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丈夫なだけが、取り柄です…  作者: かたこり
1章 始まり - 森の中
70/97

70 迷路

洞窟は広くなり、歩きやすくなった。

歩きやすくなったが、それだけのことだった。

長時間歩いた洞窟が、突然行き止まりになっている。

また、長時間かけて戻り、違うルートを選ぶ。

地図のおかげで同じところを歩くことはなかったが、洞窟の分岐は無限と思われるほど、たくさんあった。

途中で遭遇する大コウモリや大ネズミなどの生き物は、虫にくらべれば戦いやすく、食料には困らなかった。

壁から水が染み出しているところも多く、水にも困らなかった。

ただ、時間が過ぎていった。

何度眠ったかはわからない。

陽が昇らないので、眠った回数が過ぎた日数かどうかもわからない。


時間だけは、たくさんあった。

僕とウホウホは、たくさんの話をした。

角猿は、人間と変わらないほどの、知性を持っていた。

喉の違いか、言葉は人間ほどわかりやすく発音できなかった。

それでも、話をするたびに言葉の細かい意味合いも、通じるようになってきた。

ウホウホにも、幼い時の記憶の中に両親がいた。

大きな群れの中で、にぎやかに暮らしていた。

その両親が、1匹ずついなくなった。

獣にやられたのか、人間にやられたのか、わからない。

自分1匹になったとき、群れの長老が面倒を見てくれた。

その長老も、なくなった。

その後の群れは、あまりウホウホに親切ではなかった。

ウホウホは、群れを出た。

最初は大変だったが、すぐにエサをとれるようになった。

ウホウホは陽気で、他の猿と近づきたかった。

何匹かの猿、いくつかの群れに近づいたが、拒まれた。

それでも、ウホウホの陽気さは、めげることがなかった。

僕に興味を持ち、果物を投げてくれた。

『ゴロゴロのおかげで、ぼくはまだいきてる! あのとき、くだものをなげておいて、よかったよ!』

ウホウホは笑う。

『僕の方こそ!』

僕も笑う。

『こんな、暗いところ、一人で長い時間歩いていたら、寂しくて死んじゃうよ。』

ウホウホは、怖がりで寒がりだけど、いつも楽しそうだ。

僕も、寂しさを感じるのを忘れてしまう。


他にも、森のことを教えてもらった。

食べ物のことが多かった。

おいしい果物や、動物の肉。

猿は、もともと生で肉を食べるが、僕の影響で、焼いた肉のほうが好きになったそうだ。

ウホウホが歩き回った森の範囲は、限定されていた。

それが、猿の縄張りのようだ。

その、猿の縄張りの中で、多くの群れが勢力を争い、群れの縄張りが分かれている。

だから、自分たちのエサ場に他の猿を近づけない。

ウホウホは、猿の縄張りの外のことを、小さな頃から知りたくて仕方がなかった。

群れにいたときは、群れの縄張りを出ることは、許されなかった。

群れを離れても、自分の怖がりな性格から、猿の縄張りを出る勇気がでなかった。

『ゴロゴロはつよいもんね。ゴロゴロがいれば、どこにでもいけるね!』

ウホウホがうれしそうに言う。

『そうだな。僕も、ウホウホがいれば、楽しいな。ここから出られたら、いっしょに冒険しよう!』

僕も、こたえた。


でも、僕らがここから出ることはしばらくなかった。

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