93 森の民の村長
僕らは森の民の村についた。
その頃には、20人ほどの森の民がそれぞれに持論を展開しながら、いっしょに歩いていた。
潜んでいた森の民は、アコカンテラの名前が聞こえると、リーダーの許可も得ずに、好奇心で集まってきたようだ。
本当に森の民は、人間嫌いで、何を考えているかわからない種族なのだろうか?
とってもわかりやすい気がする。
森の民の村は、地形的に小山に囲まれ、入り口も濃い木々でわかりにくくなっていた。
強い隠蔽の気術もかけられており、村の存在感はまったくない。
リーダーが門番と言葉をかわし、僕とズッキーニも村の中に案内された。
村の中は、森の延長のように緑が多かったが、道に最低限の石を敷くなど整備がいき届いていて、とても清潔だった。
家の外に出ている住民は多くはなかったが、興味深そうに僕らを見ていた。
村長の家は、木材で簡素に作られた、高床式の大きめの家だった。
僕たちは、客間に案内された。
少し待たされたあと、広間に通された。
広間の奥には、かなり高齢だと思われる小さな老人が、静かに待っていた。
その後ろには、かなりの実力者と感じさせる、大柄で筋骨隆々の、髪の短い初老の男性が、補佐として控えている。
「ゴロゴロさん、村長のパンドと申します。
大体の話は、あなた方を出迎えたシダーに聞きました。」
村長は、静かだが力のある声で、話し始めた。
「あなたは、手っ取り早く、アコカンテラの命の火を消してしまいたいことでしょう。
早くて確実に、お祖母様の命を救えると考えているのではないですかな。
シダーは、いざとなれば数にものをいわせ、あなた方を取り押さえるつもりだったようです。
まだまだ、未熟な男です。
彼我の力の差もはかれない。
でも、私は彼を避難する気にはなれません。
なぜなら、シダーがここに案内しなくても、あなた方はすべての障害を排除し、自分の力でアコカンテラまでたどり着く力を持っていなさる。
私どもがあなた方に抵抗し、無駄に時間をとらせれば、お祖母様の助かる可能性は下がり、あなたの怒りを買う可能性は上がる。
私は将来に黒き森の民との間に遺恨を残すことよりも、今、あなた方に村を滅ぼされることを、どうあっても避けねばなりません。」
村長は話をくぎり、苦しそうに頭を下げた。
僕は驚愕していた。
僕らのどこが、そんなに物騒に見えたのだろう。
僕はズッキーニを睨んだが、ズッキーニは壁の一点を興味なさそうに見ていた。
「あの、村長さん。
そんなに警戒しないでください。
みんなで、一番いい方法を考えましょう。」
僕は、とりあえず、村長をなだめた。
「アコカンテラをばあちゃんに会わせれば、呪いは解けるということですか?
アコカンテラには、呪いを解く気があるということですか?」
僕は、確認した。
「そのへんのことは、本人に聞いてもらうのが一番いいでしょう。
ただ…。」
村長は躊躇したが、真剣な目で懇願するように言った。
「アコカンテラに会っても、怒りに任せて彼を肉片に変えたりしないでいただきたいのです。
黒き森の民がどうとかではなく、私は客人への礼節を守りたい。
どうか、寛大なお心で…。」
僕はズッキーニを睨んだが、興味ないくせに、やはり壁の一点を見ていた。




