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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第190話:ピリピリ

 学校が始まった。しかし、新年明けで皆ピリピリしている。推薦合格で進学先が決まっている奴の中には、空気を読まずにへらへら遊び回ってその楽しみっぷりを撒き散らしては、周りから冷たい目線を送られている者もいるが、ほとんどの学生は学校が始まっても授業よりも自分の復習をしたい、と考える生徒のほうが多いらしい。


 授業のほうもそれに合わせたもので、テスト範囲を一通り教えた後で、テストの点よりも受験のほうが大事だろう、ということで三学期のテストはやるけどテスト範囲は各自で勉強しておいてくれ、と放置プレイをし、完全に自習時間として時間を提供してくれる、よくできた教師もいた。


 教師としても、授業なんか真面目に受けさせるから共通テストで良い点が取れなかったとか、二次試験でうまくいかなかった、と言われるのは不本意なのだろう。自己ベストを尽くせ、という名目での放置プレイを受けたことになる。


 こっちとしては自分のペースで勉強ができるのでありがたいところではあるが、本来学ぶべきコマ数の授業内容も共通テストや二次試験の範囲に入る可能性もあるので、教科によっては逆に不満点として上がる可能性がある。


 が、それを見越してなのか、教師自身も小説を片手に教室に残留しており、生徒からの質問にはいつでも答えられるようにしている、という形にしている場合もあった。ちゃんと仕事をする意思はあったんだな。あと、教師もラノベ読むんだな。背表紙でわかるライトノベルのレーベルに少しだけ、近しさを感じた。


 まあ、せっかくの勉強時間だし、学校でそれを優先して取らせてくれるなら……と、集中して学ばせてもらうことにする。共通テストの勉強用にと持ってこさせてもらったタブレットに問題文を表示させながらすらすらと……とまでは行かないが、そこそこに解いていく。


 教師も、遊んでいる訳ではなくまじめに勉強しているのを横まで確認しに来て、納得すると何も言わずに教卓に戻っていった。他の奴も俺がタブレットを開きながら勉強しているのを横目に見て、少しばかりの視線を感じるが、教師が何も言わなかったので問題ないんだな、と納得したところなのだろう、視線の集中が消えたような気がする。


 それだけクラス内もピリピリしている。推薦組もそれが分かっているのか、自習とはいえ何もやることがないからどうしようか……という話をしているか、授業時間一杯まで勉強をしているふりをすることに全神経を集中させながら自習時間をしのいでいるようだ。多分、普通に授業をしてくれた方が彼らにとってはありがたいんだろうな。


 悪いが、共通テストまで気を抜ける暇はそんなにないのだ。タブレットもそうだが、こうやっていろんな人にお世話になっている以上、おかげでいい結果を残すことが出来ました、ありがとうございます。とやるのが人道というものではないだろうか。


 俺が真剣に勉強しているのを見て、学年2位でもアレだけ勉強してるんだから、俺たちも真面目にやらないとな……と、また違った緊張感を与えることにも成功しているらしい。教師からは後で感謝されそうだな。俺は俺のペースで勉強をするので周りも自分のペースで勉強をすればいいと思うよ、うん。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 昼休みになったが、流石に外は寒い。教室で暖まりながらいつもの昼食を取っていると、隆介が自分の両肩を抱きながらパン片手にこっちへやってきた。


「おーさみぃ。購買にもエアコンが欲しい時期になってきたな。まあ、教室にエアコン入ってるだけまだマシってところだが、な」


「エアコンがない時代はストーブを教室に用意してたらしいしな。ストーブから遠い席はさぞ寒かろうて。で、そっちのほうは出来高はどうなんだ? 」


「ま、ぼちぼちってところだな。過去問も9割近くは取れてるし、順調そのものだ。で、幹也様はどうなんだ? 10割行けそうか? 」


「9割5分ってところだな。リーディングがかなり怪しいが、それ以外はなんとかなる、というのが現状っぽいな。実際にやってみないといけないところだからそこさえ乗り越えられれば……というところだ。ただひたすら過去問を解くだけなら問題ないだろう。やっぱり何が来るかわからない部分は怖いなと思ってるところだ」


 今日はパスタではなく米とお好み焼きの炭水化物がメインの食事だ。頭をしっかり使うのだし、お好み焼きの具材もしっかり色々入れたので、栄養バランス的にも問題ない。ちゃんと取ってるからな。


「で、冬休みはどうだったんだ? バッチリ勉強してたのか。それとも結城とゆっくり愛を確かめ合ったのか。色々進展があれば聞きたいところだな、俺としては」


「そういう意味での進展はないな。人に話せる範囲でも話せない範囲でも」


「そうか。ゴシップの類の意味で聞くつもりではあったが、そっちの方でもあまりなしってところか」


「ゴシップの類でも真面目な話でも、今のところはな。受験が終わるまではお互い我慢の時期だと、しっかり溜めこんでいる最中だ。爆発する前に受験が終わってくれることを願うだけだな」


