72 妖しいカバン
また、多くの時間が過ぎていった。
地図は、10本くらいの試していないルートを残して、すべてうまった。
大穴の周辺に、細かい糸のような模様が、大穴の数十倍の面積で描かれている。
ここのところの変化は、いろいろな鉱石の輝く広い空間に、何か所もたどり着いたことだ。
最初は、ウホウホに連れて行ってもらった洞窟か!と、喜んだが、どうも様子が違う。
考えてみると、ウホウホに連れて行ってもらった洞窟は、青が多い夜空のような美しい鉱石の空間だった。
僕らがたどり着いた鉱石の空間は、どこも違う色の空間だった。
それでも、そのどれをとっても、うっとり見とれるほど美しい空間だった。
僕は、鉱石の空間を見つけるたびに、下からニョッキリ生えてる鉱石をポキンと折って、お土産にとカバンに入れた。
そう、変化といえば、冷静に考えるとおかしなことに、気がついた。
僕は、冒険者の亡骸に出会うたび、使えそうなものを片っ端からカバンに入れた。
着るものは、大きさの合う服や防具を自分で着て、ばあちゃんに作ってもらった服や胸あてなんかは、カバンに入れた。
武器も入れたし、道具も入れた。
獣を倒すと、食べきれなかった肉も、焼いて入れた。
キノコやシダのような、食べられそうな植物も、採って入れた。
水も、水袋を見つけるたびに満たして、カバンに入れた。
「いったい、どれだけの物が入っているんだ?」
カバンを開けてみると、普通のカバンだ。
中は普通の広さ。
何かを出そうとすると、違和感なく取り出せる。
そういえば、ばあちゃんからもらった当時は、なんでもない小汚いカバンだと思っていたが、今では強い精気をまとった妖しいカバンだと思っている。
普通ではないことが、普通に感じさせられていたのも、このカバンの力じゃないかと疑っている。
ある日、目を覚ますと、僕のわきに毛玉のような生き物がいる。
敵意はないが、強い力を感じる。
なんか、よく知ってる妖しい力だ。
すぐに、理解する。
「あ、ばあちゃんのカバンだ。」
『キミは、ワタシの力が見えるらしいね。たいしたもんだ。そこそこの賢者でもわからないような、強い障壁をかけているんだけどね。でも、誰にも言わないほうがいいよ。ワタシはいつの世も混乱の元凶だからね。』
毛玉は、皮肉な笑い方をした。
「あんたは、誰?」
『それは、言わないほうがいいだろうね。そのうちにわかるかもしれないし、ずっとわからないかもしれない。まぁ、ハナがキミに託したということは、キミのことを信頼しているのだろうね。なにごともなければ、ワタシはキミの役に立ち続けるだろうよ?』
「そうか…。わかった。」
もういちど、目が覚めた。
毛玉はもうおらず、ただの小汚いカバンがそこにあった。




