84 ズッキーニの過去
「ズッキーニは、ワシが拾ってきたんじゃ。」
じいちゃんは、昔を懐かしむような目で、話し始めた。
「20年近く前の話じゃ。
ワシはまだまだ若くて、血気盛んじゃった。
自分を強いと思い込んで、どこにでも行っておったんじゃ。
その時は、森のずっと奥の、山脈の手前まで行っておった。
山脈の手前に、巨人族の村がある。
ヤツらはとても好戦的で、ワシら人族との交流はなかった。
ヤツらは、牙熊の生息地よりずっと奥で生活しているだけあって、牙熊よりもずっと強いらしい。
そんなヤツらをひと目見てみたくて、ワシはノコノコとそんな危険な土地まで出かけていった。
まあ、ワシは気配を消すのは得意じゃったし、足も速かった。
それほどの困難もなく、巨人族の村までたどり着けた。
ヤツらは強いだけあって、それほど警戒していなかったから、村をのぞくことはできた。
身体が3、4メートルはあるから、何もかもデカいが、生活自体はワシらと変わりはない。
凄まじかったのは、その狩りじゃ。
なんせ、食う量が多いから、デカい獲物ばかりをねらう。
人族が逃げ出すような、大イノシシや牙熊は当たり前。
ワシらが出くわしたら、死を覚悟するような、六足鹿や鱗豹なんかの超大型獣にも、斧を片手に飛びかかっていく。
それは、言葉では言い表せない衝撃じゃった。
見つかる前に逃げようと考えていたところ、一人の巨人が包みを持って村から出てきた。
巨人は裏山の台座のようなところにそれを置いて、頭を下げて手を合わせ、少し経つと帰っていった。
ワシは、巨人が完全に見えなくなってから、包みに近づいた。
包みは巨人の赤子じゃった。
これはワシの想像じゃが、生まれついて角のない者は出来損ないで、口減らしされたのじゃなかろうか。
それが、ズッキーニじゃ。
実際、赤子であるズッキーニには角がなく、巨人としては小さかった。
ワシはいたたまれなくなって、連れて帰った。
村には子どものいない、気のやさしい夫婦がおったので、あずけて育ててもらった。
その後も、時々ようすは見ておった。
お前が旅に出る前から、ヤツが剣を振り始めたのは知っておる。
朝、畑仕事を始める前も、昼に飯を食ったあとも、夜、仕事を終えたあとも、ひたすら剣を振り続けていると、親代わりのばあさんから聞いておった。
ワシは剣は専門外じゃが、使えんわけじゃない。
ワシが弓を教えている子らと、いっしょにやらんかと誘ったが、自分の師匠にはゴロゴロがいるから大丈夫だとぬかしよった。
えらく、おまえになついておるな。
それから、二年が経つ。
たった一人で剣を振り続けるだけで、どれだけの力がつくかと侮っていたワシが、浅はかじゃった。
いまのヤツを、見てやってくれ。
そして、ものになると思ったら、連れて行ってやってくれ。
ズッキーニもお前と同じく、この村におさまっている器じゃない。」




