96 アコカンテラの話
翌日、僕たちはズッキーニにアコカンテラをおぶらせ、出発することにした。
アコカンテラの痩せた身体にズッキーニの鎧のトゲが食い込んで痛そうだったが、アコカンテラの歪んだ笑顔を見るに、まんざらでもなさそうなので、放っておくことにした。
村長はシダーと、付添いの女性の治癒師を同行させた。
僕とズッキーニで世話するのは大変だと村長は言っていたが、村が見えなくなった途端にアコカンテラを肉片に変えるのではないかと、疑っているようだった。
道中はとても平和だった。
森の民の土地を通り、角猿の土地を通る。
何かが起こるはずがない。
おまけに、こちらにはズッキーニがいる。
寄って来てほしい獣でさえ、逃げていく。
困ったことといえば、元気を取り戻したアコカンテラが、非常におしゃべりだったということだ。
聞いてもいないのに、いかに呪いを使って後悔しているかを、延々としゃべり続けた。
「呪いを使ったのは、もちろん初めてだったんだよ。
知性の高い私の部族には呪いがあり、少ないが使い方を知っているものもいる。
だが、呪いの話には、呪いは絶対使うなという話が、対になっている。
私には意味がわからない。
呪いを作ったが、使うなと言う。
だが、身にしみてわかったよ。
呪いは絶対に使ってはならない。
その苦しみたるや、君たち呪いを扱えない人族には想像もできないだろうね。
他人を恨んで呪っては、絶対にいけないという戒めのために、我らの賢明なるご先祖様が作ったのだろうね。
それだけ、我ら黒き森の民は魔力が強く、力があったということだろう。
そんな圧倒的強者が、他人を恨んではいけないという戒めさ。
使ってみるまで、それに気が付かないなんて、私は本当に愚かだったよ。」
こんな鼻に付く話を17回くらい、聞かされた。
アコカンテラが、年寄りのくせに女好きなことにも辟易した。
付き添いの治癒師の女性が、いかに素晴らしいか、本人にも僕にも語り続けた。
「君は本当に現世に舞い降りた天使のようだね。
こんな私の治療を誠心誠意してくれるなんて。
本当に感謝の言葉もないよ。
きっと、生まれつき心根が、野に咲くスミレの花のように、美しいんだろうね。
君のように心も容姿も美しい人が、独り身なんて、私には本当に信じられないよ。
世の男達は、目をちゃんと開いて生きているのだろうか。
私が、こんなんじゃなかったら、絶対に放っておかないのに。」
こんな話を挨拶代わりに、細かくアレンジを変えて、数え切れないくらい聞かされた。
僕は、元気にしすぎたのではないかと、後悔していた。
少し、精気を抜いたほうがよいのではないかとも、考えたくらいだ。
でも、おかげでドコン村にはすぐに着いた。




