97 呪いの最後
ドコン村では、例のごとく猟師たちの出迎えがあった。
じいちゃんを頼らなくても、大きな気配が近づくとわかるようになったようだ。
僕は、挨拶もそうそうに、ばあちゃんのもとに急いだ。
みんなも、わかっているようで、だまってうなずいてくれた。
ズッキーニの背中でしゃべり続けているアコカンテラを、怪訝な目で眺めながら、みんなが着いてくる。
プラムを見たアコカンテラの、
「こんなところに妖精さんがいるなんて…」
というくだりが、後ろから聞こえていた。
ミカンさんの家に入り、ばあちゃんの寝台に近づくと、僕は警戒した。
万が一にも、この頭の中に悪い虫を飼っているような魔道士に、変な動きをさせてはいけない。
アコカンテラは、ズッキーニの背中からばあちゃんの寝台を見下ろすと、滂沱の涙を流しはじめた。
「とっても謝りたいけど、先に呪いを解かなきゃね。」
アコカンテラは、初めて強力な魔道士と呼ばれていた顔にもどり、両手のひらを見つめ、何事か呟いた。
両手のひらの中に、青黒く不吉な光が凝縮し、それは、ばあちゃんの中に向かって吸い込まれていった。
僕は、その光の不吉な気配に警戒したが、ばあちゃんの中の精気の流れを邪魔していた塊とぶつかり、霧散した。
同時に、アコカンテラの中でも何かが霧散した。
ズッキーニの背中のおしゃべりな老人は、老人ではなくなっていた。
くたびれた30代の、極端にやせた男になっていた。
寝台を見て驚いた。
僕のばあちゃんは、ばあちゃんではなくなっていた。
やはり、30代の、くたびれたおねえさんになっていた。
アコカンテラはズッキーニの背中から下りると、ばあちゃんの寝台にすがりつき、泣きじゃくりながら謝り続けていた。
ばあちゃんは、嫌悪感を隠そうともせず、露骨に身体をアコカンテラから遠ざけていた。
その後、アコカンテラはズッキーニに荷物のように担がれ、僕の小屋に連れて行かれた。
ズッキーニはその後、自分の家に戻り、自分のじいちゃんとばあちゃんと過ごしていた。
僕は、アコカンテラを放っておくわけにもいかず、僕の小屋でいっしょに過ごした。
アコカンテラは、僕の寝台でいぎたなく眠りこけていた。
泣きつかれたのだろう。
魔法の魅力に取り憑かれたどうしようもない男だけど、ばあちゃんが前に言っていたとおり、もともとは悪人ではないのかもしれない。
僕は、アコカンテラを起こさないように、そっと外に出た。
草の上に横になった。
外は、満点の星空だった。
僕は、心から安心していた。
くつろいだ気持ちになった。
ばあちゃんの身体の心配は、もうなさそうだ。
これから、僕は知りたいことを知るための、旅に出る。
僕は、どこから落ちて来たのだろう。
そこまで上がる方法はあるのだろうか。
シャツで隠れているが、僕の皮膚には何箇所か鱗が出ている。
ウホウホの3本角を褒めたときに、僕の鱗の方がかっこいいと言ってくれた。
落ちた場所まで上れたら、鱗の正体もわかるかもしれない。
いや、そんなことは、今はいい。
この島の外はどうなっているんだ?
この島の中心の、高い山脈の向こう側は?
僕は、何にも知らない赤ちゃんみたいだ。
とにかく、歩き廻って、いろいろ見てやろう。
そんなことを考えながら、僕は気持ちのよい眠りに落ちた。
第一部完結 あとがき
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
2件のブックマーク、2件の評価をしてくださった方、本当にありがとうございました。
あなた方を励みに、第一部を完結することができました。
しかし、とりあえずこのお話は、ここで終わりとさせていただきます。
需要のほぼないお話を書き続けるほど、私は自分に酔えませんし、メンタルも強くないので…。
私は、もともと小説は読むのですが、それほど熱心なラノベ読者ではありませんでした。
カジュアルな表現、スピーディーな展開、わかりやすい話。
小難しい小説は苦手な私も、ラノベからは大きな可能性を感じさせられ、ワクワクしていました。
しかし、延々と続く、同じような題材、同じような価値観、同じような展開になじめず、あまり読まなくなってしまいました。
この物語の説明にある通り、
無双なし、ハーレムなし、ざまあなし、こっちの世界の便利アイテム作って一獲千金なし、貴族なし、学園なし
な、ラノベを読みたかったので探したのですが、ほとんど見つけられません。
(探し方が下手なのかもしれませんが…)
「それなら、いっちょ、オレが書いてやろう!」
と、イキってみたのですが、玉砕しました…。
たいしたアイデアを持っていたわけでもなく、魅力的なキャラクターを生み出す力量もありませんでした。
それが、確認できただけでも収穫とします。
また、目標の10万字までは届きませんでしたが、私にも継続することができるのだということがわかったのは、大きな喜びです。
これだけ打ちのめされても、前記の方針が間違っているとは思っていないので、懲りずに似たようなものを、また書ければと思っております。
ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。




