺が手伝って研究に力を注いでもらった方が合理的である。


「じゃあ、残りは俺が全部やっておくので先生は自分の研究でもやっておいてください。同じようにするなら問題はないはずですから」


「そうかい? なんだか悪いね、百数十円でこき使うような形になってしまって」


「まあ、暇つぶしにはちょうどいいですからね。何か仕事をやってるほうが気が紛れますし、丁度暇を持て余しているところなんです。今日はダンジョンを潜るでも付近を探検するでもなく、何もする気が起きなかったので」


「ああ、そういう日はたまにあるが、そういう時こそ勉強や研究に熱中すると思わぬ効果を生んだりするものだぞ。暇があるうちにやっておくべきことは済ませておくほうがいいのだが、今から家に帰して自主学習とやらせるのも効率が悪いだろうからな。さて……じゃあ、あとはこれとこれを頼むよ。三往復ぐらいすれば終わるだろうから、そうしたらまたお礼にコーヒーでも出そうじゃないか」


 テキストではないが、コピー紙や参考書、それから市販されている本など、色々なものが段ボール箱に詰め込まれている物を引き取っては、大泉ゼミに運んでいく。搬出元には、先生は自分の研究に没頭し始めたので代わりに取りに来ました、と伝えると受け渡しを了承してくれた。


 どうやら大泉先生の研究熱心ぶり……というのはオブラートに包んだ表現だが、実際は今日までに引き取りに来なかったら破棄する寸前だったらしいこの荷物、ずぼらな所はずぼらなんだな、と納得しながら数回往復して荷物を運び終わった。もちろん、アカネは触れないので俺の横にふよふよと浮いたままついてきている。


「やっぱり、学者というか研究者ってどこか抜けてるところがあるのかしらね。それとも、そこに対する力を研究に使ってるのかしら。どちらにせよ、そこそこ優秀なことは間違いなさそうね」


『そこはまあ、否定する要素は今のところないな。確かに優秀だし頭もよく回る。ポンコツっぽいのが玉に瑕、というところか。さすがにお腹空いて動けなくなるのは問題だろうが……まあ、生徒に世話を押し付けるではないが、休日だからって気を抜けないのは確かだな。今後はその辺で倒れていてもいいようにゼリー飲料でも持ち歩いておくべきか? 』


「まあ、そこはどこまで幹也があの先生に責任を持つかでしょうね。彩花が嫉妬しない程度に世話してあげると良いわ。なんなら、彩花と二人で子守りの練習にでも使っておくと良いわよ」


 子ども扱いとはひどい話だ。だが……まあ、何となく言いたいことはわかる。しかし、自分の上司を子ども扱いするのもなんだか非常に失礼だとは思うんだが。


 三往復、全ての荷物を運び終えて、大泉ゼミに戻ってくる。ゼミでは早速書類を見比べ、それぞれから何らかの情報を吸い上げて頭の中で考え、その内容をパソコンに書き写している大泉先生の姿があった。どうやら完全に再起動したらしい。


「荷物の移動終わりましたよ」


 そっと邪魔にならないように、声を通すだけ、と言った声量で話しかける。


「おー、ありがとう。おかげで研究の手が少しばかり早く進んだよ。それと、ナンパもついでにしてきたようで結構だね。なかなかかわいい子だが、私と同じかちょっと上ぐらいの子ってところか。未成年趣味はあまりお勧めできる趣味ではないねえ。大学案内というならわかるけど、手を出しちゃだめだぞ? 私以外だと基本捕まるからな」


 んんん? 何の話だ?


「先生、何の話です? 」


「何の話と言っても、君の隣でふよふよと浮いてる……浮いてる!? 」


 大泉先生の二度見芸を見せてもらった後、俺がコンビニで買ってきていたコーヒーの残量を確認すると、空っぽになっていた。さては、入れ直すのが面倒だからと俺のから飲んだな。


『先生、疲れてるんですよ。で誤魔化そうと思うけどそれでどうだろう? 』


『今の所そのほうが良さそうね。私も話しかけずに頭の中へ直接言葉を流し込むことにするわ』


「先生、何のことを言ってるかさっぱりわからないのですが……大丈夫ですか? 朝から研究しすぎてお疲れなのでは? 」


「君には見えないのかい? その白いワンピースの髪の長い、中学生……私ぐらいの女の子が空中に浮いているぞ。ここに……あれ、触れない。でも見える。ゆっくり近づくと……この子何も履いてないぞ! 」


 アカネはノーパン派だったのか……今まで気にしたこともなかったな。ということはブラも当然してないんだろうな。


『まだ必要なほど大きくないからいいのよ。もっと育って必要な感じになったら、彩花に相談してそれっぽいものを身に付けて見せるわ。それまではまあいいわね。生理も来ないし、履いているだけの理由がないし、涼しくてわりと良いわよ、ノーパン』


「先生……」


「こら、可哀想なものを見るような目で私を見るな。私には確かに見えているんだ。ここに美少女がいると! しかも将来有望そうだぞ。もしかしたら結城君より美人になる可能性すら内包しているぞ。そんな美少女が見たくはないのかね? 」


「見たい見たくないで言えば見たいですが、その現物が見えないのでは……どこにどういう感じで居るんですか? 」


 大泉先生が身振り手振りで見えているアカネの姿や大きさ、髪形や服装などを説明してくれている。見えてる物を見えないふりをして説明させるってなかなか高度なプレイだな、とは思うが。しかし、ここでネタばらし、とやっても本人は納得しないだろうから、次回また見えるようになるまで取っておくことにするか。

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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
天然物かぁ、、、意思疎通が出来たら研究が捗りそうではあるよね!まぁ全力で誤魔化してるけど
なぜ見える? 天然?、間接キスした?
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