69 虫のすみか
大ムカデは、気の毒なほど氷河の短剣との相性が悪かった。
僕は、次々と大ムカデを撃退し、そのうちに大ムカデの気配は遠ざかっていった。
気温が極端に下がったことを嫌ったのかもしれない。
勝利に安心してウホウホを振り返ると、ウホウホの顔は鼻水でベチョベチョだった。
毛深いけど、寒さに強くはないようだ。
このあたりの複雑な洞窟は、いろいろな虫のすみかになっているようで、出くわすのは虫のたぐいばかりだった。
そして、氷河の短剣は虫のたぐいとの相性がよく、相手にしなかった。
そもそも、僕のまわりの気温が下がることで、襲ってくる虫も少なくなっていた。
ウホウホも寒いのは苦手なようで、僕から距離をとっていた。
僕はというと、寒くもないし鼻水も垂れてこない。
僕の腰でやさしくまわりを照らす、マグマの短剣を見る。
氷河の短剣とマグマの短剣が対であるというのは、こんなところにも理由があるのかもしれない。
僕らは、時々休憩をとりながら、進んだ。
干し肉と水分をとり、寒がるウホウホをマグマの短剣を操ることで暖める。
地図を取り出して見てみると、不思議なことに気がついた。
地図を手に入れたときに描かれていた範囲から、僕らはだいぶ進んだはずだが、地図は描かれた範囲を拡げていた。
そして、今いる場所には、矢のような印が光っている。
何らかの力によって、地図はひとりでに描かれるようだ。
でも、僕らの歩いた周囲しか追加されていない。
これなら、少なくとも迷子になる心配はなさそうだ。
そして、僕らが手に入れる前に描かれていた地図は、亡骸が生前にここから脱出しようと歩き回った範囲になる。
いま、ウホウホが持っている電光の杖が亡骸の主戦力だとしたら、心もとなかったことだろう。
一時的に相手の動きを止めても、倒すことはむずかしい。
もしかしたら、相手によっては、そして込める精気によっては、相手を倒すこともできたのかもしれないけど。
あの他の2つのベッドの主はどこに行ったのだろう。
あの部屋にあった荷物が亡骸のものだけだったから、想像することしかできない。
他の2人は、あるいは剣士や猟師だったのかもしれない。
それなら、物理的な攻撃力がある。
仲違いをして、出ていったのだろうか。
食べ物を獲りに行って、虫にやられてしまったのだろうか。
今のところ、その痕跡は見つけていない。
そして、僕らは、虫のすみかである、狭くて複雑な洞窟を抜けた。