「それは我慢強いことで。まあ、ここで暴発して失敗して、しかも子供まで出来ましたーなんて最悪のシナリオを繰り広げない限りは問題ないだろう。数年に一度はいるらしいからな、そういう冬眠に失敗した熊みたいなカップルは」


 数年に一度はいるのか……確率的には高いのか低いのかわからんが、その中の一つにならなさそうなのは安全だな。とりあえず、今日までは我慢できている。共通テストが終わってその後一服せずにそのまま二次試験対策に乗り切れるのかどうか、というところだろう。ここで一息つき過ぎると失敗しやすいらしいからな。合格までは息切れしないよう走り抜けるマラソンみたいなものだ。


「隆介のほうこそどうなんだ。順調に進んでるのか? 」


「こっちはこっちで順調だ。勉強も教えてるし、同じ大学に行けるよう努力はしているつもりだ。彼女がよほどサボったりしない限りは問題ないだろう」


 あっちはあっちで順調らしい。なら、それ以上踏み込んでおくべきじゃないな。どこの誰とも教えてもらってないのだし、よほど隠したい事情か、俺にいじられるのが嫌な相手なのか、それともよほどシャイな……って、あのカラオケの時にいたはずだよな。そんな内気っぽい子いたっけな。うーん……だめだ、流石に思い出せないや。


「まあ、お互い問題ないならそれでいいや。俺はそっちの付き合いに口を出さんし、こっちも出されるつもりもないからな。そういう楽しみでワイワイするならせめて入試が一段落してからだな。周りへの影響もあるし、おおよそが自分の受験を終えてそれからだな」


「気持ちはわからんでもない。自分がストレスで胃を痛めてる間に隣で遊ばれるのは好きにはなれないからな。受験が終わったとしてもしばらくは大人しくしているさ。後一ヶ月そこらだ、ここまで積み上げてきた色々を一気にぶちかますまで後三週間。しっかりやろうぜ」


「うむ、まずは気軽に共通テストの点数勝負でもしたいところだが、同じ科目を受けるわけじゃないからな。そこは似たような科目で勝負、ということもできなくはないが、課目によっては大きく平均点が変わってくるからな。今回はなしにしておこう」


 お互い変な所で張り合うのはなし、ということになった。そっちに気が散ってしまって点数が取れないのも問題だからな。


「しかし……お好み焼きを弁当で持ってくるようになったのは、それも結城の影響とみていいのかな? 普段なら塩パスタか相変わらずのパスタ攻めだとは思うんだが」


「その辺も言い含められているという自覚はある。パスタばかり食ってて体調崩すのも受験生としてはよろしくないからな。ほんの少しの勉強時間を削るだけでまとめて食事を作るだけでも効果はある、ってことが分かったからな。ちなみに夕食もこれの予定だ」


 お好み焼きをつつきながら話す。そういえば、お好み焼き屋で二人で飯を食いつつなんでもない話をし合ったこともあったなあ。


「そういえば、お前は地元を離れるのか? 」


「その予定だ。彼女と二人でしばらく様子見する、ということになってる。うまくいけばそのまま同棲だな」


「手が早くて何よりだ。散々言われた内容は、むしろお前のほうが心配になってくるよ」


「そっちの心配はしなくていいぞ。その辺はちゃんとしてるからな。その証拠に今日まで何もなかっただろう? 」


 そういえばそうだな。そういう意味では安心感のある男でもある。失敗はしない、ということらしい。


「さて……飯も食ったし勉強の続きでもするか。じゃあ、また今度な。暇になったら遊んでやるからまたおいで」


「へいへい。次の昼飯にでもまた来るわ」


 隆介を追い出したところで早速共通テストの過去問の早解きにチャレンジする。次の授業までに何問答えられるか。試験にはスピードも必要だからな。こういう微妙な時間を使って早解きにチャレンジするのも悪くないだろう。


 さすがに解答を丸暗記するような勢いで解きはするものの、実際に暗記はしていないので判断と勘、そして計算速度が要求される数学なんかは早解きにはちょうどいい科目になる。


 次の授業はキッチリ授業内容を展開し、推薦入試で合格を早々と決めて、暇をしている学生にもしっかりと授業内容を仕込ませるべく行っているが、ほとんどの学生は自習によって既に授業内容を頭に入れているのでおさらいみたいなものだ。俺もその中の一人ではある。


 本来なら共通テストに出る範囲だけでも良かったんだろうが、ついでに頭に放り込んでおいたので、そのまま二次試験にも使えるように脳みその引き出しにしっかり仕舞っていつでも取り出せるようにしてある。


 しかし、授業中とはいえまだ全員がピリピリしている。この緊張感が共通テスト明けから各大学の二次試験が終わるまで続くことを考えると、まわりも自分もちゃんと胃が持つのか不安ではあるが、毎年それを見送り続けている教師側も似たような胃痛に襲われていることを考えると、一回で終わるだけまだこっちのほうがマシだな、という気分にもなる。なかなか難しいところだな、送るほうも送られる方も。

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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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